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淫夢語録とtier1陽キャ ~無視できぬ親和性~

はじめに 

 出オチではない(迫真)。タイトル一本釣りでもない(念押し)。

 読者の中に、主に学校若しくは職場で、ごく自然と会話の中でスムーズに淫夢語録を発した陽キャを見かけたことがある方はいるだろうか。SNSを漁ってみると、想像以上に陽キャの淫夢語録使用が確認されたことが伺える。
この事実は、民俗学・哲学・言語学といったありとあらゆる人文科学的視点からの膨大な研究をもって解明されるべき事象であるが、淫夢コンテンツが誕生して以来、未だに研究のけの字もみられない状態でありひどく憤りを感じている。
少し逸れたが、これを一例として、淫夢コンテンツについて多角的視点から分析・考察する学問を淫夢学と呼ぶ。
ところで、ごくごく小さな萌芽ではあるが、「野獣先輩新説シリーズ」は一定数の動画投稿が継続されており、淫夢コンテンツが研究対象たり得る”おもしろさ”を内包していることは誰もが自覚または無意識に感じていると思われる。

 具体的な研究領域は、例えば、「野獣先輩の性別」を解明する民俗学、いわゆる「4章」の解釈を考察する日本文学、「下北沢と立教大学を中心とした淫夢ファミリーの生態・生活様式」を明らかにする地理学など多岐にわたる。淫夢学研究の射程はかなり広く学説も様々であり、いちから研究しようとなると途方もない文献を漁ることになるため、淫夢学の門戸はかなり固く狭いものであることは認めざるを得ないだろう。
 しかし、今回扱う題材は、社会経験をした方なら想像しやすい研究対象なので、スムーズに入り込めると思われる。
また、本稿では、淫夢学に精通(意味深)する淫夢厨の皆様はもちろん、淫夢コンテンツの知識はまるで無いがタイトルのキャッチーさに釣られた善良無垢なノンケや、SNSで非淫夢コンテンツにまで淫夢語録で突撃するホモガキにも比較的平易に理解できるように、専門用語には適宜説明を加えている。

用語整理

まず、淫夢学を考えるにあたって、いくつか専門用語を適切に理解する必要がある。代表的なものをピックアップしたので、これを機に覚えていただけると幸いである。淫夢学既習者は飛ばして構わない(寛容)。

「淫夢厨」
言わずと知れた淫夢学修了者。ネットリテラシーを持ち、ガッチリと棲み分けを意識する由緒正しき勢力。様々な学派が日々切磋琢磨している。

「ホモガキ」
ゴミ。淫夢語録っぽいワードを見るやいなや淫夢語録で凸る害悪ぶりがガキであるとされ、このような名前になった。実年齢は考慮されない。加えて、語録の使い方があまりにも稚拙で、淫夢コンテンツそのものの価値を暴落させている最大の要因。じゃあ死ね!(無慈悲)

「淫夢語録」
淫夢学の研究対象である映像内で用いられる言語(現象・記号)。現代語の文法では紐解けない且つ非常に柔軟な言語であることから、これに奥深さを感じるものは少なくない。

「野獣先輩」
淫夢学の発端となった存在。英名は Something is everywhere and nowhere。
出身氏名年齢電話番号住所性別、全て不明。有機物かどうかも定かではない。外見が我々のそれと似ている点から「野獣先輩はヒトである」とする学派が大多数だが、イヌ型・ハト型・ピッチングフォーム型なども確認されているため、決定的とまでは至ってない。
また、同一とみられる存在が映像内で確認できるが、いずれも異なった名称であることからその確実性を疑問視する学説も存在しているため、依然としてわかっていることがごくわずかである。
さらには、研究対象映像ではない現実の空間・物・作品でも酷似した存在が確認されており、淫夢学最大の研究対象にして、最も解明が進んでいない領域でもある。

 なお、筆者は「野獣先輩はヒト説」論者であり、「野獣先輩女性説」論者でもある。

本題

 ここまで、ある程度淫夢のついてのファンダメンタルズをおさえた上で、タイトルにあるtier1陽キャとの親和性について、以下論ずる。
 まず、tier1陽キャという存在を、「スクールカーストの最上位に位置しつつも本人はそれを意に介さず、最下層の存在にも分け隔てなく接し、各種イベントにおいて多大な恩恵をもたらす者」と定義する。ガチ陽キャとも呼ばれる。これは、DQNやtier1陽キャの取り巻きとは一線を画す者であることを明確にするためである。
これだけ聞くと早漏な方は、「親和性なんてある訳無いだろ!いい加減にしろ!」とキレ散らかすかも知れない。そんなホモのザーメンを処理する時間はないので、早速論拠を示そうと思う。

