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ねこと学ぼう、おくすり情報 第1話「腎臓に薬の結晶ができる!?」

地域医療ジャーナル 2022年1月号 vol.8(1)
記者:ph_minimal
薬剤師


はじめに

突然ですが、新連載です。これまで、ねこ薬剤師たちの論文抄読会の内容を私が勝手に文字に起こして、「ねこでも読める医学論文(a.k.a.ねこ読め)」という作品として、ねこたちに黙ってこっそり垂れ流してきました。

論文情報を主役とした内容もよいのですが、もっと素朴なおくすりネタを幅広く取り上げてみたらどうかということで、スピンオフ企画を始動します。その名も「ねこと学ぼう、おくすり情報」です。「ねこ学(ねこまな)」と略し、「ねこ読め」と並行して「ねこ学」を連載していきます。

 

ねこと学ぼう、おくすり情報 第1話「腎臓に薬の結晶ができる!?」 

はかせ「ふぅむ…」

みに丸「おっ、バラシクロビル1日6錠ですか。口唇ヘルペスじゃなくて帯状疱疹ですかね」 

※ヘルペスウイルスをおさえるバラシクロビル(バルトレックス)は治療目的によって用量が異なります。
帯状疱疹:1日3000mg(500mg錠×6錠)を3回に分けて服用
単純疱疹(口唇ヘルペスなど):1日1000mg(500mg×2錠)を2回に分けて服用


はかせ「うん、そうだと思うんだけど、この患者さんは糖尿病の既往がある」

みに丸「はぁ…。それがどうしましたか…?」

はかせ「『はぁ』じゃない。そこは、『なぬ!?』だろ?」

みに丸「バラシクロビルは糖尿病だとまずいんですか。添付文書には『糖尿病』に関する記述はないですが…。ボスはいったい何を言ってるんだか…」

はかせ「糖尿病の三大合併症はなにかな?」

みに丸「『しめじ』です」

はかせ「き、急にどうした?おなかが空いているのか?おなかが空いているわりには、腹の足しにならないような食材だが…」

みに丸「違いますよぉ。神経障害、網膜症、腎症ですよね。神経の『し』、網膜症は眼なので『め』、腎臓の『じ』でしょ。頭文字をとって、『しめじ』ですよ」

はかせ「ほら!」

みに丸「なにが『ほら』なんですか。これは『ホラ話』じゃないですよ」

はかせ「そういう意味ちがう。『ほらみろ』の『ほら』だ」

みに丸「ん…?あっ!そういうことか。腎臓ですね」

はかせ「そうだ。腎臓だ。この患者さん、長い間、糖尿病を患っている。腎臓が悪くなっているかもしれない。そして、75歳の高齢者だ。腎機能は加齢とともに低下するよ」

みに丸「ハッ!患者さんの腎機能をチェックしなくちゃ。バラシクロビルは腎機能が低下していると過量投与となって副作用リスクが!」

はかせ「そういうこと!」

 

薬はさまざまな経路で体外へ排泄されます。「肝臓で代謝(分解)されて胆汁に分泌されて糞便中へ」あるいは「腎臓で血液から尿中へ」などの排泄経路があります。バラシクロビルは尿中排泄がメインの腎排泄型薬物です。腎排泄型薬物は、腎機能が低下していると排泄が遅延します。健常者と同じ量を腎機能低下患者に投与すると過量投与となります(図1)。

図1 腎機能低下による薬物の蓄積

(ここに示した蓄積量は視覚的にわかりやすく描くための目安であり、実際の蓄積量を意味しません)

 


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