見出し画像

論文事例:電気電子部門(選択科目:電気設備)I-2

本論文は、令和2年度に受験されました方の復元論文でありご了承いただき公開をしています。改めてこの場を持ちましてお礼申し上げます。 なお、復元論文のため、試験で回答した論文と相違があると思いますが、ご了承のほどお願いします。

Iは必須問題であり、他部門との融合された試験の出題例もあります。
例えば、令和2年度電気電子部門(選択科目:電気設備)のI-1は、サプライチェーンマネジメントを中心として農業分野の課題を電気電子視点から回答することを求められます。
機械は、動力エネルギーとして電気を使って動かす事例が多数あるため、電気電子部門や他部門の問題は一読しておく必要があると考えます。

1.問題と 論文作成者様の論文

1.1 問題本文

太字:論文を書く上でのキーワード 

地球温暖化は世界共通の大きな問題である。地球温暖化が確実に進行している中で、電気エネルギ―は人類にとって必要不可欠なものであって、今後も欠かせない。これまで、発電時の温室効果ガス(GHG)の排出が地球温暖化の要因にされ、再生可能エネルギ―の活用が進められてきている。また、温室効果ガスの排出抑制の面からは電気自動車の開発など、多様な取組が進んでいる。しかし、東日本大震災以降、原子力発電所の事故の経験を踏まえて、発電時の温室効果ガスの排出量だけでなく、プラントの建設から廃棄処理まで、ライフサイクル評価することに、ますます関心が高まっている。温室効果ガスの削減目標は各国で決められてはいるが、地球温暖化対策の道筋は不確定要素も多く、先行きが不透明である。このような状況の中、資源の3R(Reduce、Reuse、Recycle)行動や再エネ・省エネ・創エネ・蓄エネなどの個々の対策に問われれることなく、エンジニアリング問題としての観点からも、総合的な「幅広い予防的アプローチ」をとることが求められている。
(1) 上記を踏まえ、そうした「幅広い予防的アプロ―チ」をとるうえで、電気電子分野の技術者としての立場で3つ以上の多面的な観点からそれぞれの課題を抽出し、それらの課題の内容を観点ごとに示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち電気電子技術分野に関連して最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ示せ。
(3) 上記すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の保全の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

引用元:公益法人日本技術士会 (https://www.engineer.or.jp/c_topics/007/attached/attach_7385_1.pdf) 

1.2  論文作成者様の回答

1.幅広い予防的アプローチの課題:課題は、技術面、
環境面、資源面について述べる。
1.1技術面の課題:省エネ化への取組みである。今まで使用されていた製品の電気量が減少できる。減少した電気を他方面に活用できることで電気を有効活用できる。
1.2環境面の課題:再生可能エネルギー(以下再エネ)の割合が低いことである。温室効果ガスの主成分が、CO2 である。再エネを創るときにはCO2はほとんど発生しない。
1.3資源面の課題:化石燃料の削減である。東日本大震災以降、原子力発電の割合が減少し、火力発電の割合が増加した。火力発電は、化石燃料を燃やして発電を行うため、CO2が発生する。温室効果ガスを減少させるため、化石燃料の割合を減少する必要がある。
2.重要と考える課題と解決策
2.1重要と考える課題:重要と考える課題は、省エネへの取組みである。理由は、省エネ化を行うことで、使用されるエネルギーが減少する。使用されるエネルギーが減少すれば、 CO2 が削減され、温室効果ガスも減少するからである。
2.2解決策:解決策を3つ述べる。
1)バーチャル・パワー・プラント(VPP)の導入:電力が必要箇所に小さな電力所を用意する。そこから電力の供給を行う。メリットは送電をする際のロスが少ない。スマートメーターを用いることとその地域の電力量を把握でき、無駄な電力を創ることがなくなる。
2)デマンドレスポンス(DR)の導入:電気の余っているところから電気の足りないところへ電気を供給する。電気のやり取りについては、アグリゲータが行う場合がある。
3)スマートグリッドの導入(図1参照):スマートグリッドでは、1つの
発電(風力)だけではなくいろいろな発電を使用することができる。メ
リットは、ネットワーク上の場所であれば、どこでも電力を使用するこ
とができる。デメリットは、設備が高いことである。
              図1スマートグリッド
3.新たに生じるリスクと対策
3.1新たに生じるリスク:リスクは、セキュリティの確保である。ネットワークを使用するため、セキュリティの確保を行わないとデータ漏えいにつながってしまう。
3.2対策
1)パスワード設定:データを送付する際には、パスワードを設定する。データを紛失してもパスワードをかけていれば、簡単にデータを盗まれることが低い。解読にも時間がかかる。
2)ファイアーウォールの強化:ファイアーウォールの強化を行う。これにより、不審なアクセスができなくなる。また、ログの監視を行い、不審なログについては、排除するようにする。
4.技術者倫理、社会の保全の観点の要件、留意点
4.1技術者倫理の要件、留意点:要件は、法の遵法である。法律改正に伴い、業界内で改正内容を把握し、法律、ガイドラインを守り、事故を起こさないようにしていく。留意点は、製品の部品の長期化である。部品の長期化ができれば、廃棄する製品が減少し、CO2削減にもつながる。CO2が削減できれば、温室効果ガスも減少することができる。
4.2社会の保全の観点の要件、留意点:要件は、資源の有効活用である。RoHs指令、REACH規制を守りながら資源循環を実施していく。留意点は、設備の更新である。更新時期が遅くなると保守部品などがなくなってしまい、修理ができなくなる。古い部品を使用しているとエネルギー効率も悪くなるので、更新時期の判断が重要である。 -以上―
* 図1は省略をしています。

