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McLean Chanceの「Love Cry」 アルバムレビューvol.2

Boulou & Elios Ferre『Gypsy Dreams』(Steeple Chase)

personnel:

Boulou Ferre(g), Eliot Ferre(g)

recorded in June 8&9, 1980 at Sweet Silence Studios, Copenhagen

レコードのジャケットでは録音のスタジオ名しか書いてませんが、コペンハーゲンにある同名の録音スタジオがあるようですし、レーベルもコペンハーゲンにありますから、恐らく間違いないでしょう。

ブールー・フェレは一族がみんな音楽家みたいな(要するにロマという事なんですけど)環境で生まれた、典型的な神童でして、もう7歳くらいから天才と呼ばれていたようですね。

ブールーは弟のエリオと組んで多くのアルバムを作ってますが、本作は兄弟だけで作られています。

ブールーたちのようなギタースタイルの元祖は、なんと言ってもジャンゴ・ラインハルトですが(ブールーたちのお父さんのマテロと伯父のバーロウは、ジャンゴのバンドにいました)、ジャンゴのザクッとするようなキレ味の良さよりも、ブールーの魅力は、もっとエキゾチックでロマンティックな歌を奏でるところでしょうか。

相当なテクニシャンだと思いますが、そういうところを前面に押し出すような演奏は私はどちらかというと苦手なのですけど(なんだか、ベイスとドラムを覆い尽くして潰していっているように感じるんですね)、この兄弟は常に余裕を持ってギターを弾いていて、とても好感が持てますね。

主にブールーがリード、エリオがリズムをリズムを弾いていると思われますが、タイトル曲「Gypsy Dreams」のとろけるようなうつくしと言ったら!

ブールーの絶妙にヴィヴラートのかかった音がたまりません。

ジャケットにワザワザ「一切オーバーダビングしておりません」と書いてあるくらいに、ホントはそうなんじゃないのか?というくらいに2人の演奏の息がピッタリなのがすごいですね。

ギター2人だけですから、演奏が盛り上がると走ってしまいそうですけども、一切そうなりませんね。

モダンジャズというものからは、相当逸脱してしまっていると思いますが、開祖のジャンゴがそういう人ですから、いいではありませんか。

ここまですごい演奏なのに、どこか涼やかなのがニクいではありませんか。

ジャズという北米大陸に生まれた混血音楽が、今度はヨーロッパのジプシーと出会ってまた変容してしまったという事(しかも、ブラジル音楽がうまく入り込んでいますね)、それがまた音楽というものを面白くしているわけですね。

ジャズというのは、このように延々と変容し続ける音楽なのでしょう。

ある様式や形式ではなく。

スティープルチェイスはカタログを定期的に再発してますから、中古CDやLPをお店で探すと比較的安価に入手可能です。

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