1998年8月

8月下旬
モンコレ部員たちは東京晴海の倉庫街にいた。
「あついぃ、なんでこんな倉庫なんか見に来ているんだよぉ」
あおばにはここに連れてこられた理由が分からなかった。
「東京観光の名所といえばここ晴海倉庫です。
今は開催場所がビックサイトになってしまいましたが、
ここはかつての聖地なのです。」
「そうですよ部長。この場所で開催されているときは来たことはありませんが、
かつての聖地巡礼は基本です。」
もみじとあかりの言っていることがわからないあおばであった。
そして、ここに来た最大の理由はこの近くにもみじ提案によるモンコレ部合宿のホテル浦島へ行くついででもあった。


ぽかぽかぽかっ 男の腹をたたく少女の姿があった。
そこはホテル浦島の大広間JGC(ジャパンゲームコンベンション)の会場である。
少女の目線の先には少女の姉とモンコレ部の仲間がいるのであった。
男は少女を察して語り掛ける
「あぁお姉さま達ですね。まほ様が言っておられたモンコレ部御一行といったところですか。
明日の全日本選手権オープン予選に参加されるんでしょう。」
男にまほがデックを差し出す。
「ほう、このデックで復讐をせよということですか、わかりました。
でも私の使いやすいように改造させてもらいますね。」
まほは小さくうなずいた。


ホテルに到着して受付の列に並ぶ、そこはホテルの受付とは別に用意されたJGC用の受付であり長蛇の列になっていた。
「でもなんでホテルで合宿? もみっちゃん家の別荘とかがいい。」
「もみじさんこの列ってJGCに参加できるのですか?」
あかりは何かに気づいたようであった。
「もちろん参加します。」
「全日本選手権決勝を見学できるんですね。」
「ふふふ それだけではありません。オープン予選に参加登録済みです。」
「オープン予選?」
「明日開催される全日本選手権最後の予選、上位入賞者は決勝に参加できます。」
「もみっちゃん 初の公式戦だぁ」


第1回全日本選手権オープン予選は96名のトーナメントである。
A~Dブロックにわかれ各ブロック24名のトーナメントになっている。
16名が1回戦をおこない8名がシードで2回戦から対戦する形式、
各ブロックの優勝・準優勝が予選通過で次の日の決勝大会へ参加できる。

「大変だぁ」
「どうしたんですか? 部長」
「トーナメント表にあかりちゃんともみっちゃんの名前がない」
「さっき確認したけどちゃんとAブロックにありましたよ。もみじさんは部長と同じDブロックですよ。」
トーナメント表を確認しに行く部長
「やっぱりない!」
「そういえば部長は本名で登録したんですね。」
「本名?」
「私は本名からもじってホーリーライトで登録しました。もみじさんは」
「私は女王で登録してあります。同じDブロックなので勝ち上がればあおばさんとは準決勝で対戦です。」
「部長も次からは本名じゃないファイターネーム考えるといいですよ。」
「ファイターネームかぁ。」


第1回戦 田中
対戦卓は26番、初めての対戦相手は田中さん、どんな人かなぁ
対戦相手の田中はすでに着席をして大量のダイスから対戦で使用するダイスを吟味していた。
「初めまして、田中さんですか?」
「あっはい、田中です。」
軽くあいさつを交わし対戦の準備をするためにデックを用意する。
大量のダイスを用意している田中が予想外のものをだしてきた。
「えっスターターの箱ですか?」
「あっはい、昨日初めてスターターとブースターを購入してデックを組みました。」
田中の用意したデックはスリーブも使用していないカードがむき出しであった。

