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1000円のHDMIキャプチャーボードは使えるのか?

最近中国の通販やAmazonで怪しげなHDMIキャプチャーボードが多く出品されています。1000円程度で売られているものが多く、一般的なキャプチャーボードの値段から考えると非常に怪しい商品です。

そんなキャプチャーボードを購入して、実際動くのか、人に勧められる代物なのかを検証してみました。

キャプチャーボード概要

HDMI入力1つとUSB2.0出力1つの非常にシンプルなキャプチャーボードです。

ドライバやソフトなどは一切付属していなかったので、録画にはOBS(Open Broadcaster Software)を使用しています。

パススルー機能は無いので、ゲームをプレイする場合は遅延対策にHDMI分配器を使用したほうが良いでしょう。

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動くのか

動きました。
6時間程度連続動作させてみましたが、本体が熱くなりすぎる事もなく安定して動作していました。

Windows10でしか試していませんが、Mac OSやLinuxでも問題なく動くらしいです。

ただし解像度やフレームレート、映像フォーマットなどに制限があります

解像度とフレームレート

1080pの解像度では30fpsまでしか出せません。720pまでなら60fpsを出すことが出来ます。
1080pの映像を720p/60fpsでキャプチャする事は可能なので、解像度にこだわらなければさほど問題にならないと思います。

この動画は1080pの映像を720p/60fpsで録画したものです。720pでも十分綺麗と感じる方も多いんじゃないでしょうか。

映像フォーマット

映像フォーマットという言葉に馴染みの無い方が多いかもしれませんが、非常に重要な部分です。

多くの一般的なキャプチャーボードではYUY2と呼ばれるフォーマットでキャプチャをしています。
それに対してこの1000円のキャプチャーボードではMJPEGというフォーマットが使われています。

MJEPGでは映像がJPEGで圧縮されるため、映像をよく見るとノイズが乗っています。

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動画ではほとんど気になりませんが、スクリーンショットを撮り、それを拡大したい場合はノイズが気になるかもしれません。

Youtubeなどの動画サイトに動画を投稿する場合は、サイト側で動画が圧縮されるのでほとんどのケースで問題ないでしょう

音声

音声の取り込み方に癖がある上に、強制的に音声がモノラルになる仕様です。

音の定位が重要になるコンテンツでは使いにくいかもしれません。

具体的な音声の取り込み方は後述します。

*10/26追記
モノラル96khzで入力されますが、実際は48khzのステレオ音声のようです。
音声をステレオに修正して出力するソフトが公開されていました。
https://github.com/ToadKing/mono-to-stereo

おすすめ出来る?

値段の割にかなり使えるキャプチャーボードだと思います。

以下のような人にならおすすめです。

・安くHDMIキャプチャ環境を整えたい
・ゲームの動画投稿や配信を始めてみたい
・モノラルでも良い
・通話しながらゲーム画面を見せたい
・webカメラの代わりにHDMI出力可能なデジカメを使いたい(webカメラとしてキャプチャーボードを使えます)
・HDMIキャプボを持ち運ぶことが多い
・キャプボマニア

初心者の方が最初にお試しで手を出すキャプチャーボードとしては非常に優秀です。

HDMIキャプチャーボードが欲しいけど中々手が出ないという人は買ってみてはいかがでしょうか。

購入時の注意

このキャプチャーボードはamazonや中国の通販サイトなどで購入することが出来ますが、購入する際はamazonでprime発送のものを選ぶことをおすすめします。
prime発送では無いものは中国からの発送になるので、届くまでに1ヶ月程度かかります。
amazonで"HDMIキャプチャーボード"で探せば1500円程度で見つかると思います。

中国の通販サイトでは、1080p/60fpsに対応していると謳っている色違いのUSB3.0のキャプチャーボードが大量に売っていますが、実際に購入してみたところ1080p/60fps非対応でした。
正確には60fpsは選べます。ただし、キャプチャされる映像は30fpsでした。

しかもUSB3.0と謳っていながら、実際はただの青いUSB2.0端子でした。
中身は同じものみたいなのでわざわざ購入する意味はありません。

購入時はHDMI分配器も購入することを強く推奨します。

使い方

OBSの基本的な使い方は理解している前提で解説をします。使い方を知らない方は他サイトを見て基本的な使い方を覚えてください。
また、私が試した限りではこのキャプチャーボードはAmarecTVと相性が悪いようです。OBS等別のソフトの使用を推奨します。

