見出し画像

目で見るのではなく身体で感じる

花をいける際には、それが枝であれ花であれ葉であれ、手に取ったらまずそれをじっくりと回しながら見てください、と、お伝えしています。

どんな流れがある枝なのか。どちらが表で裏なのか。どんな顔を持つ花なのか。どんな向きにすると一番花の顔が美しく見えるのか。葉ごとにどんな色があるのか。それぞれの花材の特徴をしっかりとつかむ。その上で、どの長さで、どの向きで、どの場所にいけるとその花が一番いきるのか、ということを考えながら、一つずつ花をいけていきます。

よく「花の声を聞く」(この言葉は私の師匠直伝)と表現していますが、言い換えると、曇りのない目で花のありのままを見ましょう、という話です。

枝、メインの花、サブの花...と、いけていくうちに、だんだんと作品の全体が浮かび上がってきます。ここでは「一つひとつの花に注意を払うミクロの視点から、全体を俯瞰するマクロの視点に移行してみてください」とお伝えしています。

マクロの視点で見るのは、作品のバランス、重心、流れです。ここで大切なのが、目で見ようとするのではなく、身体で見る・感じる、という感覚になること。それまでは「見る」ことで花の声を聞いていたのが、ここからは「感じる」ことで花の声を聞く、というシフトです。

目で見ようとすると、頭にスイッチが入って、「こっちちょっとへんかも?」「あっちもどうかな?」といろんな情報を送ってきます。頭からの情報が増えると、「こっちをこう直してみようかな」「あっちも直すか」と考え始めて、よくわからなくなってしまう。ちょこちょこ直しているうちにどんどん収拾がつかなくなる。頭からの声で、花の声が聞こえなくなってしまうのです。

こういうときは、目で見ようとするのではなく、身体で作品を直接感じるよう心がけてみる。そうすると、花と枝が交差して流れが濁っている、重心がしっかりしていないので不安定な感じ、小枝や葉がたくさんあって中心の流れがよく見えない、といった情報を、頭を経由せずに身体が直接キャッチするようになる。その情報に導かれて動けば、全体のバランスや流れの調整が自然とできる、という感じです。

目で見ようとがんばりすぎると、逆に見えなくなる。力を抜いて、でも感覚は研ぎすませて身体ごと作品を感じると、おのずと見えてくる。

レッスンでみなさんがいけた作品を手直している時、頭でどうやって直すか考える前に、勝手に身体が動いている感覚になることがあります。終わってから、なるほど、私、そう直したのかー(やるじゃん)、みたいな。

ジェダイじゃないから、目を隠したら全くいけられないんですけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?