2. 添削結果

全体
今回は、温暖化対策を電気電子技術の中でできることを多面的に予防的なアプローチにて提案するというお題です。
①予防的:事前に定量的にとらえて予測しながら対処する(温暖化:CO2や消費電力)
②多面的、幅広さ:生産活動におけるライフサイクルの全般
という視点で提案できるかを見ました。
そう考えた場合に、本論文は、技術面、環境面、資源の3点をあげて、省エネを中心に今あるエネルギーを効率的に使うこととしていました。ですので、おおむね問いに対しては答えていると思います。
電源の分散化としているのは、大規模発電による送電ロスや将来的な人口減を念頭に入れていると思います。
そのため、人口減、火力・水力発電といった大規模発電所から都市部への送電ロスの記述があると、論文が良くなったと思います。
一般に、太陽光発電や風力は発電量が小さいため、大規模な電力を賄えないので、小さな発電所をつくり、住宅地を小さくしてその分電力を効率することでカバーをするという記載ができるとよいと思います。
『…する化石燃料による発電を占めている。そのため、CO2及び発電量を削減することが温暖化対策であり、この対策の課題を技術面、環境面、資源面から述べる』
2の部分に
『省エネである。理由は、太陽光発電やごみ発電といった小規模発電設備による電力供給を可能にすることで、CO2を減らしつつ送電ロスを減らして..』
という言葉を入れると、省エネの観点が通るかなと思いました。

2.3 気になる点

専門用語が少なく、数値表現ががあるとよい気がしました。
例:温室効果ガスの90%はCO2なので、これを減らすと効果がある。
見直し例:Co2を排出する化石燃料の発電は現在約80%を占めているため、これを削減することで…

「2.2解決策」の後に、「分散型システムを採用し対策を3案述べる」
とかくと伝わりやすいです。

「3.リスクと対策」で、パスワードをあげていますが、これは技術的な面というより一般的なレベルなので、電気電子部門の技術者としての専門性が文章から読み取れません。システムの不具合に対して、早期の復元か、バックアップ等の対策を示せるとよいです。
例:
ライフライン設備(病院、警察、官公庁)などの電源多重化

BCPプランによる早期復旧

また、留意点自体は適切だと思います。

4については、要件で法令順守をあげているので、エネルギースター制度や環境負荷物質を出さない製品つくりを記載します。その場合、4.2のRoHS,REACHの記述を削除すれば一応の表現はなりたつと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?