Sceletium tortuosum (別名:カンナ)覚書

【概要】
カンナは南アフリカ原産の多肉植物で,「Kanna, Channa, Kougoed」等とも呼ばれています.
この植物は南アフリカの原住民であるサン人やコイコイ人(まとめてコイサン人種,又はカポイドと呼ばれます)が,空腹感,喉の渇きの軽減,抗疲労や,もしくは痛みを和らげたりする為に使用してきました.
主な使用法として,乾燥・発酵させたカンナの葉を嚙んだり,お茶やチンキ剤にしたり,もしくは喫煙する等の方法があります.

【成分・作用】
カンナには向精神活性(精神に作用をもたらすもの)を持つアルカロイドが含まれています.
有名な物として,

メセンブリン(mesembrine)
メセンブレノン(mesembrenone)
メセンブレノール(mesembrenol)
ゼンブリン(zembrin)
トルツォサミン(tortuosamine)

等がありますが,実はこれらのアルカロイドがどのように働くか,まだ全て解明されてはいません.

既に分かっている作用ですと,メセンブリンやメセンブレノン,ゼンブリンは「セロトニン再取り込み阻害作用」という,脳内でセロトニンを増やしてくれる作用を持っています.(1)

この「セロトニン再取り込み阻害作用」というのは,病院で抗うつ剤としてよく処方される薬にある物で,実際カンナの植物から抽出したエキスは抗ストレスのサプリとして海外で売られています.

またこの他,カンナはコリンエステラーゼ阻害作用(アセチルコリンの分解を防ぐ作用),カンナビノイド1型受容体(CB1受容体,THCが主に作用する部位)に対して,アゴニスト(受容体を働かせる物質)としての作用も持っています.(2)
(大雑把に言うと,脳内のアセチルコリンを増やして,ほんの少しだけTHCと同じ様な働きをするかもしれない,という事です.)

更に最近では,メセンブリンを多く含むよう品種改良したカンナからの抽出物が,セロトニンやドーパミンの放出を促す「VMAT2」というタンパク質を増やすのではないかという研究もされています.(3)

【実際に使ってみた】
・お茶の場合
青臭く,かなり不味いです.
これ単体で飲むのは中々の苦行です.
また飲んでしばらくすると,かなりの鎮静感と眠気が来ます.
細かい事を考えられなくなる為,頭を働かせる場面には全く不向きです.
陶酔感というよりは眠気・鎮静感の方が強く感じられます.多幸感・味覚の向上は感じられませんでした.

・喫煙の場合
カンナ粉末単体の喫煙は,火がすぐ消えるので非常に難しいです.
燃焼剤としてホップ(学名:Humulus lupulus.ビールによく使われるアレです)を混ぜて喫煙すると,強い眠気と鎮静感,そして音がクリアに聞こえる効果は感じられました.
多幸感や味覚の向上については非常に微妙ですが,敏感な方なら感じられる可能性があるかと思います.(もっとも,それ以上に眠気が強く来ますが…)
効果の強さはHHCよりも大分弱く,個人的にはカヴァやCBDと同程度に感じられました.

【ご注意】
念の為,摂取後は激しい運動や運転を控える事をお勧めします.
またセロトニン再取り込み阻害がある為,他の抗うつ剤や向精神薬との併用は控えた方が良いかと思います.

【参考文献等】
(1) Pharmacological actions of the South African medicinal and functional food plant Sceletium tortuosum and its principal alkaloids
(リンク先)
https://web.archive.org/web/20150630183055/http://mypeacebeverage.com/wp-content/uploads/2014/11/2011-Harvey-et-al-JEP-Pharmacology.pdf

(2) Cannabinoid CB1 receptor binding and acetylcholinesterase inhibitory activity of Sceletium tortuosum L.
(リンク先)
http://www.ifrj.upm.edu.my/17%20(02)%202010/IFRJ-2010-349-355_Alfi_Netherlands_(S)%5B1%5D.pdf

(3) High-mesembrine Sceletium extract (Trimesemine™) is a monoamine releasing agent, rather than only a selective serotonin reuptake inhibitor
(リンク先)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26615766/

いいなと思ったら応援しよう!