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潜水、後、晴。

誰もいない夜でした。
声にならない声で叫びました。
何かが僕の心臓のなかで暴れまわっていました。

腕を引っ掻き、頭を掻き回して床の上を転げまわりました。

けれど、どれだけ喚いても傷をつけてもなんにもならなくて。
糸が切れて、全部どうでもよくなって、僕は床に沈みました。
転がる僕が見上げた部屋は小さく、
ぼんやりしたままの僕は、それを潜水艇に見立てて夜に沈んでいきました。

望んだのは明けない夜で、
欲しかったのは海の底の冷たさでした。
明日がこないように、祈りながら夜の底を漂っていました。
だけど、だけど、だけど。

潜水艇は少しずつ少しずつ浮き上がって、だんだんと光が差してきました。
まっさらな新しい日がやってきました。
小さな僕の部屋は昨日を振り切って浮上しました。
差し込む光を浴びて、床に転がったままの僕は笑いました。

・・・今日もまた、微かな絶望から始まる一日です。