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テクノロジーは都市の未来を取り戻すために

『スマート・イナフ・シティ』(ベン・グリーン著、中村健太郎・酒井康史訳、人文書院発行、2022年)を読み始めた。Putting Technology in Its Place to Reclaim Our Urban Futureというのが副題。

「スマート・シティ」とか「DXと地方創生」、「自治体DX」というキャッチフレーズで語られる内容に違和感を持っている人は、その違和感が正しいことを、本書が取りあげられている色々な例で確信することができる。

テクノロジーは社会変革を促す効果的なツールになり得るが、社会の進歩に対するテクノロジー主導のアプローチは最初から、生み出すことのできる利益が限られていたり、意図しない負の結果をもたらす運命にある。

『スマート・イナフ・シティ』p.17

もし、都市を自動運転車だけが解決できる交通最適化の問題と考えるなら、都市は歩いて暮らせる密度の高い地域を育てるべきだという新たなコンセンサスは崩れ、代わりに自動運転車のために都市をデザインするというこれまでに無いパラダイムを迎えることになる。

『スマート・イナフ・シティ』p.63

民主主義は、サービスが効率的に提供されるように、人びとが自分のニーズや意見を簡単に発言できるようにすること以上のものを意味するものだ。

『スマート・イナフ・シティ』p.77

テクノロジーが熟議や能力開発をサポートできるのは、公的な優先事項や政策の策定において、利用者が実際に意義のある発言権を与えられている場合に限られる。政治参加を後押ししようとする都市の課題は、優れた新技術を導入することではなく、市民に力を与えるような公共空間を創造することにある。

『スマート・イナフ・シティ』p.90

スマート・シティが約束する進歩の多くは、データ分析と機械学習アルゴリズムに依存している。

『スマート・イナフ・シティ』p.133

スマート・シティの最大かつ最も悪質なトリックのひとつは、イノベーションの役割と意味を悪用していることにある。第1に、ダム・シティ(まぬけな都市)の象徴として既存の慣習を切り捨て、イノベーションを台頭させようとしている。第2に、イノベーションを、何かをより技術的にすることだと定義している。

『スマート・イナフ・シティ』p.202

現在のところ、スマート・シティのアーキテクチャは根源的に非民主主義的である。多くのテクノロジーが、個人のデータを収集し、民間所有の不透明なアルゴリズムを使うことで、人の人生を左右するような決定を行っている。その過程で、大きな情報と権力の非対称が生み出されているのだ。政府や企業の立場は、監視や分析の対象となった人びとよりも有利なものとなる

『スマート・イナフ・シティ』p.137


Smart cities, where technology is used to solve every problem, are hailed as futuristic urban utopias. We are promised that apps, algorithms, and artificial intelligence will relieve congestion, restore democracy, prevent crime, and improve public services. In The Smart Enough City, Ben Green warns against seeing the city only through the lens of technology; taking an exclusively technical view of urban life will lead to cities that appear smart but under the surface are rife with injustice and inequality. He proposes instead that cities strive to be “smart enough”: to embrace technology as a powerful tool when used in conjunction with other forms of social change—but not to value technology as an end in itself.

The Smart Enough City

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