【感想】『観察力を磨く』とバスケと新幹線
こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!
マガジン『本を読んだら鳩も立つ』での本のご紹介です。
前回の記事はこちらです。↓↓↓
今回取り上げるのは、
『観察力を磨く』
です。
前回の記事で取り上げた『観察力の鍛え方』でも紹介されていた1冊です。
1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!
アートで観察力を磨く
作者のエイミー・ハーマンは、大学で美術史を専攻していたこともあり、
アート作品を利用しながら、観察力を磨くためのプログラムを主宰しています。
受講生の目と脳を観察対象に集中させるために、私のセミナーでは有名な絵を使う。
以前に見た絵もあるだろう。
しかし、前よりも時間をかけて観察してもらう。
できるなら、邪魔が入らない、集中できる場所で眺めてほしい。
日常から離れた環境に身を置くことができれば理想的だ。
というわけで、同書で取り上げられているフェルメールの作品を、実際にご覧いただきましょう。
さっそく、フリック・コレクションに収蔵された一枚を見てみよう。
特別な指示はないので、自由に眺めてもらって構わない。
さあ、何が見えるだろう。
見えたものをリストアップしてみよう。
紙に書いてもいい。
ヨハネス・フェルメール『婦人と召使』
(フリック・コレクション、ニューヨーク)
本の中で、「さあ、シンキング・タイムです」と提示されると、
「さっさと答えを教えてくれ」と、
一秒も考えずにページをめくってしまう鳩です。
まあ、せっかちなみなさんも、
1つ2つぐらいは、どんなものが描かれているかを観察してみてください。
『結果』だけが残る
……観察してみましたか。
さて、『観察力を磨く』の本文に戻りましょう。
どちらから光が射しているか、自信を持って答えられるだろうか。
答えられないなら、さらに見よう。
座っている女性の膝に落ちた影から、画面の左側から光が射していることがわかった人は、この絵の要となる色合いも思い出せるのではないだろうか。
まずは座った女性が着ているファー付きの上着の黄色、
立っている女性のエプロンのあざやかな青ーー布の材質は?
座っている女性の左袖に、深いしわがよっているのに気づいただろうか。
ふたりの背後に、布が垂れていることは?
インク壺とコップに、窓の景色が映りこんでいることは?
女性のエプロン……の材質……?
インク壺とコップ……窓の景色?
気づくか、こんなもん!
そう思ったあなた。
しかし、この世には、「気づかなかった」という『結果』だけが残ります。
絵には確かに描かれているのに、
そこにあなたが気づかなかったという『結果』だけが……。
何かを発見したいなら、目を開き、頭を使い、感覚を研ぎすまして、注意を払うことだ。
アイザック・ニュートンも
”私がこれまでに価値のある発見をしたのだとしたら、
それには特別な才能があったからというより、
辛抱強く注意を払って観察したからだ”
と述べている。
『注意深く観察して行動しろ』だぜ、康一くん、
といったところでしょうか。
そういうわけで、
「そうか! 注意深く行動すればいいのか!」
と、決意を新たにしたそこのあなた。
ところが、話はもう少しややこしいのです。
非注意性盲目とバスケ
さて、ここで、この『観察力を磨く』をはじめ、さまざまな本でこすられまくっている動画をご紹介します。
一九九九年、ハーバード大学の心理学者、ダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスは、
視界に入っているのに見えない状態、
つまり”非注意性盲目”を実験で確認した。
これだけではちょっと何言ってんのかわかんないので、まずは、こちらをご覧ください。
……
ゴリラじゃねーか!
非注意性盲目とはゴリラだったのか……
非注意性盲目と新幹線
『観察力を磨く』の本筋と離れてしまうのですが、
ここで、とあるエピソードを1つ。
このハーバード大学のアハ体験動画により、
「事前に方向付けられたら、人間はゴリラにも気づけないのか……」
という教訓を得た鳩はある日、こんなニュースを目にしました。
東洋経済オンライン『新幹線、血を付けたまま走り続けた異常事態』
(2022年2月5日閲覧)
人身事故を起こした新幹線が、その事実に気づかないまま、小倉駅を出発した、という内容です。
博多―小倉間で人身事故が起きたということは、列車が小倉駅に入線した際にはすでにボンネットは大きく破損していたことになる。
という文書のもと、同記事には、痛々しい新幹線の写真が載せられています。
そして、
「なぜ小倉駅で列車を止められなかったのか」
という見出しのもと、
列車の進入時はホーム上の乗客と接触する危険があるため、ホーム上の駅員は列車の状態に目を凝らす。
乗客が気づいた異常なら駅員が気づかないはずはない。
と、記事は断定しています。
この東洋経済オンラインの記事に限らず、
「こんな状態の新幹線が来たのに、列車を止めないなんておかしい!」
という論調のニュースが多かったように記憶しています。
一方、当時の鳩は、
乗客が気づいた異常なら駅員が気づかないはずはない
……本当にそうか?
と、疑問に思ったことをよく覚えています。
在来線に比べて、新幹線の人身事故というのはかなり少ないはずです。
人身事故が起きるにしても、駅のホームで発生するのが普通でしょう。
「ホームにやってくる新幹線のボンネットには、人身事故で穴が開いているなどありえない」
という先入観があったとしても、不思議ではないでしょう。というか、それが普通の気がします。
加えて、自分が駅員の立場なら、
ホーム ⇒ 線路
という人身事故が起きないよう、
新幹線より、むしろホーム上の人の動きに注意するのでは、と思いました。
そうすると、集中する先が異なります。
そんな状況で、仮に、ボンネットへ目が行ったとしても、
ホーム上の新幹線はすぐに過ぎていきます。
一日何本も、異常のない新幹線が通り過ぎていくという正常性バイアスが働いている中、
(あれ、いま、穴が開いてなかったか……?)
