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エイジくんへ

エイジくん、今日は何の日だかわかる?
2020年10月30日。
貴方の24回目の誕生日。

‪広がっている景色は綺麗ですか?
春になったら、桜が咲き、蜜を求めて動物達が顔を出していますか?
夏になったら、胸を高まらせたセミ達が大木の彼方で甲高く鳴いていますか?
秋になったら、紅葉が頬を赤らめ、山一面に広がるキャンバスを色付けていますか?
冬になったら、辺りを宥めるような柔らかい白で陸が覆い隠れて、冷たい温もりで世界が包まれていますか?

毎日ちゃんと、美味しいご飯、沢山食べていますか?
美味しすぎて、ほっぺた落ちていませんか?
美味しいものが多すぎて、太っちゃってたりして。‬

‪温かい人たちに囲まれていますか?

‪もしかしたら、そっちの世界で、
仲間想いで、温かくて、一緒にいるとどこか落ち着いて、空気みたいに気を遣わないで、でも貴方の気持ちを誰よりも理解してくれて、たまに喧嘩もするけど、貴方のことを沢山笑顔にしてくれる、
そんな家族みたいな人たちに出会うかもしれない。
貴方には、そういう人たちを惹きつける能力があるから。
人見知りで口下手だけど、愛され上手で愛敬のある貴方は、きっとそっちの世界でも沢山の人に可愛がられ、沢山の人に愛されているんだろうな。
ずるい男だよ。
きっとね、この世界に残ったみんなが貴方の暮らす世界に辿り着くのは、貴方がこっちの世界で過ごした時間よりも、何倍も長い時間がかかってしまうと思うの。
貴方はきっと、この世界で“アバンティーズ”として過ごした約22年間の年月よりも、そっちの世界で暮らす人たちと過ごす年月の方が長くなってしまう。

それは仕方がないこと。
ちょっぴり寂しい気もするけど、これ以上言及しない。
でもね、約束があるの。

忘れないでね、
みんなのことを、
この世界で過ごした日々を、
この世界で愛されていたことを、
そして貴方が“アバンティーズ”を愛したことを。

勝手にいなくなるなんて、どこまでもずるい男。
忘れたなんて言わせないから。


なんでエイジくんらなんだろう。なんで。
貴方の声で脳を過る。

“わかる奴にはわかる、
わからない奴には一生分からねえ話さ”

わからない。やっぱりわからない。
でもこれに関しては一生わかりたくないな。
私が見ているエイジくんがあまりにも綺麗に笑うから、
まだこの世界のどこか、誰も知らないどこか遠くでひっそりと隠れて暮らしているんじゃないかって。
私の前に、すぐそこにほら、エイジくんはいるのに。
まるで嘘みたい。嘘が誠か。
どれが真実でどれが虚言なのか、
たまになにもかもがわからなくなって、
混乱して、悲しくなって、
でもそこにいる貴方が笑うから、私も笑う。
ずるい。いつも貴方はずるい。
なにも言わずに突然この世界から姿を消した貴方が、
ずるくてたまらない。
そんなの、なしだよ。

突然この世界から貴方は姿だけを消した。
でも消したのは姿だけ。
エイジくんがこの世界に残していったものが多すぎるから、誰も貴方のこと忘れないし、愛され続けられる。
普段忘れ物なんてしなさそうなのに、都合のいいようにこの世界に沢山の忘れ物をして貴方は長い旅に出た。
やっぱりずるい男。

そんなエイジくんが、私は好き。
お誕生日、おめでとう。


2020年10月30日  Ⓜ️チャン

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