雨の日 晴れの日 パレット
雨
一月の、いつかの雨の日
その週の始まりはなんだか少し気だるげだった
不調であることが手に取るようにわかる
どんよりと広がる空のせいか
責任を天気に押し付けるのもお決まりごとのようだ
いつも通りの一日を過ごして
歩いてバイトへ向かう
いつもなら風をきって通り過ぎる道端の花を
ゆっくりじっと眺めてみる
ピンクの花はどこか可愛らしかった
一つ足りない花弁を探して
目線を下に下げてみた
花弁はどこにもなかった
ふと足を止めて地面に目をおいやる
水溜まりだ
何を気になったのか
少しの好奇心で そっと顔を覗かせた
小さな鏡に反射する自分
傘の端から手を出して 雨を感じる
すぐに乾きそうな小さな水が
どうしてこんなに大きくなるのかと
自然の摂理を不思議に思う
もしかしたら
この水の奥底には別の世界があって
その世界から もう一人の私が覗き込んでるんじゃないか
なんて
またそんなことを考えてしまった
何度目かも分からない空想の世界
誰も知らない、私だけの世界
ただの水溜まりを見ただけで
こんな事を考えてしまう自分に少し呆れつつ
空想の中で理想の世界を創ってみたりもする
ファンタジーの読みすぎだな
でも、そういう世界を想像するのは楽しい
晴れ
朝一で取り込む光が眩しいほど
その日は気分がいい気がする
天気一つでこれほど一日が左右されているのだから
なんとも不思議な事だ
冬の冷たさが好きだったりする
日中よりもずっと冷え込む静かな夜は
今が冬であることを認識するには充分だ
街頭のない夜道を
遮るもののない頭上の月が照らしてくれる
低くも高くもない建物が
空の広さをより一層感じさせてくれる
星が移動していた
当たり前のことが
どこか神聖で神秘的だ
パレット
パレットに色を入れて
減ってきては、また入れる
その繰り返し
同じ色しかなかった一つのパレットは
いつしか二つも三つも増えていて
色んな色で溢れている気がする
今日はどんな色だろうか
どんな色を作ってみようか
その色はきっと私だけのものだから
私だけが感じれて
私だけに見える
私だけの彩度のある世界
諦めていたものが
消えかけていたものが
忘れかけていたものが
失いかけていたものが
まだ私の中で息をしていたみたい
私が持っていた 私の色を少し見つけたみたい
それがこんなにも嬉しい
大事なものを大切にできる人に憧れる
感情に素直で居られる人に憧れる
自分に真っ直ぐな人に憧れる
曲げない信念を貫く人に憧れる
そういう人でありたいのかもしれない
憧れは何時だって私を掬ってくれる
簡単で、簡単ではない
「素直でいること」
もしかすると 一番シンプルな事なのかもしれない
忘れがちで、失いがちなことなのかもしれない
何時だって
その時の煌めき次第
跳ねて、弾いて、輝いて
ライトを照らして
多彩な色を持っていたい
同じでも同じではない一色を持っていたい
自分に正直であること。
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