McLean Chanceの「Love Cry」 アルバムレビュー vol.5
Paul Bley, Gary Peacock, Paul Motian『When Will The Blues Leave(ECM)
Personnel;
Paul Bley(p), Gary Peacock(b),
Paul Motian(drms)
recorded at Aula Magna, Trevano, Lugano, Switzerland in March 18, 1999
ポール・ブレイは、カナダ出身のジャズピアニストで、2016年に亡くなりましたが、本作は、ECMから出された、『Not Two, Not One』のトリオによる、ライブ録音でして、アルバム録音の翌月の1999年にスイスのルガーノでの録音です。
なぜ、このタイミングで出たのかは、わかりませんが、内容はスタジオ録音とともに大変素晴らしいものです。
ブレイは結構損なポジションにいますね。
彼よりも後に注目されたキース・ジャレットというド派手な存在もあり、芸風がやや似ていたところもあって(特に1960年代のブレイとキースはよく似てます)、どうしてもあのエクセントックなキャラと次々に繰り出す問題作に割りを食っていた感はどうしても否めません。
しかしながら、ブレイにはブレイの持ち味はありまして、その独特の静謐なピアノスタイルを確立した1970年代のヨーロッパでの録音は、特筆すべきものがあります。
1980年代からはECMでの録音もあり、1999年のスタジオ録音は、久々のピアノトリオでの録音です。
ブレイのプレイスタイルは、以前よりもシットリとしたものになり、よりオーソドックスにはなってきますけども、味わいはより深くなっていますね。
スタジオ録音は、直訳すると、「2人ではなく、1人でもなく」という事になりますけども、コレはブレイがデュオやソロでの録音を好んでいた事へのある種の自虐で、「今回は3人ですよ」という事を言ってますね。
ポール・ブレイ名義にせず、メンバー全員の名前を併記して、特定のリーダーを立てていないところも今日的です。
どこからオーネット的な「Mazatlan」、ブレイ独特の空間を生かした耽美的な美しさの光る「Told You So」、まさかのガーシュウィン作の「I Loves You Porgy」のしみじみとした味わいが素晴らしいですね。
個人的には、スローテンポな曲にこそ、ブレイの素晴らしさが発揮されていると思います。
全体として、ギャリー・ピーコックのベイスが思いのほか奔放に活躍していて、当時活動中であったキースのスタンダード・トリオとは、趣がかなり違いますね。
こちらのトリオでは、キースとジャック・ディジョネットのドラムが活躍していて、ピーコックは比較的引いた立場で演奏しています。
本作は、ドラムのポール・モーシャンが、手数の少ないスタイルで、場を作り出すタイプなので、そこで、ピーコックのベイスが自由に弾きまくれるスペースができていたという事ですね。
コレは、スタイルの違いであり、優劣の問題ではありません。
唐突に発表された感はありますが(ECMはそういうところがありますけど)、相変わらずクオリティの高い作品を出し続けるレーベルではあります。
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