J3-第19節 愛媛FC vs. Y.S.C.C.横浜 2022.07.31(日)感想

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 前節SC相模原相手に2―3で勝利した愛媛FC。15節の藤枝MYFCに2―0と完敗したものの、それ以降3連勝をつづけている。左サイドバックには2試合ぶりに前野貴徳選手が出場。ほかは相模原戦と同じメンバーとなった。このところ左サイドバックは、ボール保持でつよみをだしたいときは前野選手がスタメンに選ばれる一方、空中戦につよい選手が相手チームにいるときは高木利弥選手が選ばれているようにみえる。
 Y.S.C.C.横浜は前節カターレ富山と対戦。前半に先制点をとるも、後半に2失点の逆転負けを喫している。スタメンは前節から3人変更。富山戦では[5―3―1―1]でブロックを敷くと、中央を閉ざして相手のパスをサイドへ誘導し、ウイングバック、とくに左の柳雄太郎選手のところで奪い切ってカウンターないし相手陣内でのボール保持へつなげていた。今節は河辺駿太郎選手の1トップ、吉田明生選手と土館賢人選手のドイスボランチの[3―4―2―1]だった。
 J3第19節、愛媛FC対Y.S.C.C.横浜の試合をざっくりとふりかえっていく。

 YS横浜は前節からフォーメーションをかえたが、ブロックの敷き方はかわりないようにみえた。1、2列めのあいだに顔をだす愛媛の選手を松井大輔選手がマークすることで、サイドチェンジをさせずにパスを一方のサイドへ追いやろうとしていた。大外でYS横浜のウイングバックとマッチアップするのが小原基樹選手と三原秀真選手。ふたりとも球ぎわをつくらせない動きを心得ている。走りだしてからの急停止でフリーになったり、ワンタッチでボールをはたきつつターンしたり。そうしてYS横浜両ウイングバックの前向きの守備を空転させると、空いたウイングバックの背後のスペースへ連続した動きではいりこんでパスを呼びこみもした。
 愛媛はまたYS横浜の厚みある前線[3―1―1]ブロックを、ボランチの矢田旭選手がボールをもちつつ外へ流れ、代わりにサイドバックの三原選手が内側へはいっていく連動で動かせていた。松井選手がサイドへ引っ張られるので中央が空き、それを埋めようと河辺選手が下がってくれば愛媛センターバックに時間が生まれつつチームをおしあげられる。中盤の選手たちが前にでて埋めようとすれば2ライン間が空いてくる。そういうジレンマをつくりだしてボールを前進させていた。ただ、ファイナルサードでは勢いのままクロスになることがおおく、決定機はさほどつくれなかった。左サイドは田中選手がフリーになるためのバックパスと動きなおしがうまいのと、それがわかっている前野選手の動きと角度をつけたパスで1、2列めのあいだを攻略していた。あのふたりのつながりからボールを奪うのはむずかしかろう。
 ウイングバックの前向きの守備から攻撃の流れをつかめないYS横浜だったが、それならそれでべつにかまわないと、ボール保持では自陣から悠々とパスをつなげていた。前回対戦時には、ボールをもちたいけれどなかなか自陣からでられず困っているようにみえたが、星川敬監督就任以降、ビルドアップの仕方とそれに必要な技術が整理されたのか、愛媛のプレッシングをよゆうで回避していた。6分にはゴールキックから右サイドでつないでは左へ展開し、松井選手のシュートまで淀みなくもちこんでいる。
 愛媛はYS横浜のビルドアップに規制をかけることができずに苦しんだ。自陣ペナルティーエリア付近に人数をかけるYS横浜のビルドアップに、松田力選手と小原選手だけでアプローチにいくことがおおく、後方からの連動がものたりなくなっていた。だが、YS横浜もハーフウェイラインを越えたあとに迷いがあるようで、ファイナルサードまでボールを運ぶ機会はすくなかった。その代わり、21分には愛媛フリーキックからロングカウンターを打ち、河辺選手がGK徳重健太選手との1対1の決定機をつくりだした。GK徳重選手をかわしたところで河辺選手がバランスをくずし、その隙をのがさなかった三原選手によって防がれたが。
 今季出場機会がふえている三原選手。守備のあやしさがなくなり、攻守に規格外の選手になりつつある。1対1での対応が粘りづよくなったし、対面した相手の剥がし方も秀逸。身長的に空中戦で狙われやすくて困るなというふりをして、引き抜かれることなく愛媛でより成長していってほしい。
 31分に愛媛が先制。YS横浜のコーナーキックだったが、ショートコーナーを読んだ近藤選手がパスカット。小原選手とパス交換しつつドリブルであがっていってみずから決めた。ほぼ100メートル走からのゴールで今季3点め。YS横浜としてはディフェンスラインをペナルティーエリア前で踏みとどめ、近藤選手に足をふらせないようにしたかった。ただ、それをさせなかったのが、勢いもってともにかけあがった小原選手と鈴木大誠選手。どちらもパスがくれば決めきる迫力をもって近藤選手を追い越していった。
 失点まえからYS横浜は自陣でのビルドアップがあやしくなっていた。愛媛が、YS横浜のビルドアップのときにサイドハーフの位置を高くしていたからだ。そうすることで深い位置からつなぐYS横浜の選手たちとの距離を短くしてアプローチしやすくしたほか、ドイスボランチのことも囲いこんで中央へのパスコースを限定するようになっていた。YS横浜の選手たちは身体を前にむけられず、むずかしい態勢でのワンタッチパスがふえたためミスもおおくなったようにみえた。

