見出し画像

🅼の臨床推理日記 ❷待合室の事件

車で30分くらいの地域からみえる婦人。何か不調が起こると、その都度来院するクライアントAさんである。
いつも予約の時間より早めにみえるのだが、この日は予約時間を過ぎてもおみえにならなかった。
もしかして時間を勘違いしたのかな...?
もう次の予約の方がいらしていたので、その方を優先して治療しようとした矢先に、おみえになった。

Aさん 「スミマセン....、出かけるときに気分が悪くなって....」
🅼 「気分が悪くなったって....、どうしたの?」
Aさん 「胃がむかむかして....、運転中も吐き気がして、ゆっくり来たものだから....、スミマセン....」
🅼 「それはいいんだけど、心当たりは?」

 心当たりはないらしい。お腹も下してないと言う。次の予約患者さんが、お先にどうぞと促してくれた。
Aさん 「スミマセン!...先にトイレに行かせてください」。

🅼がベッドのセッテングをして待っていたら、待合室で「先生、先生!大変だ! 倒れたよ!!」
急いで待合室に行ったら、クライアントさんが横向きに倒れていた。
声をかけたら....無言。
近くでみていた患者さんに状況を聞いたら、「トイレから出てきて私の前で崩れるように倒れた...」らしい。

「大丈夫?...、わかる?...」と声かけしていたら、反応があった。
トイレで嘔吐した、と言う。
「....後はよく分からない」と、か細い声で話した。
落下発作か失神でもしたしたように崩れ落ちたらしい。

そのまま少し横になっているように指示したが、冷や汗が出ている。
顔面は蒼白だった。
ともかく、次の予約の患者さんの施術を終えてから、Aさんの様子を見に行った。
まだ顔色が悪く、冷や汗もでている。

おそらく迷走神経の血管反射による失神だろうと思い、その状態のままでAさん背側核のチェックを素早く行った。
結果は、背側核(両側+)、緊張がある。
腹側核は(左+)、疑核(左+)
そこで、この迷走神経のそれぞれにアジャスト(調整)した。
再びそのまま休んで様子をみることにして、今度は次にみえた患者さんの治療を行うことにした。

しばらくすると、Aさんトイレに立つ気配である。
トイレから出てきて待合室の椅子に腰を掛けたらしく、その場で家内と会話している。
声も元気そうになっている。

ひとまず安堵して患者さんの治療を終えて顔を見に行くと、すっかり元のAさん戻っていた。

Aさん 「先生から治療してもらったら気分がスーッと良くなって、頭もスッキリした! ちょっと治療しただけだったのに何をしてくれたんですか?...」。

しばらく談笑しながら....
🅼 「コロナワクチンは、いつ接種したの?」
ワクチン接種で迷走神経反射を起こす人もいるらしいのだ。
Aさん 「8月29日に4回目の接種をしたけど....」
🅼 「じゃ一週間前だものね。日数が開いてるから関係はないと思うけど..」

Aさんは、そのまま運転して帰れるほど元気に回復した。
🅼 「また、同じ状況になる様だったら、かかりつけ医に診てもらうんだよ」

推論(迷走神経反射)とアジャスト(調整)と結果(回復)がみられたことから、迷走神経血管反射の病態だったのだろうと思える。

さて迷走神経系は、近年(1994年)になってS.W.ポージェス博士(写真)の「ポリベーガル理論」が注目されている。
自律神経系を迷走神経複合体から解釈された理論であるが、その影響は心身相関に対する考え方にも波及している。
ポリベーガル理論については、また触れる機会もありそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?