根拠1

 代表的な淫夢語録である「やりますねえ!」は、本来「やる」という動詞に丁寧語が接続された言葉であるが、今現在世間一般においては、他者を賞賛する意味で用いられる。原理主義者は、この誤用についてきびしい批判を繰り返しているが、もはや誤用がマジョリティとなっており懸命な努力は徒労に終わっている。
 「他者への賞賛の意」、これがとても重要である。
tier1陽キャは、無意識に他者を尊重するマインドを持ち合わせているので、常日頃から「すげえじゃん!」「まじ?!やべえな」「えぐい笑笑」など、他者を褒める言動がしばしばみられる。そういった彼らが、普段あまり会話をしない我々最下層の住民の共通言語である淫夢語録を一度でも発すれば、たちまち我々は彼らに腰を振り射精する。そんな我々はをみて、彼らは「喜んでくれている!このフレーズはウケるんだな」と思考する。なのでどんどん使用し、やがてtier1同士でも使われるようになる。
この連鎖である。他にも、「これって、勲章ですよ?」は「やりますねえ!」を超える賞賛であるし、「そうだよ(便乗)」は相手の考えを否定しないポリティカルコレクトネスに富んだイディオムである。
 このように、淫夢語録には他者へのリスペクトを孕むフレーズが数多くみられ、他者の尊重精神が充分に備わっているtier1陽キャとは、きわめて相性の良い言語であると言える。
以下、根拠1を強めうる淫夢語録を理由と共に列挙したが、クソ多いので目を通さなくてもよい(慈悲)。

(五十音順)
「ああ^~いいっすね~」
何かに同意するとき若しくは何かを称賛するときに用いられる。語感が良く、tier1陽キャは語尾の「ね~」を強調して使用する場合が多い。

「あのさぁ・・・」
tier1陽キャは、互いを尊重しているため、自身の考えや言動を否定されてもすぐにヒステリックになることはない。したがって、おかしいことはおかしいとキッパリ言うことが出来る。そういった状況で、主に使用される。

「あっ、ふーん・・・(察し)」
tier1陽キャは、有人の恋愛相談や人生相談に乗ることが多いため、他人の声無きサインやちょっとした言葉に敏感に反応できることから、よく用いられる。

「ありがとナス!」
tier1陽キャは、抵抗なくお礼を言うことが出来る。よって、かなり多く用いられる。

「いいカラダしてんねぇ!」
tier1陽キャは、概ねスポーツを趣味・仕事としており、成熟された肉体であることがままにある。また、彼ら同士でジムで共に汗をかいたりスポーツを行うこともよくある。そのときに、互いの肉体の進捗を披露し合った際にしばしば用いられる。

「いいゾ~これ」
「ああ^~いいっすね~」と同様の使い方だが、称賛の場合には他者ではなく自身に対して起こったことに使われる。

「うん、おいしい!」
tier1陽キャは、基本的に恋人がいる。よって、恋人に手料理を振る舞ったり、逆に振る舞うこともある。恋人の手料理は99%美味しいので、その完走を伝えるのにこの台詞は有用である。因みに、仮にクソまずくても、tier1陽キャは「うん、おいしい!でも、もっと美味しくなるかも!」と褒めとフォローを同時に出来る。

「おっ、そうだな」
何かに同意するときに用いられる。「ああ^~、いいっすね~」とは異なり、賞賛する場合には使われない。

「道理でねえ」
tier1陽キャは、基本的に相手の行動を予測した上で行動する。

「なんか芸術的」
tier1陽キャは、映画に詳しいことが多いが美術にはあまり明るくない傾向にあるので、相手が芸術然としている手前、眼前の作品をテキトーにあしらうわけにもいかない状況によく遭う。そんなときに自身が浅学であることと作品が芸術であること両方を端的に言い表す言葉として多用される。

「まぁ多少はね?」
寛容な精神をもつtier1陽キャは、ちょっとのことでは動揺しない。

「やったぜ。」
本来は、「やる」の過去形に接尾語「ぜ」が接続された言葉だったが、現在は仲間と喜びを分かち合う時によく使われる。1人の場合は「いいゾ~これ」が優先される。

根拠2

 例えば、「この辺にィ、美味いラーメン屋の屋台来てるらしいっすよ」は、もはや淫夢語録関係なく日常的に使用されるフレーズである。「あっそうだ(唐突)」は、会話が途切れた際に直ぐに別の話題を提供するために用いられる潤滑油的ワードでもある。「生きてる~!」は、陽キャは部活でとても厳しい練習をしていたり仕事が忙しかったりするので、とても疲れたときに思わず出てしまう台詞筆頭である。
 このように、現代でも日常的に使用できる場面がとても多い。もし、これが文語的で堅い印象のあるものだったら、他者をリスペクトという高尚な意味を持ってても恐らく使われなかっただろう。この事実は、tier1陽キャへの浸透に限らず、淫夢語録が最初インターネットを中心に普及した根拠にもなり得ると推察する。
 こうしてみると、”淫夢”と捉えられる映像内の社会は、古典的な作品であるにも関わらず現代社会に通じる言語観が形成されていたことが伺える。
(話はそれるが、淫夢語録が日本人の日常にとって使いやすいという指摘は、研究対象の映像内の社会が日本で、使用言語が日本語であるという論を支持することになるかもしれない。日本語との共通項が多い点については、根拠3で指摘する。)
以下、根拠2を強めうる淫夢語録を理由と共に列挙したが、クソ多いので(ry。

