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超音波検査士になるためにはどうすればいいの?

超音波検査士…医療職のみなさんは1度は耳にしたことがあるかと思います。その資格の需要は高く、臨床検査技師においては細胞検査士と並んで人気の高い学会認定の資格です。

私も超音波検査士(消化器)を取得しております。

具体的にどうすれば受験できるのか。近くに教えてくれる人やネットの扱いが上手くないと知らないままの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回はそんな超音波検査士の目指し方をご紹介いたします。

この記事は以下のような方に需要があるかなと思って記します。

note用画像 超音波検査士編

そもそも超音波検査士って何?

「公益社団法人日本超音波医学会認定超音波検査士制度規則」によると

公益社団法人日本超音波医学会が超音波の優れた技能を有する看護師・准看護師・臨床検査技師・放射線技師を専門の検査士として認定し、超音波医学並びに医療の向上を図り、もって国民の福祉に貢献することを目的とする。

とされています。

各領域ごとに試験があり、「体表臓器」「循環器」「消化器」「泌尿器」「産婦人科」「健診」「血管」の7領域があります。

試験には目的の「専門領域の問題+超音波の基礎問題」が出題されます。

超音波検査士取得のための条件

条件は「公益社団法人日本超音波医学会認定超音波検査士制度規則」によって定められています。

受験資格
第7条 検査士認定試験を受験する者は、次の各号の条件をすべてみたしていなければならない。
.日本国の看護師・准看護師・臨床検査技師・放射線技師のいずれかの免許を有し、当該免許保持者としての人格および見識を備えていること。
.当該年度の9月1日までに、3年以上継続して本会会員(正会員、シニア会員、準会員(期間中にここに掲げる一つの資格からここに掲げる他の資格に種別変更があった場合を含む。)のいずれかをいう。又は、一般社団法人日本超音波検査学会の正会員であること。
.公益社団法人日本超音波医学会認定超音波専門医または公益社団法人日本超音波医学会認定超音波指導検査士によって推薦されること。

つまり、超音波検査士の試験を受験するためには日本超音波医学会または日本超音波検査学会に入会しておく必要があり、入会から3年経過しなければ受験できないということになります。

超音波検査士を取得する目的

私の場合は自分の実力を証明するものが欲しいという目的がありました。

一緒に働いたことのない相手に対して「超音波検査できます!」と言っても相手からは「どれくらいできるの?」という疑問を持たれます。

それに対して「1日10症例はとっていて~」と説明をしたところで、その精度が客観的にみてどれくらいかというのは相手に伝わりません。

そのとき「超音波検査士(消化器)」の資格を取得済です。と答えることができれば、相手も「超音波検査の消化器領域に関してはプロフェッショナルなんだな。」と理解することができます。

世間には様々な臨床検査技師がいて、超音波検査士の資格を持っていなくても第一線でばりばりと超音波検査に従事し、実力で他職種と連携して医療に貢献している方も大勢います。

資格がすべてではありませんが、自分の実力は超音波検査に従事するにあたって不足がないか確認する意味でも試験へ挑戦することは有意義だと私は思います。

また、資格はとって終わりではなくある意味「スタートライン」です。

取得後にはこれからどのように資格を活かして生きていくかが試されます。

どれくらいお金がかかるの?

ここでは受験までに想定される金銭負担について記載します。

資格は5年ごとに更新が必要であり、更新するための単位を学会などで集める必要がありますが、これはどの学会に参加するか、あなたの居住地はどこで学会がよく行われる都市に近いかどうか、筆頭演者として発表したり論文執筆をしたりして単位を集めるのかなどで大きく異なりますので、ここでは触れません。

note用画像 超音波検査士編2

note用画像 超音波検査士編3

費用を考えると、日本超音波医学会で英文雑誌の送付を辞退した入会が最も出費を抑えることができますね。

どちらの学会の方が良いのかの比較についてはメドフィットアカデミアコミュニティ内でのみ閲覧できる記事にしようかと思います。

上記はあくまで学会入会~試験合格までの費用です。

実際には参考書や勉強会などへの出席費用の負担があります。

⇓ 私が使用していた参考書

超音波医学会発行の公式問題集
超音波検査士認定試験対策 臨床編:消化器領域
超音波検査士認定試験対策:基礎編
超音波基礎資料(GE主催講演会資料)
物理学入門 ← 高校の基礎物理の学びなおし用

いずれも、現在は入手困難になっています。Amazonなどで出品者から購入できる書籍もありますが、かなりの高値となっています。

上記の資料の中でAmazonでも入手可能なものの最新版を探したところ

超音波検査士・超音波指導検査士認定試験問題集 第5版 Web動画付8,800円

がみつかりました。これは超音波医学会発行ですので有益だと思います。

しかしながら「基礎」を学ぶには少々難渋すると思います。

ここは知り合いの超音波機器メーカーに相談するなどして、「基礎」の勉強会がないかの情報を得るのが良いと考えます。

その開催場所や参加費などで「勉強への出費」は変わります。

資格取得にかかる時間

冒頭で記載したように学会入会から「3年」の経過が必要です。

受験応募時に各領域ごとに20症例のレポート提出が求められます。これは普段記載しているレポートをそのまま提出するのではなく、学会に決められた形式で作り直す必要があります。

レポートには超音波所見だけでなく、臨床経過、他の検査の所見や身体所見を含めた総合的な判断を記載する欄がありますのでここを書くためにCTなどの他の検査のことなども学ぶ必要がでてきます。