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 後半からYS横浜に変化がみられる。左右のウイングバックが入れ替わり、左に菊谷篤資選手、右に柳選手となった。後半立ち上がり、YS横浜は右サイドからトップへロングボールをあてる場面がつづいた。前線の選手たちが前向きにしかけるあいだに、空いた左サイドを菊谷選手がかけあがってくるパターンがよくみられた。ポジションチェンジの意図がそういうことなのかはわからないが、攻撃参加すると高い位置まででていく三原選手の背後をつく狙いがあったのかもしれない。
 前半にも21分のカウンターや、松井選手のロングパスに抜けだす動きなどでゴールに迫っていたのが河辺選手。彼に前向きでプレーする機会をあたえたくない愛媛だが、前半同様にサイドハーフを高めに位置させてYS横浜のビルドアップを窮屈にもさせたい。そうして全体が前がかりになっているため、ロングボールを入れられると最終ラインがさらされやすかった。しかし1対1になりやすい状況で守備陣が奮起し、ボールをおさめさせなかった。
 62分にYS横浜が選手交代。松井選手に代わって宮内寛斗選手、土館選手に代わって田場ディエゴ選手が出場した。この交代でフォーメーションに変更があり、河辺選手と古賀俊太郎選手の2トップになった。菊谷選手がトップ下になって、代わりに宮内選手が左ウイングバックへ。田場選手と吉田明生選手がボランチを組む[3―4―1―2]。
 このあたりからYS横浜はふたたびボールを保持してハーフウェイラインを越える機会がふえていった。中盤の配置変更で愛媛のプレッシングを困惑させると、1、2列めにはいったところでスピードアップし、ファイナルサードまで攻め切る回数をふやしていった。とくに躍動していたのが途中出場の田場選手。球ぎわをつくらせないボールの受け方、ライン間でのターンとYS横浜のボール保持をおおいに助けていた。
 70分に愛媛も選手交代。小原選手に代わって古巣対戦の進昂平選手が、佐々木匠選手に代わって茂木駿佑選手が出場する。フォーメーションは進選手と松田選手の2トップになった。小原選手が交代時に菊谷選手とタッチしていたのが気になって選手名鑑で見てみると、菊谷選手は聖和学園高校出身だとわかった。年齢的に小原選手の2学年先輩にあたる。へぇ。
 79分には矢田選手に代わって横谷繁選手が出場。矢田選手、これまでみてきていちばん魅力に感じるのは、危機察知のはやさ。攻撃で広い視野ゆえのパスをみせてくれる一方で、その視野を守備時にも発揮し、相手がつかおうとするスペースをいちはやく埋めにいってくれている。運動量が豊富なので、走行距離はチームでも上位にはいっていそう。
 つづけてYS横浜も交代。再三脅威となっていた菊谷選手に代わって大泉和也選手が出場する。大泉選手が前にはいり、中盤は古賀選手、田場選手、吉田明生選手のスリーセントラルになったようだった。
 かわらずYS横浜にボールをもたれる愛媛。しかし84分に相手のミスからスローインを獲得。横谷選手がハーフウェイライン付近からドリブルで運んで進選手へパス。進選手は身体を張ってターンし、松田選手へ(訂正・間違いました。進選手→横谷選手→松田選手の流れでした)。その間にも横谷選手はとまらず前へでていくと、オフサイドラインに注意しながら、松田選手のパスをスルー。外には茂木選手。茂木選手はファーを狙うようなクロスモーションで相手ディフェンダーをスライディングさせ、空いた背後へマイナスの折り返し。走りこむ横谷選手がゴールエリア前でワンタッチシュートを決めてスコアを2―0にした。一連のプレーに関わったすべての選手にブラボー。
 というところで85分に愛媛は最後の選手交代。前野選手に代わって高木利弥選手、松田選手に代わって大澤朋也選手が出場する。大澤選手、90+1分に右サイドでボールをもったとき、入れるのがむずかしいけれど決まればもっともおもしろい、ゴールエリアを横切りファーへとどけるグラウンダーのクロスを入れていてしびれた。彼はみえているものとか考えていることが独特に感じる。
 YS横浜の最後の交代は88分、古賀選手に代わって韓勇岐選手が、花房稔選手に代わって橋本恭輔選手が出場した。韓選手のポストプレーや田場選手の個人技で愛媛ゴールへ迫ろうとするも、ファイナルサードへはいるところでミスがつづき、攻め切れない。愛媛守備陣も冷静に身体を張る。しかし試合終了直前にYS横浜に決定機。橋本選手とのスイッチングでフリーになっていた吉田明生選手からロングパスが飛びだし、宮内選手がペナルティーエリア内へ。だが、GK徳重選手が見事な飛びだしてシュートブロック。2―0のまま試合を終了させた。

