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神様の言う通りにして上手くいったことって

来たことない土地の匂いに懐かしさを感じること。
ふとした会話の一部分で、貴方を思い出すこと。

思ってもいないタイミングでのフラッシュバックは、酷く心を締め付ける。貴方の匂いによく似たボディソープを、ちまちまと使っていたことを思い出した。匂いを感じるには使うしかなく、比例して無くなっていくボディソープは、メーカーが分からずじまいだった。
匂いは、奥底の、脳髄にこびりついた記憶を思い出させる。可愛いあの子の使っていた香水は、時折わたしの大脳辺縁系を刺激し、扇情的な気分にさせる。

幼なじみとコンビニまで散歩した日曜の昼下がりの風の匂いが、幼稚園の時の帰り道の匂いがして、
「懐かしい匂いがした。」
と、言った。幼なじみはこちらを振り返って、何も分からないみたいな顔をして、
「隣来てよ。」
と言ったので、わたしは隣に行った。あの頃みたいだった。7時20分にいつもの場所に集まっていた頃。近所の暇そうなおじいちゃんが世話しているしだれ桜を6回見た。7回目は、あの子が社会からリタイアして見れなかった。8,9,10,11回目も見れなかった。この間、ふたりで散歩をした。7回目のしだれ桜を見た。
「綺麗やな。」
「こんな綺麗やったっけ。」
「なんかさ、うちらの位置、違和感あるね。」
と、あの子が言う。
「逆やん。」
とわたしが言った。歩く時はわたしが左であの子が右だった。あの子は遠くへ行ってしまった。わたしだけがこの土地に遺されたままだ。

気づけば、高校を卒業していた。子どもの頃は、18歳なんてもっと大人だと思っていた。18歳になってもママの買い物に着いていってお菓子を100円分、買ってもらうしグミかドーナッツか、選択を神様に委ねることもある。今まで何百回も神様の言う通りにしてきたけれど、わりと神様も失敗することは多かったらしい。寧ろ、神様あなたは失敗しかしていません。
あんなに嫌いだった学校が、女子高生が、今は羨ましくてしょうがない。数学の追試の時だけ話すあの子、授業中無音で撮ったtictok、過呼吸起こした卓球、どうしようどうしよう、キリがないよ、女子高生なんで三年しかないの?人生の中で、絶対いちばん可愛いよ。派手髪にして、ネイルして、メイクもしっかりして、ちゃんとした服着てる今より、黒髪で、薄メイクなのにデカいカラコンつけてた時の方が、ずっとずっとかわいいよ。でももう戻ってこないの!今同じことしても、もう可愛くないの。
気づいて!今女子高生を浪費してる貴女。今の自分が本当に可愛くて、もう二度と戻ってこないこと。わたしはそのことに、気づくのが遅すぎたみたいです。
高校の時、生徒会に入っていて、真面目を具現化したみたいな友達が大学に入って、新歓行って男とお水回し飲みしたり手繋いだと聞いた時悲しくて悲しくて泣きそうになりました。大人になるってこういうこと?

ままとぱぱが共働きだったので、かなりおばあちゃん子として育った。ままがフルタイム勤務を辞めてからも、隣の家に住むばあばに会いに、足繁く通った。
友達からも美人だと言われるばあば。わたしのために振袖や、車を買ってくれるばあば。でも、毎週火曜、近所の薬局の特売日に、わたしの好きなうすしお味のポテチとバームクーヘン、しろくまアイスをたんまり買い込んでくれることに、いちばん愛を感じる。

『日本の未来は WowWowWowWow 世界が羨む YeahYeahYeahYeah』と歌ったものだが、本当に今の日本の未来を羨む国はいるのだろうか・・・。

以前、と言っても三年も前、インターネットの海を巡回している時に、綺麗で綺麗で、とても好きな詩を見つけた。本を写真に撮ったものだった。わたしはそれを酷く気に入って、

その本がどうしても欲しくて、見つからないから諦めた。先日、いつも通り本屋を物色している時とても目につく本があって、購入した。朝の電車で読んでいると、わたしが何回も目にしたあのページが、あの詩が!こういうことがあるから、本を、文章を読むのは辞められない!寺山修司『寺山修司少女詩集』です。


涙は海である。
涙も海水も、化学式で表すとNaClである。
わたしは今までの人生でどれほどの海を作れるのだろう。小さな鯉1匹は育てられるくらいの海になると思う。それは世界でいちばん小さい海だけど、それは間違いなく、海だった。

季節に合わせた本を読んだり、月が綺麗だったり、花が咲いていたりして涙が出たり、人の頑張りを目の当たりにするとどうしようも無く胸が締め付けられたり。そんなわたしのことが、わたしは世界でいちばん大好きです。





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