1998年10月

「うわぁーい、また勝ちました。」
あかりの声が響いていた。少し遅れて部室に入ってきたあおばがあかりの声を聴いて驚いて聞き返した。
「あかりがもみっちゃんに勝ったの?」
「そうですよ。三連勝しました。」
「三連勝?」
そんなに遅れてきたわけでもないのに3回も対戦できたのか不思議に思った。
「このデックを使ったのですよ」
あおばに公開したデックは紫色のカードがたくさん入った儀式デックであった。
「えぇ~、あかりが儀式デックを使っているの?」
「これはネットで公開されていた関西では『ヨルムンシステム※1』関東では『2ターンキル』と呼ばれる重儀式デックですよ。」
1998年9月に発売された戦闘スペルと儀式スペル強化セット「魔導士の黙示録」によって儀式スペルデックが大幅強化された。手札を補充するカードが《ファーマシー(1枚制限)》《デーモン・コントラクト(1枚制限)》《デーモン・トレード(1枚制限)》の3枚から手札を7枚にする《セブン》、手札を3枚補充する《フォーチュン》、手札のカードを山札に戻し戻した枚数手札を引くことのできる《デジャブ》と9枚追加、これらのカードにより《デーモン・トレード》を1ターンに2回使うことが容易になり誰でも簡単に先手を取れば2回目のターンには本陣陥落勝ちができる状態になってしまった。


※1
 関西ではユニットカード《ヨルムンガルド(戦闘スペル・儀式・行動完了型の対象にならない)》をユニットカードを召喚する《ゲート》で召喚し、
パーティを再度行動可能にする《モラル》を使って敵軍本陣を攻め落としていたため「ヨルムンシステム」と呼ばれていた。
 公式ルールブックでは《ヨルムンガルド》は《モラル》の対象として取ることはできません。しかし、公式ルールブックが発売されるのは1999年7月10日、「魔導士の黙示録」発売当時ジャッジをおこなう人がMtGをメインに扱う人が多かったため、《ヨルムンガルド》のカードを対象として選択できなくても《モラル》はパーティを対象としているから対象としてとれるという判断だったらしい。

※2
あまりにもひどい状態であったため1999年1月にいろいろなカードにエラッタが入ってデックは機能しなくなった。

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