「オッスお願いしまーす!」
tier1陽キャは、挨拶をしっかりするのでこれもよく使われる。

「おっ、大丈夫か大丈夫か?」
tier1陽キャは、スポーツに尽力しているので、やはり怪我などのリスクは高い。身体の故障を訴えた仲間に対してよく用いられる。また、街中で唐突に倒れた人を見かけた場合にも、率先してこの台詞を使うこともある。

「オッハー!」
tier1陽キャは、挨拶をしっかりするのでこれもよく使われる。返答の「うるせえ!」というツッコミもしっかり行われる。この流れはひと笑い起きるので使用頻度が高い。

「お前のことが好きだったんだよ!」
tier1陽キャは、恋愛をするので告白もする。語調的に、主に男性が告白する際に使用される。

「お前、もしかしてあいつのことが好きなのか?(青春)」
tier1陽キャは、青春する。放課後や休日に友人の家で恋バナに明け暮れるのは日常茶飯事。その際によく使われる。

「おまたせ」
tier1陽キャは、友人と待ち合わせをする。よって、これも多用される。

「覚悟決めろ」
大舞台に立つことが多いtier1陽キャは、ここぞという場面で気合いを入れるため、これもよく使われる。

「今日はもうすっげぇキツかったゾー」
厳しい部活動の練習をしたり仕事が忙しかったりしたときに、よく用いられる。

「こ↑こ↓」
目的地に着いたときや「こころ」「ここ」などの人名を呼ぶ際にも用いられる。

「これはもうわかんねえなぁ……お前どう?」
tier1陽キャは、宿題や課題を仲間とともに励むので、その際に多用される。

「なんか足んねえよなあ?」
ファミレスでポテトを山分けして食べようとしたのに、トイレから帰ったら残り数本まで減っていたときに、主に使われる。

「喉渇いた・・・喉渇かない?」
tier1陽キャは、連れションの要領で自販機まで友人と行くことが多いので、これも多用される。

「ぬわああああん疲れたもおおおおん」
「今日はもうすっげぇキツかったゾー」と同様。

「入って、どうぞ」
tier1陽キャは、自宅に友人を招くことも多い。

「ファッ?!」
ピアノを弾けるtier1陽キャは多い。音楽の時間や休日などで、音階当てゲームをした際に使われる。

「豚ァ!」
tier1陽キャは、焼き肉によく行き、何肉を食べるか話すのでよく使われる。

「申し訳ないが昼はNG」
tier1陽キャは予定が詰まっているので、かなり使われる。

「よし!」
根拠1でもよさそう(小並感)

根拠3

 言いやすさである。たとえ、他者へのリスペクトを多分に孕んだ言語とは言え、使いづらければ廃れることは言語の歴史を見れば火を見るより明らかで、一方こと淫夢語録に関しては、「長すぎず短すぎず」「口の動き的にも発しやすく」「柔軟に意味・形を変化させやすい」という特徴を持つ。
言いやすければ使用頻度は増え、使用頻度が増えれば流行し、流行すればいち文化となる。ただ、根拠3は、tier1陽キャに限らないという事実も孕んでいることは認めざるを得ない(自覚)。
このように、皮肉にも感染的な普及性を淫夢語録は内包している。加えて、tier1陽キャは、メディアリテラシーはあるがネットリテラシーは醸成されていないという傾向があるため、インターネットの専門用語を多発することでそれの劣等感を払拭しているという指摘をする論文もある。

 なぜ言いやすいのかについてだが、これは、日本人の母語である日本語と淫夢語録が酷似しているという点が挙げられる。以下、理由を述べる。
 まず、日本語は、
1:母音優位
2:抑揚が無い
3:同じ強さ、同じ長さで発音する
4:同じ内容を表すのに、他言語より音節が多い
といった特徴がある。
淫夢語録には、日本語と同一の意味・活用で使用される語彙が数多く確認できるため、淫夢語録は日本語であるとする学派も存在しているが、「カンノミホ」や「ターミナルさん?!」など便宜上日本語表記でも本当はどのような言葉なのか解明されていない語録も存在するため、こちらも決定的とまでは至ってない。

