食品の購入はどのくらい買い物客の栄養素摂取量に反映されているのか
地域医療ジャーナル 2022年1月号 vol.8(1)
記者:shinnoyuki
管理栄養士 / 修士(人間生活科学)
食品の買い物情報から,食品や栄養素の摂取量を推定できるアプリ,ありますよね。食品や栄養素の摂取量を把握することは,とても大変なことです。毎日となると余計にです。そのため,買い物情報だけでそれらが把握できるのであれば,とっても便利ですよね。
一方で,少し疑問が残る部分もあります。そういった食品の買い物情報から推定される食品や栄養素の摂取量が,どのくらいの正しいものなのかということです。そこで今回は,「食品の購入がどのくらい買い物客の栄養素摂取量に反映されているのか」ついて紹介した論文【1】を読んでいきたいと思います。
先に概要を紹介しますと,下記のようになります:
❶ 食事の質(HEI-2010スコア)と食品・栄養素摂取量について,(1)食品購入情報から推定されたものと,(2)実際の食事から推定されたものとの一致度を確認
❷ HEI-2010スコアは中程度の一致を示した。しかし,食品・栄養素摂取量は,それほど一致していなかった(高い一致度が確認されたのは食物繊維,果物,野菜であった)
❸ 食品購入情報からは,HEI-2010スコアをある程度は正確に推定できるが,個々の食品・栄養素摂取量の推定は困難なことが示された
「食品の買い物情報」は注目されている
「食品の買い物情報」は,近年とても注目を集めているテーマです。食環境や食行動とも関連していることが示されはじめているからです。たとえば,世帯収入が少なかったり,教育歴が低い人は,安価で栄養価の低い食品を購入する傾向にあるようです【2】。そういったことから,最近の研究でよく測定されるようになりました。
しかし,必ずしも,買った食品=食べた食品でないことは,感覚的に理解できることだと思います。それが,この分野の研究をより困難なものにしています。食べずに残した食品もあるでしょうし,買っていない食品(例えばもらい物)を食べることだってあるでしょう。それらにどのくらいの違いがあり,その違いは何によってもたらされているかを把握することが重要です。
本研究では,食事の質(HEI-2010スコア)および食品・栄養素摂取量について,
(1) 食品の買い物情報から推定されたもの
(2) 実際の食事から推定されたもの
とを比較することで,上記を明らかにしようとしています。
参考文献
【1】Appelhans BM, French SA, Tangney CC, Powell LM, Wang Y. To what extent do food purchases reflect shoppers' diet quality and nutrient intake? Int J Behav Nutr Phys Act. 2017 Apr 11;14(1):46. doi: 10.1186/s12966-017-0502-2. PMID: 28399887; PMCID: PMC5387266.
【2】Appelhans BM, Milliron BJ, Woolf K, Johnson TJ, Pagoto SL, Schneider KL, Whited MC, Ventrelle JC. Socioeconomic status, energy cost, and nutrient content of supermarket food purchases. Am J Prev Med. 2012 Apr;42(4):398-402. doi: 10.1016/j.amepre.2011.12.007. PMID: 22424253; PMCID: PMC3858078.
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