宿泊参加者によるオープントーナメント参加者の多くが初心者、
そのためモンコレを教えながら対戦するというのは意外と疲れるものであった。

第2回戦 №
次の相手はエヌオーさん?
「あ おっちゃん。エヌオーっておっちゃんのことだったんか」
おみせでいつも変なデックで負け続けている常連のプレイヤー、
2回戦といってもシードである為おっちゃんはこの大会は初対戦になる。
「№これで ナンバーと呼んでほしいね。」
「おっちゃんはおっちゃんでいいよ。どうせ今日も変なデック持ってきたんだろうし」
2回戦もほぼ勝ちは確定の対戦相手、あと2回勝てば決勝!!
「では対戦を開始しますか」
おっちゃんの先手で試合が始まった。
「手札調整できないのでメインフェイズで地形を配置しましょう。」
敵軍本陣前に「属性:水」のユニットを普通召喚できる地形《魔法陣「水瓶」》さらに水瓶の左右に《道》を
そして自軍領土の本陣斜めのところに《道》を配置。
いきなり地形カードを5枚配置してきた。普通召喚で本陣に《リヴァイアサン》を召喚。
「手札を6枚補充して終了」
さずがあほや、モンスターコレクションはユニットが重要になるゲームなのにあんなに地形カードを入れてるなんて、
しかもスターターに必ず入っている基本地形の《道》が初手から4枚もでてくるなんて、
何枚《道》を入れているんだ。
「おっちゃん《道》いれすぎ」
「そか?何枚いれても反則じゃないはずだから」
「手札調整なしで普通召喚で《ウォーター・ドラゴン》と《髑髏の騎士》を召喚。手札を2枚補充して終了。」
《髑髏の騎士》と手札にある《虹の雫の精霊》のコンボで《リヴァイアサン》なんて雑魚同然。
「手札調整で6枚破棄して6枚補充」
は? おっちゃんやる気ないなぁ。 
自軍本陣の左右に《道》を配置し自軍本陣斜め前に深海移動で《リヴァイアサン》を進軍させた。
水瓶に《クラーケン》 敵軍本陣に《グレート・ノーチラス》《アクアマリン・タワー》を召喚。
「手札を5枚補充して終了」
「おっちゃんのデックは海の生き物ばっかりだな。」
「ばれたか、このデックは海産物でまとめ上げているんだよ。」
さて水瓶の上の《クラーケン》が厄介だけど進軍しないと手詰まりになる。
自軍本陣前に代理地形を配置し自軍本陣の《髑髏の騎士》を進軍させる。
自軍本陣へ《七つの海の王子》と《マーメイド女王親衛隊》を召喚する。
「手札を2枚補充して終了」
手札には《ミラー・イメージ》《タイダルウェイブ》があるのでなんとかなるはず。
「そろそろ勝負かな。3枚破棄して3枚補充して開始します。」
敵軍本陣横に《ストーンサークル》を配置。敵軍本陣の《アクアマリン・タワー》を《ストーンサークル》へ進軍させます。
ユニット1体を死亡させる《デススペル》を《髑髏の騎士》へ使用され破棄された。
自軍本陣前の代理地形を《道》へ張り直し《クラーケン》を進軍させてきた。
《リヴァイアサン》を自軍本陣の左の《道》へ進軍。敵軍本陣の《グレート・ノーチラス》を自軍本陣右の《道》へ進軍。
あっという間に自軍本陣が囲まれてしまった。
《デーモントレード》を使用します。
「さて手札を3枚もらいましょう。これと これと これを破棄してください。私は3枚補充します。」
何とか《ミラー・イメージ》と《タイダルウェイブ》は手札にある。
「捨て山にあるカード1枚を山札に戻す《リフォーメーション》をつかって《デーモン・トレード》を山札に戻します。」
なんだってぇ まほちゃんとの1戦が思い出される。
手札がなくなればかなりやばい。
「地形《道》の上のユニットを再度進軍可能にする《シルクロード》を使用します。」
「《アクアマリン・タワー》の蒼い魔力を使います。代償は《コール・ライトニング》」
ストーンサークルを支配しているのに蒼い魔力?
「《アクアマリン・タワー》の蒼い魔力を使います。代償は《カントリーロード》」
???