 J3リーグも前節でふた周りめにはいり、リーグの印象もとらえかけてきた。なかなか好戦的。とにもかくにもシュートを狙う意識がつよく、ペナルティーエリア外からでも躊躇なく打ってくるチームがおおい。ただ、そのぶん難易度の高いシュートになっていて、なかなか枠に飛ばないこともおおく、枠に飛んでもコースを狙うのはむずかしそう。なので、藤枝やY.S.C.C.横浜のようにゴールの確率を高くしようと取り組むチームは異質にみえる。そしてそういうチームのほうがこわい。
 これで4連勝となった愛媛FCだが、試合後の近藤選手のインタビューや石丸清隆監督のコメントで触れられているように、試合の内容はけっして良いものではなかった。近藤選手が述べていたように、選手の質でなんとかしているようにみえてしまい、開幕3戦であたったカターレ富山やいわきFC、FC岐阜といったJ2レベルの選手が何人もそろっている(かつ組織的でもある)チームに対したとき、内容はわるくても勝てる力がついているのかというと不安である。石丸監督が以前述べていたが、4節から10節までの7戦負けなしの時期だって、内容としては不安定だった。勝てば良かろうという気もしないではないけれど、改善するだけでなく、より力をつけていってほしい。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

試合結果
 愛媛FC 2-0 Y.S.C.C.横浜 @ニンジニアスタジアム

得点者
 愛 媛:近藤貴司、31分 横谷繁、84分
 YS横浜: