オミクロンインデックス
去年の終わりにはコロナも終息しそうだったのに、今年に入って冬の流行波がきて日本ではまた自粛やら学級閉鎖やらの嵐が吹き荒れています。
政府はワクチンのブースター接種をしたいようです。世界の1日当たりの新規感染者の推移をみてみると確かに昨年の12月から急激に増えているのですが、そろそろ峠を越した様子もうかがえます (図1)。
この波はいうまでもなくオミクロンの流行によるものです。そこで、2021/12/1以後の感染者数をそれ以前の感染者数で割ることによりオミクロン波の増加度を標準化し、オミクロン影響を定量的に眺めてみることにしました。これをオミクロンインデックスと呼ぶことにします。
「Our World in Data」$${^{1)}}$$に記載のある100万人以上の人口を持つ157か国について、ワクチンの接種率、2021/12/1と2022/2/1の世界各国の累積感染者数と死亡者数のデータを抜きだし、この間に増えた数からオミクロンインデックスを計算しました。
感染率オミクロンインデックス (iOI)が1を越えるのは157か国中11か国でそのうち9カ国がヨーロッパの国々で残りの2つもイスラエルと突出して高いオミクロンインデックス(11.3)を示すオーストラリアです(図2)。
これらの国ではワクチン接種率が高く全て接種率が60%を越えています。事実、iOIとワクチン接種率との相関をみてみると正の相関があります(相関係数R=0.262, p<0.0001) 。
オミクロンが流行る前の2021/12/1以前の感染者率に関しても正の相関(R=0.527, p<0.0001)はありますが、この場合にはワクチン接種率が低くても広い範囲で感染率の上昇が認められます。
これに対し、iOIの場合にはワクチン接種率の低い多くの国々ではほとんど上昇は認められませんが60%を越えるといきなり1を越える国が現れます。
地域別に見てみると、ワクチン接種率の低いアフリカ諸国では感染率もiOIも低く、ワクチン接種との相関関係もほとんど認められません(図3)。アジア、アメリカでもワクチン接種率は高いのですがiOIはヨーロッパに比べるとそれほど高くなく有意な相関関係もありません。
iOIが低い20か国の中にはヨーロッパの国は3つしか入ってきせん。逆にiOIが高いワースト20には13か国も入っています (表1)。オミクロン流行前の感染率でもヨーロッパの国は15個も入っていますからオミクロンによる感染率の増幅はそれまでの感染率が高い国であることも伺えます。
iOIの低いベスト20と高いワースト20について比較するとワクチン接種率が2倍も高いのにも関わらず感染率のオミクロンインデックス (iOI) は31倍にもなります (表2)。
それに比べると死亡率の差 (死亡率オミクロンインデックス、mOI) はなく、致死率の差 (致死率オミクロンインデックス、fOI) は逆にワースト20の国々はベスト20の国々の1/10に下がっています。やはり、オミクロンはただのカゼになっているようにも見えます。
こうしてみると、オミクロンが感染者を劇的に増やしているのはヨーロッパのワクチン接種率の高い国で大半の国ではそれほど大きく増幅させていないことがわかります。
これだけ見るとワクチンはオミクロンの感染率を増幅しているようにみえますが、相関関係はあくまでポートレートに過ぎないこと$${^{2)}}$$も頭に入れておく必要があるでしょう。
$${^{1)}}$$https://ourworldindata.org
$${^{2)}}$$https://note.com/mbi/n/n81c495f94cf1