と、一瞬思ったとしても、それをすぐさま「異常事態だ!」と思えるでしょうか。
みなさんは、バスケに集中してゴリラを見逃しはしませんでしたか?
初めてバスケの動画を見たとき、私はゴリラを見逃した一人です。
そんな私には、ボンネットの穴に気づく自信はありません。
しかし、この世には、「気づかなかった」という『結果』だけが残ります。
穴は確かに空いているのに、
そこにあなたが気づかなかったという『結果』だけが……。
そんなことにならないよう、「観察力を磨く」必要があるわけです。
アートを観察する
というわけで、『観察力を磨く』では、こんな訓練方法が紹介されています。
ふだんの生活で使うもの(たとえば腕時計や、ハンドバック、水筒など)で訓練するのも効果的だ。
構造が適度に複雑なものを選んで、一分間、集中して観察する。
観察が終わったら、それを見えないところへしまって、特徴をぜんぶ書きだすのである。
形、色、素材、ロゴ、寸法など、とにかくできるだけ詳しく書く。
それからモデルにしたものをとりだして、さっきよりも長い時間、観察する。
さっきの三倍(さっきが一分間なら今度は三分間)観察して、最初は気づけなかったことに気づけるかどうか試してみよう。
毎日、品を替えてこの訓練をすると、一週間後には集中力と記憶力が目に見えてあがっているはずだ。
ネット上には、様々な名画の画像がアップされています。
※「パブリック・ドメイン」といって、著作権が切れたことにより、誰でも自由にアクセスできる画像なら、ダウンロードも可能です。
既に見てきたフェルメールの絵画も、先に紹介されたように何度も繰り返し見てみると、さまざまな発見ができそうです。
また、『観察力を磨く』には紹介されていませんが、
鳩が個人的に気に入っている観察力の磨き方があるのでご紹介します。
その辺をぶらぶらしているとき、ふと、「暇だなあ」と思うとき、ありますよね。
目の前の風景をじっと、10秒ほど見つめたあと、目を閉じてみます。
そして、目を閉じたまま、風景にはどんなものがあったのかを頭に思い浮かべます。
駅のホームにいるなら、
「階段とその壁」「線路手前の黄色い線」「自動販売機」……と、
浮かんできます。
そこで目を開けてみると、
「あっ、ホームに立っている人のこと、全然に頭に浮かばなかった!」
「あっ、駅にいるのに、向こうのホームの電車に気づかないなんて!」
と、意外な見落としにビックリします。
その辺を散歩しているときにもできるので、おすすめです
全体を見ることの大切さ:COBRAじゃねーか!
『観察力を磨く』では、1つの対象を観察するための方法として、
”COBRA”を提唱しています。
コブラじゃねーか!
すみません、取り乱しました。
『観察力を磨く』で紹介されていたのは、こちらです。
C(カモフラージュ):紛れているものを探す
O(ワン):ひとつの仕事に専念すること
B(ブレイク):休憩をとる
R(リアライン):期待を見直す
A(アスク):第三者の意見を聞く
みなさんも、頭が回らないときは、COBRAを頭に浮かべてください。
「なんだ、COBRAか……」
と落ち着き払って、観察できることでしょう。
まとめ
さて、ここまでの内容をまとめましょう。
〇アートで観察力を磨く
・有名な絵を、できるなら、邪魔が入らない、集中できる場所で眺めてみる訓練は、観察力を磨くのによい
〇『結果』だけが残る
・観察したとき、意外な見落としがあったとしても、結局は「気づかなかった」という『結果』だけが残る
〇非注意性盲目とバスケ
・視界に入っているのに見えない状態、つまり”非注意性盲目”が人には存在する。
〇非注意性盲目とバスケ
・「先入観」「正常性バイアス」「非注意性盲目」があっても、失敗すれば、批判される
・そんなことにならないよう、「観察力を磨く」必要がある
〇アートを観察する
・構造が適度に複雑なものを選んで、一分間、集中して観察
→見えないところへしまって、特徴をぜんぶ書きだす
→再度、さっきよりも長い時間、観察
→最初は気づけなかったことに気づけるかどうか試す
・その辺をぶらぶらしているとき、目の前の風景を観察する
→どんなものがあったか、頭に思い浮かべる
→目を開けて、答え合わせをする。その際、どんな見落としがあったかを確認する。
〇COBRA
C(カモフラージュ):紛れているものを探す
O(ワン):ひとつの仕事に専念すること
B(ブレイク):休憩をとる
R(リアライン):期待を見直す
A(アスク):第三者の意見を聞く
関連記事
今回のコンテンツに関連する、鳩がまとめた過去記事です。
〇『観察力を鍛える』
観察力関連の本のご紹介です。
〇『わかったつもり』
「文脈」という力の大きさについて、理解が深まる本を紹介した記事です。
参考資料
・挿入マンガ①②:荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)
・挿入マンガ③:寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』(集英社)
・エイミー・E・ハーマン、岡本由香子 (訳)『観察力を磨く 名画読解』 (早川書房)
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