伊藤詩織さん勝訴に寄せて、ついでにエロティック・キャピタルは枕営業なんかじゃないこと
伊藤詩織さん勝訴※のニュースに、ひとまずよかった、とホッとしたのでした。
それというのも、実父による娘レイプも立て続けに無罪判決が出るなど、日本って国は、黒を白と言いくるめるのがデフォルトの現状かよ?という状態に深く絶望しておりましたので。
少なくともこの民事裁判は、「黒は黒い」という、極々真っ当な共通認識の死線を守ってくれた、その良識ある裁判長の存在に、安堵しました。
※伊藤詩織さんが元TBS記者による昏睡状態での「合意ない性行為」を訴えた民事訴訟。東京地裁は訴えを認め被告に330万円の支払命令。
本来であれば、刑事事件として裁かれる性質のもので、とか、語るべきことも多々あるのですが、ここではおいといて。
民事ではありますが、この勝訴により、長いものに巻かれろな諦念の暗雲が立ち込めていた日本の空気は、明らかに潮目が変わりました。
国際世論の高まりとともに、被告に付いていたコバンザメ(いわゆる保守論壇)が続々と脱落しています。
控訴するそうですし、権力の後ろ盾も相まって今でこそ一応形成有利としても、いずれオセロのように盤面が一変する日が必ずや来る。
それにしても、この日に至るまで2年の長きに渡る彼女の勇気といったら!
控訴もだし、相手は犯した罪に向き合うどころか、逆に名誉毀損で1億3000万円寄越せと訴え返して来たり、傷に塩を塗り込むその手口、そんな盗人猛々しいことされたら、憤懣やる方なくて私なら死んでしまう。それを2年も、こらえてくれて、感謝しかありません。
伊藤詩織さんは、 「性被害を受けたと声を上げることは公益目的」とおっしゃいました。
セカンドレイプを恐れて、泣き寝入りを強いられた、声なき多くの女性達の苦しみの轍を、後続の女性達が踏まなくてもよいように。
また今度のことで、あまりにも多くの人々がトンチンカンな発言を繰り返していることに、正直私はイラッとしたのですが、
二人で食事したのは合意の印、とか下着によっては合意の印、とかデートレイプドラッグってググってください。
彼女の勇気により、啓蒙も進みますように。
あまりにも貧しい日本の性教育にも、ルーツがありそうです。
相手も、昭和の時代のマッチョ文化の洗礼を受けて、そうじゃない在り方を学ぶ機会がなかったのかもしれない。
(かくいう私も、モロ昭和30年代の生まれで、若かりし頃は、新聞記者とか広告代理店とか企業の広報のオジさまたちとの関わりで、かなり危ない目に遭っています。もちろんそうではない人もたくさんいましたが、そういう業界の「文化」は、確実にあったと思います。)
人権意識も薄いんだと思う。(自らにすら人権があると思っていない、ましてや女性のをや。)その辺については、稿を改めたく存じます。
なお、アイルランドのレイプ裁判で、被告の弁護人が、原告の17歳女性が当日レースのThong (日本で言うところのTバック)を履いていたことで、合意があったとして無罪判決をもぎ取って、それが世界的な大騒ぎ #ThisIsNotConsent に発展していますが、この弁護人が女性であったことから、女の敵は女?トホホな感じも切ないです。
何を着ていようといまいと、「同意」と何ら関係がない、それは当然至極なんですが、伊藤詩織さんをバッシングする勢力も悲しいが、相手の家族に嫌がらせする勢力も同罪だし、女性弁護士の安全、ひいては自分たちの安全を危惧する法曹界の声まで挙がっている。
(またしても別の話題なのですが、正義とか公正が守られてほしいけれど、正義の名の下に暴力が暴走するメカニズムも怖いと思っています。)
さて、そのバッシングに「失敗した枕営業」という言葉が出てきたので、往々にして誤解を受けがちな、エロティック・キャピタルって女の武器ってことでしょ?という点について、反論します。
女の武器、つまり行為としてのセックスを餌に、便宜を図ってもらう、というの、横行してる業界もあるのかもしれません。
バブル期の出張に、若い女子の私も同行しているのに堂々と融資先の担当者に芸者を当てがってましたけどさ。
そういうのじゃない、というのは先の記事で書いたのですが、生き生きと生きることだと。生命力がみなぎる魅力こそエロティック・キャピタルなのであって。
こうしてみると、それって基本的人権でもあって。自らのセクシュアリティーをフルに抱きしてめて生きていくって、それは生存権と同じくらい大事なものと思えます。
伊藤詩織さん製作監督作品のドキュメンタリーを拝見しました。タブーとされる社会問題に鋭く切り込む諸作品。アフリカで伝統とされ9割もの少女たちが否応なしに受けさせられ、時には死に至る女性期切除FGMをテーマとするComplete Women。日本の社会問題孤独死をテーマとする Lonely Deaths。そして夕張を舞台に「ユーパロのミチ」。
早くこのレイプ裁判が過去のものとなり、本来の作品評価で名前が挙がってほしい、と切に祈ります。(もちろん本件における彼女の勇気は長く称えられるであろうけれど。)
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