感想屋の何が問題か

感想屋さんと名乗るサービスが、ここ数日炎上の体をなしている。

私は縁あって感想屋について、いわゆる“お気持ち”と言われる不快感を表すだけの文章がいくつか目に入る環境にあった。それぞれで感想屋のサービス内容の是非については言及しないというような内容を見かけたこともあって、私自身専門家であるわけではないが、拙いながら問題点について検討してみたいと思う。

感想屋について何が問題か分からないとか万が一自分も依頼をしたいと考えている人にとって、このnoteが参考となれば幸いだ。また、これを読んでほかに見解があれば共有してほしい。

はじめに 

感想屋(https://twitter.com/kansouya_san)とは、二〇二〇年七月一日にツイッターアカウントを開設した、金銭と引き換えに依頼者が希望する作品についての感想を書くことを請け負うサービスである。この記事では、感想屋のサービス内容を挙げた上でその問題点について検討したい。 

感想屋のサービス内容について 


まず、当該サービスが公開している note 記事、「 感想屋さんのご利用について【2020/7/3版】」( https://note.com/kansouya_san/n/n3e3b1ade8c7b)によると、サービスの内容は以下の通りである。

商業作品や同人作品に感想を書きます。これは「お金をもらったから褒めます!」というのではなくて、ご依頼いただいた作品を自分なりに楽しんだりおもしろがったりした上で、ポジティブな言葉を出力しますということです。

また想定する依頼内容として以下のものを挙げている。

①自分の作品に感想をもらいたい
②自分が好きな作品について他人の感想を聞きたい
③自分が好きな作品を布教したいので公開で感想を書いてほしい
④自分の作品を宣伝したいので公開で感想を書いてほしい
⑤自分の好きな作家さんやジャンル・CP 宛に作品の感想を送ってもらいたい
⑥感想屋さんに自分の推し作品を布教したい

上記の note 記事を参考にまとめると、依頼の手順は以下の通りである。

①依頼者はツイッターのダイレクトメッセージで感想屋に依頼内容を送る。
②DMで見積もり等のやりとりを行う。
③依頼が成立したら依頼者はnoteのサポート機能から入金する。
④感想屋は依頼内容にしたがって感想を書き、依頼者が受け取る。

なお、感想の受け取り方は「公開で感想を書くプランと、直接感想を言うプラン」の大きく二通りがあると示されている。列挙されているプランをすべて記す。


・noteに公開記事として感想を書く
・pixiv FAN BOXに公開記事として感想を書く
・ツイッターのDMで感想を言う
・匿名コメントツールで感想を言う


また直接感想を言うプランの場合、「非公開なので依頼したことはバレない」ということが強調されている。これは「自分の好きな作家さんに匿名で作品の感想を送ってもらう」というサービス内容を示している。

以上をふまえた上で考えられる問題点は次のことだ。

A.著作権が他にある作品を用いて金を儲けるという点でグレーゾーンである場合がある
B.レビューに対して報酬が発生するという構造から、内容への信頼性が損なわれる
C.同人活動に関わる場合、部外者である感想屋の介入は不快感を招く場合がある
D.影響力のある感想屋が偏ったレビューを公開することにより作品に対する誤解が広まる

Aについて
とくに商業作品について、金銭と引き換えに感想を書く依頼を受け付けると表明することは、著作権が他にある作品を用いて金を儲けることになるため、解釈によってはグレーゾーンと言えるだろう。実際に取り締まられることはめったにないとは思うが、グレーゾーンであるという点は留意すべきだ。

Bについて
作品のファンによるものとはいえサクラとしてのレビューの依頼、という側面が付加されると、たとえ「『お金をもらったから褒めます!』というのではな」いと言明されていたとしても作品のレビューとしての信頼性は損なわれることが考慮される。
依頼者の立場によってはステルスマーケティングにあたる恐れもある。

Cについて
感想を送る対象が個人であるとき、感想が匿名でありかつ感想屋によるものであると知られた場合、作品の作者は不快感を覚えるだろう。
「感想をもらったと思ったら実は感想屋が書いたものでしたってなったら萎える」というようなことが考えられる。法律上問題はないだろうが、依頼者のモラルが問われる。

Dについて
感想屋は感想を広く請け負う者として影響力を持っており、誤解が広まったとすればそれを解くのは困難である。
実際に感想屋が請け負った、スクウェア・エニックスが配信するアプリゲーム、ワールドエンドヒーローズのメインストーリーに対する感想記事『感想屋さんはむちむちメイド♂とイセザキカーセッ●●の夢を見る―「ワールドエンドヒーローズ」感想』
https://note.com/kansouya_san/n/n657eb81abf88)は、公正な感想とは程遠い。ワールドエンドヒーローズは「シチュエーションスタイルRPG」と銘打たれた女性向けゲームであり、記事のタイトルから予想されるようなアダルトゲームのような内容ではまったくない。なおAppStoreにおける対象年齢は9+である。

加えてサービス内容に直接関わりがあるわけではないが、感想屋の不信感を招く挙動についても記しておく。

・サンプルがない状態でサービスを開始した
・告知なく最低料金の値上げを行った
・依頼内容について守秘しない

もし感想屋に依頼を考えている者は、以上の点をふまえて一度このサービスの利用についてよく検討することを勧めたい。

【参考文献】
ヒーロー×育成 スクエニが放つ女性向けアプリ「ワールドエンドヒーローズ」正式サービス開始(https://otakei.otakuma.net/archives/2018111404.html)おたくま経済新聞 2018年11月14日

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