「手札を10枚にする《ファーマシー》を使って手札がなくなったので手札を10枚補充します。   ざんねん《デーモン・トレード》引けなかったかぁ」
なるほど蒼い魔力をつかっていらないカードを破棄して《ファーマシー》で補充できる枚数を増やしたのか。
「まずは《リヴァイアサン》で本陣へ進軍します。即時召喚はありません。」
《リヴァイアサン》1体だけ、自軍本陣には《ウォーター・ドラゴン》《七つの海の王子》《マーメイド女王親衛隊》
防御力の合計が《リヴァイアサン》の攻撃力以上あるからこのターンに本陣を攻め落とす気はないな?
隊列は前から《マーメイド女王親衛隊》《ウォーター・ドラゴン》《七つの海の王子》
これなら同時攻撃でも《マーメイド女王親衛隊》だけで済む。
先攻はおっちゃんから《リヴァイアサン》の攻撃、無理に対抗しないで《マーメイド女王親衛隊》が死亡。
後攻で《ウォーター・ドラゴン》に《七つの海の王子》の「特殊能力:海の怒り」で《ウォーター・ドラゴン》の攻撃力を3倍になった。
そのまま《ウォーター・ドラゴン》の攻撃で《リヴァイアサン》が死亡。
このターンは守り切った。
「《グレート・ノーチラス》で本陣へ進軍します。」
「えっ おっちゃん1度戦闘した地形は進軍できないぞ!」
おっちゃんは《シルクロード》のカードを見せてきた。
「この《シルクロード》の追加効果でこのターン内に進軍した地形へ、再度進軍しても良いんですよ」
しかし、《グレート・ノーチラス》の攻撃は《タイダルウェイブ》によって攻撃を打ち消され自分の攻撃力ダメージにより死亡してしまう。
「次は《クラーケン》で本陣へ進軍します。」
自軍本陣には《ウォーター・ドラゴン》《七つの海の王子》
《クラーケン》はイニシアチブ-3をもっているため先攻を取るのは簡単だった。
「《七つの海の王子》の「特殊能力:海の怒り」をつかい《ウォーター・ドラゴン》の攻撃力を2倍にします。」
「対抗で《クラーケン》の不意打ちを《ウォーター・ドラゴン》に使用します。」
「不意打ちに対抗して《ウォーター・ドラゴン》が《ミラー・イメージ》を自身に使用します。」
お互い対抗がないので効果が確定した。
水属性最強の戦闘スペル《ミラー・イメージ》すべての効果の対象にならなくなる。これで《クラーケン》の不意打ちを回避した。
「《ウォーター・ドラゴン》で攻撃!!」
「進軍失敗したので《クラーケン》をもとの地形に戻します。」
「ちょっとまった。《クラーケン》は《ウォーター・ドラゴン》の攻撃で死亡してる。」
「《クラーケン》の防御力は7で《ウォーター・ドラゴン》の攻撃力は5だから《クラーケン》は攻撃で死亡しないけど」
「ふふふ、忘れてないかい「特殊能力:海の怒り」をつかって攻撃力が上がっているんだよ」
「残念だけど《ミラー・イメージ》の効果で「特殊能力:海の怒り」は効果の対象になりません。」
「なんだって」
《クラーケン》は元の地形に戻り本陣へ攻めることのできるユニットはいなくなった。
「儀式スペル《ゲート》、手札のユニットカード《クラーケン》を自軍本陣右横の地形《道》へ召喚します。」
「さらに儀式スペル《ゲート》、手札のユニットカード《リヴァイアサン》を自軍本陣左横の地形《道》へ召喚します。」
「儀式スペル《シルクロード》を使用します。」
あと3回本陣へ進軍してくる。勝てない
「投了します。」

モンコレ部の初の公式大会はあおばの2回戦進出が最高記録で終わる。
もみじは1回戦でゴブリンデックと対戦し本陣陥落負け、あかりは対戦相手と話が盛り上がって時間切れで判定負け。

「私のあお・・子豚デックが負けて残念です。」
「もみじさんのオークデックが1回戦で負けたんですか?」
「ゴブリンデック強かったですよ。イニシアチブで勝っていてもダイスの数が増える装備品の効果で先攻を取られてしまうんです。」
「明日の決勝大会がたのしみ、みんなどんなデック使うんでしょうね。」


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