まず、ソースに映像キャプチャデバイスを追加します。

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次に、デバイスで"USB Video"を選びます

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解像度/FPSタイプを"カスタム"、解像度を"1280x720"もしくは"1920x1080"、FPSを"60"もしくは"30"、映像フォーマットは"任意"、色空間は709に設定します。

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このままでは音声がキャプチャできないので、音声の設定をします。
映像キャプチャデバイスのプロパティの一番下にある"カスタム音声デバイスを使用する"にチェックを入れて、"デジタルオーディオインターフェース(USB Degital Audio)"を選択します。

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これで映ります。

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簡潔な内容ですが、非常に怪しいHDMIキャプチャーボードの基本的な部分のレビュー/使い方でした。

ここまで読んでくださった皆様の参考になれば幸いです。

~~~~~~ここから先はマニアックな話~~~~~~

読まなくても特に問題ありません。

実はYUY2に対応している?

先ほどこのキャプチャーボードは映像フォーマットがMJPEGと書きましたが、実はYUY2に対応しています。
ただし、ほぼ実用的ではありません。

対応解像度/フレームレート
1920x1080/5fps
1280x720/10fps
800x600/20fps
720x576/25fps
720x480/30fps
640x480/30fps

対応しているフレームレートがあまりにも低いので使い物になりません。
720x480ならまだ使い道はあるかもしれません。

HDCP

HDCPが掛かっている映像でもキャプチャ出来てしまいます。
自己責任でお願いします。

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音声周りの仕様

このキャプチャーボードでは、キャプチャした音声は音声入力デバイスとして入力されます。

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音質は1チャンネル16ビット 96000Hzのみでした。

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あまり使い道は思いつきませんが、録音のみをしたい場合は使えるかもしれません。モノラルですが

色範囲あれこれ

このキャプチャーボードは色範囲の挙動がなんだかおかしいです。
まず、Avermediaの"GC550"でキャプチャした画像をご覧ください。

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Switchの出力設定はリミテッドレンジ、キャプチャの色範囲は"一部"に設定しています。
実際にモニタに映したときと近い色が出ていました。

次に、1000円のキャプチャーボードでキャプチャした画像をご覧ください。

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キャプチャの色範囲は"一部"に設定していますが、全体的に色が明るいように見えます。
拡大して見てみましょう。

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1000円のキャプチャーボードの方は白い部分が飛んでしまっています。
次に、1000円のキャプチャーボードの色範囲を"全部"にしてみます。

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色味は若干違いますが白は飛ばなくなりました。

実はこの1000円のキャプチャーボードでは、映像フォーマットを"MJEPG"、色空間で"既定"を選んだ時、 "一部"でも"全部"でも無い別の色が出てきます。
実際に比較してみましょう。

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違いが小さいため分かりにくいですが、比較すると"全部"よりも"既定"の方が"GC550"でキャプチャした色に近いように見えます。

結論としては、「ゲーム機の出力をリミテッドレンジにした上で"既定"を選択」することをおすすめします。
ただ、好みで"全部"を選んでもさほど問題は無さそうです。

入力解像度

PCを接続したところ、PCの解像度選択でこれらの解像度が出てきました。

名称未設定

試したところ、ここに表示されている解像度はすべて動作しました。ただし、キャプチャ時に設定した解像度に自動的にスケーリングされるので、4kでキャプチャは出来ません。

1080pを超える映像を入力する場合は画質には期待しないほうが良いでしょう。
また、インターレースの処理は苦手なようで、強制的に映像が30fpsになってしまいます。(480iで検証)

解像度切り替え

ごく一部の方のみが気になっているであろうお話です。

昔のゲームは、ゲームによっては解像度が240pと480iで切り替わるものがあります。その解像度切り替わり時の暗転からの復帰がどれだけ早いかというお話です。

OSSC(Open Source Scan Converter)にWiiを接続して、240pと480iの切り替えテストをした映像です。

解像度切り替えから約55フレーム程度で復帰しています。とても早いです。
余談ですが、OSSC 240p Line5x問題なく映ります。

次に、RetroTINK-2XにWiiを接続して同じテストをしてみました。

解像度切り替えから約45フレームで復帰していますが、映像が完全に暗転するタイミングが遅いので実際に画面が消えているのは30フレーム程度です。

分配器を使用する場合は注意が必要です。
私の所持している分配器の中に、解像度切り替えが遅くなる分配器と一切影響の出ない分配器がありました。切り替えが遅くなる分配器を使用した場合、暗転が40フレームほど長くなりました。

どちらの分配器も外見はほぼ同じだったので、実際に試してみないと切り替えが遅くなるかどうか分からないと思います。

おわり

以上でマニアックな話も終わりになります。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。