症例は例えば消化器領域ならば

肝臓のびまん性疾患 4例以上
肝臓の良性腫瘤 2例以上
肝臓の悪性腫瘤 2例以上
胆道・膵臓の良性疾患 2例以上
胆道・膵臓の悪性疾患 1例以上
消化管 3例以上
その他

で計20症例のレポートが求められます。

病院によってはなかなか遭遇できない疾患もあり、他院に研修に行くなどして経験してくる場合もあります。特に「消化管」症例は施設によっては超音波検査でみるという意識が浸透していない場合もあり、臨床からのサポートも必要になってきます。

このレポート作成がとても時間を要するもので、どうしても日常業務の間の片手間に済ますということができないものです。

レポートは受験者が作成して終わりではなく、その症例の臨床医と超音波専門医にチェックしてもらってはじめて完成します。

そのやりとりの間で「あなたがこれは良い」と思った症例でも、専門医から「これは超音波検査が有用であったとは言い難い」といった理由などで却下される場合があります。

これを試験を受けようと思ったその年にはじめたのでは到底、提出期限に間に合わせることはできません。

3年をかけてこつこつと取り組む必要があります。

臨床医や専門医から臨床検査技師とは違った視点からの指摘を受けてレポート作成することはとても勉強になります。これをすることこそこの試験の最も重要な部分ではないかと私は思います。

1症例に対して、医師と綿密にディスカッションして見識を深めることが日々の超音波検査業務に活きてくるはずです。

1日に1~2時間、病院に残って作業することになると思います。私も日々症例を集めてカルテをチェックするなどしてそれくらいは残っていました。

同時進行で試験問題対策をすることになります。

日々の超音波検査業務と上記のレポート作成でしっかりと「専門」の知識はついてくるはずです。問題は「基礎」です。

これは学生時代に物理学をとっていればまだ馴染みやすいですが、そうでなかった人にとってはかなり頭を悩ませるものかと思います。

私は物理学をとっていましたが、正直なところ私の学生での成績は「国語と英語はできるけど他はいまいち」といったものでした。

しかし、大人になって超音波に興味をもった状態で学びなおしてみると学生時代はまったく意味がわからなかったことが、「こういう仕組みで医療の分野でやくにたっているのか」と現実に結びつくことで理解しやすくなりました。

私は試験の1年前からぼちぼちと参考書を集め、高校物理を週に1時間程度復習し、半年前からは家で寝る前の1時間を毎日勉強にあてていました。

当時は日当直に、心臓カテーテル緊急呼び出し当番も行っていた上に「血管診療技師」の試験とほぼ同時期に準備していたのでスケジュールとしてはハードでした。

臨床医、専門医の先生のご助力あってなんとか試験にたどり着きました。

勤務先からの評価

資格というのは「実力の証明書」である側面もあります。

これを持っていることを示すだけでも医師や他職種からは信頼されやすくなります。

病院によっては「超音波検査士」でなければエコー検査を一人で任せることはしないと決めているところもあります。

先述したように資格が「スタートライン」という認識です。

問題は、資格を持っている=報酬アップ にはならないところです。

実はこの資格には維持費がかかります。毎年の年会費と更新に必要な単位取得のための学会・研修会参加、その移動費です。

学会出張などの助成をしてくれる病院であれば、多少は生活への影響は楽になるかと思います。

資格の活用

維持費がかかって、報酬に結びつかないならば取らなくていいや。

そういった声を聴くことがあります。

これは「資格の活かし方」を知らないからだと思います。

実際に置かれている環境や状況により、その方法は違ってくるかと思いますが、鳥取県では都会ほどは資格取得者がいません。

都会であれば1施設に10名いるなどの場合があり、とっていて当然の資格になりますが、地方では地域で10名といった具合になります。

その地方であれば転職などにも有利になりやすいです。

私も実際に転職する際にはこの資格を取得していることをアピールポイントにしました。

自己紹介などの時にもアピールポイントとすることで、初対面の人であっても「あ、この人は超音波検査ができる人なんだな」という認識を持っていただくことが可能であり、例えば私のような働き方をする場合には交渉にも使うことができます。

どうすれば活用できるかを個々の状況にあわせて考えていく必要があります。

資格取得後気を付けいていること

当然ながら、資格取得はゴールではありません。

資格更新があるからというより、その資格の重みを認識してより一層技術の向上や知識の担保を行うことを私は意識しています。

新しいガイドラインがでれば目を通しますし、超音波検査学会や超音波医学会から送られてくる雑誌で面白そうな研究があればチェックします。

参考書に関しても「臨床検査」や「メディカルテクノロジー」などでエコー関連の特集があれば、チェックするようにしています。

私は個人なので毎号定期購読するには金銭負担が大きいので、単発で欲しい号だけを読んでいますが、上記雑誌はとても勉強になることが多く、病院によっては病院図書として購読している場合があります。

もし、読んだことがないという方がいれば病院にないか確認してみてください。たまに放射線科が「画像検査」という雑誌を購読している場合があり、放射線科で管理している場合があります。お願いして一緒に読ませてもらうなども良いかと思います。

最後に

私の事例を踏まえて、超音波検査士取得についてを記載しました。

試験開催年になって新たな注意事項が追加されたり、仕様が変わったりもしますので、定期的に学会ホームページをチェックしておくことがおすすめです。

まずは超音波医学会または超音波検査学会に入会するところからが資格試験への第一歩です。

わからないことがあれば、メドフィットアカデミアコミュニティに入っていただいて質問していただいても大丈夫です。

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