 日本語と淫夢語録が同じかという研究は他の研究者に任せるとして、ここでは、上記4の特徴を使って淫夢語録との共通項を考える。
アプローチ方法としては、具体的な淫夢語録各種の意味と同等の意味を持つ日本語を並べ、音節数が似通っているかを見比べる。

[実験]
(日本語をN、淫夢語録をIと表記する。)

N:これ勲章モンじゃねえ?笑 ー9音節
I:これって・・・勲章ですよ? ー9音節

N:なにかスポーツでもやってるの? ー12音節
I:スポーツとかやってたりするの? ー12音節

N:ごめんだけど、昼は無理かなあ ー13音節
I:申し訳ないが昼はNG ー13音節

[結果]
①・②・③すべて同じ音節数になった。

なんだこれは(困惑)・・・たまげたなあ(驚愕)。これじゃあ、日本語と淫夢語録が同じであることの証明になっちゃったじゃないか(憤怒)。

さすがにこの3つだけを見て、日本語と淫夢語録が同一であるとするのは雑が過ぎるが、本来の目的である「淫夢語録の言いやすさの検証」は、具体例の日本語と音節数が同一であることをもって「言いやすい」で決定的になったものと思われる。

結論

 したがって、根拠1・2・3をもって、淫夢語録とtier1陽キャは親和性が高いと言える。


終わりに

 いかがでしたでしょうか。本稿は、自身3個目となるnoteでした。前回、前々回とは打って変わった題材を取り扱いましたが、元々書きたかったものの一つでもありました。とりあえずの完成に肩の荷が下りた感じです。

 ぶっちゃけて言えば、途中で論拠が手詰まって何回も脱糞しそうになりました。一応のコンセプトとしては、「ガバガバにならない」だったのですが、日本語と淫夢語録の音節(元々は拍も入れようとしていた)を考えたときに、「(ここまでくると、本当に論文ぽくいろいろやんなくちゃいけないんじゃないか?)」となり、さすがにそこまでの知識が無かったため、根拠3に関してはガバガバであると認めざるを得ません。
根拠1・2ももっと多くの文献から引っ張れたら良かったのですが、なにぶん題材が題材ですので、どう検索したら目的の論文にヒットするか分からず、思わずCiNiiちゃんを犯すところでした(大胆な告白)。あと、tier1陽キャの定義については、参考文献に載せた文献から引用したわけではなく、自分で考えました(ガバガバ)。そもそも、参考文献もまともに引用してるわけではありません。引用しようと思ったけど、字数がんにゃぴ・・・になるのと単純にそこまで労力は避けなかった(語録無視)。一通り目を通してはいます。
良さそうな文献があればコメントで教えてください。

本稿は、これで〆とさせていただきます。



【参考文献】
・作田 誠一郎(2016) 「「スクールカースト」における中学生の対人関係といじめ現象」,『佛大社会学』40,p.43-54,佛教大学社会学研究会

・石田 靖彦(2017)「各学校段階におけるスクールカーストの認識とその要因 ― 大学生を対象にした回想法による検討 ―」,『愛知教育大学教育臨床総合センター紀要』7巻,p.17-23,愛知教育大学教育臨床総合センター

・菊地 つばさ(2014) 「浸透する若者言葉の特徴についての考察~由来となった単語との比較から~」,『岩手語文』17,p.18-21,岩手大学文語会

・https://ch.nicovideo.jp/chihou/blomaga/ar341345 日常で使える淫夢語録

・平出 昌嗣(2017) 「発音とリズム:学校文法を超えて 2」,『千葉大学教育学部研究紀要』66巻1号,p.345-350,千葉大学教育学部

・大里 泰弘(1999) 「「語感」について考える」,『長崎ウエスレヤン短期大学紀要』23巻,p.107-112

・https://www.nicovideo.jp/watch/sm20785631
 難聴 『菅野美穂』 を検証する・前編.projectXXX

・https://www.nicovideo.jp/watch/sm20888771
 難聴 『菅野美穂』 を検証する・後編 音声分析編.project90

・https://dic.nicovideo.jp/a/
 %E3%82%84%E3%82%93%E3%81%BB%E3%81%AC やんほぬ

・https://www.nicovideo.jp/watch/sm22071751 再検証・難聴 『菅野美穂』  前編.wonderprojectJ2

・https://www.nicovideo.jp/watch/sm22403763
 再検証・難聴 『菅野美穂』後編その①.astral projection

・https://www.nicovideo.jp/watch/sm22889894 
 再検証・難聴 『菅野美穂』後編その②.genomeproject

・石原 一輝・金和 達也・館 一輝(2020)
 「現代のリアルな若者の若者言葉の使い方とその心理」,『論文集/金沢大学社会学域経済学類社会言語学演習』15巻,p.33-46,金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習

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