スカッと話☆裏切りの罪
裏切った男
由美は29歳、広告代理店で働くキャリアウーマン。
仕事でもプライベートでもしっかり者で、周囲からの信頼も厚い彼女には、涼という恋人がいた。涼はハンサムで話も面白く、気遣いもできる男性だったので、友人たちからは「理想の彼氏」と羨まれる存在だった。2年の交際期間中、由美は結婚を意識するようになり、将来を見据えた生活の準備まで始めていた。
しかしある日、涼が突然別れを切り出した。「君といると、なんだか窮屈に感じるんだ。もう終わりにしよう。」その一言で、由美の胸は締め付けられるような痛みに襲われた。理由を問いただしても、涼は「自分のためだ」と繰り返すばかりで、冷たい態度を崩さなかった。さらに、別れ話の最中にもスマホをいじるそぶりを見せ、由美をますます傷つけた。
数日後、友人から送られてきたSNSのスクリーンショットで、涼が由美と交際中に別の女性と親密にしていたことが発覚する。その女性は、涼と共同で立ち上げたビジネスパートナーだった。さらに驚いたのは、涼がその女性とのビジネスを軌道に乗せるため、由美の信用を利用して投資を募ったり、由美の人脈を勝手に活用していたことだった。
由美は怒りと悔しさで涙が止まらなかった。しかし、悩んでいるだけでは何も変わらないと考え、復讐を決意する。「彼が利用したのは私の信頼と努力。それを取り返すのは私の権利だ。」由美は冷静に、そして着実に行動を開始した。
まずは涼とのやりとりや、彼のビジネスに関する証拠を整理した。契約書、メール、写真…全てを徹底的に調べ上げ、弁護士に相談した。そして、合法的な手段で涼が不正に利用した資金の返還請求を行い、ビジネスパートナーや出資者たちにも彼の行動を知らせた。
涼のビジネスは瞬く間に崩壊した。信用を失った彼は出資者からの訴訟にも直面し、かつての自信満々な態度は見る影もなくなった。一方で由美は、自分が集めた証拠や資料を元に、新たなビジネスプロジェクトを立ち上げていた。今度は自分自身が中心となり、誰にも頼らず、堅実な道を選んだ。
半年後、由美のプロジェクトは大成功を収め、雑誌やテレビでも取り上げられるほど注目を浴びるようになった。そのニュースを耳にした涼は、由美に再び接触を図ろうと試みた。彼は「久しぶりだね。やっぱり君と過ごした時間が忘れられない」と媚びたような態度で話しかけてきた。
しかし由美は、涼の目をまっすぐに見つめながらこう言った。「涼くん、裏切りの代償は大きかったでしょう?でも、私はもう前を向いているから、あなたの居場所なんてないわ。」言葉に迷いのない毅然とした態度だった。
涼がその場で口を開けたまま呆然と立ち尽くす中、由美は颯爽と去っていった。彼女の後ろ姿は、かつてよりもはるかに堂々としていた。
由美はその後も成功を重ね、自分自身の力で築き上げた人生を満喫する。そして時折こう思うのだった。
「あの時、涼に裏切られたからこそ、私は本当の自分を見つけられた。」
裏切りの代償 ~そして1年後~
あれから1年が経った。由美の生活は順風満帆そのもので、広告業界で新しいブランドを立ち上げ、雑誌にも特集されるほどの成功を収めていた。一方の涼はというと、失墜したビジネスの尻拭いと信用回復に追われ、かつての輝きは見る影もなかった。
そんな涼が、久しぶりに由美の前に現れたのは、都内のカフェだった。由美が友人とランチを楽しんでいると、「偶然だね!」と明らかに作為的な笑顔を浮かべた涼が、やけに派手なスーツを着て現れたのだ。
「由美、久しぶり。君の成功ぶり、噂で聞いてたよ。さすが俺が目をつけた女性だけあるね。」
由美は驚きながらも冷静に笑顔で応じた。「あら、ありがとう。ところで涼くん、今どんな仕事してるの?」
「実は、俺、ビジネス再起したんだよ。今度こそ本物の成功を掴むからさ。その…君の力を少し借りられたらと思ってね。俺たち、昔はいいチームだったろ?」
涼の目は、どこか自信がありながらも焦りを隠せないようだった。由美は内心笑いを堪えながら、あえて真剣な顔をして答えた。
「それはすごいじゃない。でも、涼くん、前に私にしたことを忘れたわけじゃないよね?一緒に何かするなんて、もうありえないわ。」
涼は焦りを隠しきれなくなり…「いや、誤解を解きたくて!実は、君をずっと尊敬してるんだ。だから…」
その時、由美のスマホが鳴った。画面には、彼女の新しいパートナーであり現在の婚約者の名前が表示されている。由美はスマホを涼の目の前で堂々と手に取り、にっこりと微笑んだ。
「ごめんなさい、大事な人からの電話みたい。」
涼はその場で固まり、次の言葉が出なかった。由美は立ち上がり、彼にこう言い放った。
「涼くん、自分の価値は誰かに認められ用とするものじゃないわ。自分で築き上げれば自ずと認められるわ。過去に囚われる暇があるなら、一つでも未来を作るのに集中しなさい。」
涼はその言葉に完全に打ちのめされ、由美が去る姿をただ見つめるしかなかった。彼の顔は、1年前に彼女に一撃を喰らった時と同じように、ただ立ち尽くし呆然としていた。
由美は心の中で静かに笑いながら、こうつぶやいた。
「復讐って、わざわざ仕掛けなくても、時間がちゃんと仕上げてくれるものね。」
…名言だ!