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ジャガーと新撰組
戦前、イギリスに「スワロー」という小さなメーカーがあったのを、ご存知でしょうか。ウィリアム・ウォームズリーとウィリアム・ライオンズという2人の男が立ち上げたこの会社は当初、サイドカーを作っていました。当時のイギリス車といえば、ロールス・ロイス、ベントレー、ローバーなど技術と伝統を持つメーカー揃い。2人の熱血漢はだれにも負けない情熱で、サイドカーの次はスポーツカーを作り始めます。
イギリスは階級社会じゃないですか。がんばっても手に入れられないクラスがある。スワローは貴族じゃない。ロールス・ロイスにはなれないと誰もが思いました。しかし、彼らの作るアルミ製のオリジナルボディを持つスポーツカーは、どの車よりも流麗で、最高の乗り味を提供し続けるようになります。
戦後、彼らの車はレース界で大活躍し、マークVと呼ばれるサルーンは高品質と高性能の代名詞となりました。
高級車メーカー「ジャガー」は意志と努力により階級を手に入れました。闘うことで、出発点はにせものでも、本物以上に本物になったのです。
★ジャガーEタイプ
これ、そのまま新撰組の話のようでもあります。
「新撰組」を好きな人はいろいろなことを言いますが、伝統も格式もない多摩の百姓が、尊王攘夷のマスヒステリアの中で武士以上の武士に変質していく。将軍の直轄民の誇りとか過激浪士に対抗するためとかあるでしょうが、階級に対する猛烈なコンプレックスがなければ、あそこまで苛烈な、江戸期を通じて最強の武装集団にはならなかったでしょう。結局、武士という階級を守った、最後のラストサムライは農民だった。武士が元々農地を守る為に農民から派生した階級であったことを考えると面白いですね。
意志の力が本物以上の“にせもの”を作った話でした。
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