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「あはき」ってご存知ですか? 鍼灸のエビデンス

地域医療ジャーナル 2021年8月号 vol.7(8)
記者:masayoshi/病鍼連携連絡協議会
鍼灸師


 読者のみなさん、こんにちは!鍼灸師の木津です。

 長い梅雨が明けましたね〜。(*´꒳`*)

 夏本番、熱中症に気をつけて頑張って参りましょう!

 

 さて、今回は東京大学医学部附属病院リハビリテーション部鍼灸部門の粕谷大智さんにお願いして、鍼灸のエビデンスについて書いていただきました!

 鍼灸って何故効果があるのか? その謎に迫って参ります!(木津)


鍼灸のエビデンス
 

【はじめに】

 鍼灸療法は、2,000年以上の歴史がある東アジアの伝統医学です。

 理論的に同様の背景をもつ湯液(漢方)と比較して、方法論的には地域特有の資源を必要とせず、簡便かつ再現性が高いため、他の地域に普及しやすい側面をもっていました。

 鍼灸が世界的に認知されるエポックメーキングは、1972年のニクソン訪中に先立つ1971年、中国の鍼麻酔手術が世界的に報道されたことによります。

 翌年、アメリカのニクソン大統領が初めて中国を訪問し、この時に麻酔をせずに鍼刺激で虫垂炎の手術を行う模様が世界に発信されました。

 中国の鍼麻酔が初めて国際的に報道され、これをきっかけに日本においても鍼のブームが起こり、鍼による鎮痛機序の研究が世界的に始まりました。

 この反響は、奇術や伝統医学としてではなく、医学として鍼の鎮痛機序を検証し直そうという視点が生まれるきっかけになりました(図1)。

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図1 1971年9月 毎日新聞よりハリ麻酔の記事


【効果と作用機序】

 鍼灸は鎮痛作用だけでなく、自律神経系の作用(リラックス効果や内臓機能の調整)、循環系の作用(血流改善)などの効果も期待できますが、先に紹介したように1970年代は世界的にオピオイドの基礎研究が進んでいた時代でもあり、鍼の鎮痛機序として、内因性オピオイドや神経伝達物質の分泌、ゲートコントロール理論による脊髄分節性反射などが、基礎研究レベルで検討されるようになりました 1)。

 鍼刺激により、βエンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンの髄液中の濃度・血中濃度が上昇すること、ナロキソンの投与によって鍼鎮痛の効果がなくなること 2)、鍼通電刺激の周波数により内因性オピオイド神経ペプチドの種類が異なること、すなわち、2Hzの周波数刺激ではエンドモルフィンやエンドルフィン(μオピオイド)が、15Hzではエンケファリン(δオピオイド)100Hzではダイノルフィン(kオピオイド)が髄液中の濃度・血中濃度が上昇することが報告されています 3)。

 また、下行性抑制系の賦活がかかわるとして、セロトニン、ノルアドレナリン、近年ではオキシトシンの分泌亢進も示唆されています(図2)。

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図2 鍼鎮痛のメカニズム


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