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2024/5/25 Pimax東京ロードショーまとめ

 2024年5月25日に秋葉原にてPimaxのロードショーが行われた。
 筆者はメディア関係者等ではないただの1ユーザーではあるのだがそこに招待を受ける機会を頂け、しかもこのロードショーで非常に様々な情報を得ることができたため、折角なので不慣れながらも記事としてまとめてみようということで書いてみることにする。

 本文を始める前に、noteを書くのは初めてであり至らぬ点があるかもしれないこと、今回の内容について個人の感想を大いに含むこと、また記憶・記録のミスや受け取り方による事実との相違が発生する可能性があることを予めご了承いただきたい。


はじめに

 タイトルにも書いている通り、Pimaxのロードショーが2024年5月25日午後に秋葉原駅近くのビルにて行われた。筆者のVRChatのフレンドが偶然秋葉原に来ていたため、もし可能であれば一緒に観ようということで一緒に観に行くこととなった。

 エレベーターに乗って会場に着くと受付が行われており、QRコードを読み取ってフォームに必要事項を記入、その後リーフレットやキーホルダー、水などの記念品が入ったバッグを受け取り入場した。

 なお上で書いたフレンドについては受付に確認ののち普通に参加することができた。

受付横にはPimaxのロゴが敷き詰められた撮影ブースがあった。
バッグの中には水のボトルの他、リーフレットと記念カード、そしてPimax Crystalを模した重厚感のあるキーホルダーが入っていた。

スライド発表

 受付を済ませ会場に入ると椅子が並んでおり、座って待っていると時間になりロードショーが始まった。

 ロードショーは役員の挨拶から始まり、通訳の方による翻訳を適宜挟みながら製品の歴史などがスライドを交え解説されていった。

 スライドが進むといよいよ様々な発表が始まった。以下に特に気になった内容を抜粋していく。

日本での展開の一層の強化

 まず気になったのは、2024年以降、Pimaxが日本での展開を非常に強化するという点であった。
 製品のローカライズを強化するというのはもちろん、なんと日本全国に5か所の体験型店舗を設置し、さらに100か所の製品体験ポイントも設置するという点には驚かされた。
 VR HMDを購入検討する上で製品を体験できるというのは重要な点である。着け心地はもちろんのこと、Pimaxの強みである高解像度や非常に広い視野角などは言葉だけでなく実際に着用し体験しないとなかなか伝わりにくい。そして現状、Pimaxを日本で体験するには基本的に一部の他企業が行っているレンタルサービスを利用するしかなく、これは購入を強く検討しているのであればともかく、気軽に製品を試し比較するには少々安価とは言い辛い金額であることが多かった。そのため日本全国様々な場所で気軽にこれらを体験・比較できるようになるというのは非常に有利に働くのではないかと思う。

ローカライズの強化はもちろん、プレイスポットの拡張も非常に喜ばしい。

 さらにローカライズやプレイスポットの拡張に加えて、イベントとローカルサービスの強化も行われるようである。オフライン及びオンラインのイベントを年に12回以上行うというのはもちろん楽しみであるが、東京に本土サービスチームとコールセンターを配置するというのは、状況によっては海外とやり取りをせざるを得ず手間や時間が掛かってしまうことがある現状からすると非常にありがたく、また新規ユーザーにもおすすめしやすいものとなると予想される。

ローカルサービスの強化によるより迅速かつ丁寧なサービスにはぜひとも期待したい。

Pimax Crystal Light

 日本での展開強化の次は、新製品であるPimax Crystal Light(以下Crystal Light)についての発表が行われた。
 Crystal Lightは既に販売されているPimax Crystal(以下Crystal)から基本機能はそのままに様々な付加的機能を削ることで軽量化とコストの低下を図ったVR HMDで、Pimax公式サイト(https://jp.pimax.com/ja/products/pimax-crystal-light-hmd?variant=45483791974564)より次のような点を特徴とする。機能を削った分、Crystalより約300gの軽量化に成功したようだ。

Crystalと同じ点

  • 片目辺り2880×2880の解像度

  • ディスプレイパネルはQLED + mini-LED(ただしCrystalにはない、CLPLのさらに廉価なモデルも予定)

  • リフレッシュレートは最大120Hz

  • IPDは58~72mmまで無段階調整可能

  • インサイドアウト方式(オプションのLighthouseパネルを使用することでLighthouse方式のアウトサイドインにも対応)

  • ガラスレンズ(35PPD)

  • PCVR対応

Crystalから削られた機能

  • アイトラッキング

  • スタンドアロンモード(チップセット・ストレージ・バッテリー)

  • 60G Airlinkアダプタによるワイヤレス対応

 さて発表内容であるが、その中には「Pimaxはユーザー中心の企業である」という宣言があった。

 これは1ユーザーの筆者としては大変嬉しいもので、Crystal Lightには日本のゲーマーを含む世界中のユーザーのアイデアが取り入れられているというのも、アンケートなどでCrystalについての意見を求められた際に(主に機能を詰め込んだがために)高価な点がネックであると記載してきた筆者にとっては、なるほど確かにと納得するところがあった。

 Crystal Lightは6月末に出荷予定だそうで、Local Dimming(QLED + mini-LED。ローカルディミングの機能については後述)版が税抜き¥143,999、それとスライドには記載がないがPimax公式サイトより、Local Dimming版からインサイドアウトのコントローラの代わりにLighthouseに対応するためのフェイスプレートをセットにしたバージョンが同税抜き¥143,999とのことである。

Pimax Crystal Super

 Crystal Lightの発表の次はPimax Crystal Super(以下Crystal Super)についての発表があった。

 Crystal SuperはCrystalをさらに強化したもので、QLEDバージョンではなんと片目3840×3840もの解像度に達し、片目4K解像度のMicro OLEDバージョンも登場、さらにレンズなどの光学部分がモジュール交換可能となっている。解像度が上がったことで角解像度は50PPDにもなるそうだ。
 発売日・値段に関してはQ4に出荷予定で、値段はQLEDバージョンが税抜き¥293,999、Micro OLEDバージョンが税抜き¥325,999、QLED+Micro OLEDバージョンが税抜き¥388,999となる。値段・性能ともにウルトラハイエンドと言えるだろう。

写真では中央と右がCrystal Light表記になっているがこれは誤植で、左と同じCrystal Superが正。

Crystal Airlink

 Crystal Superの次はCrystal Airlinkについて。
 Crystal AirlinkはCrystalに着けることでWiGigによりワイヤレスでのPCVRを可能にするオプションで、Crystal Lightには対応しない。こちらについてはQ3に出荷予定で値段は税抜き¥48,999とのこと。

写真にあるようにCrystal Lightには対応しない点には注意が必要だ。

Pimax 12K QLED

 今回の発表にはなかったが、発表後の質疑応答にてPimax 12K QLED(以下12K)についての新たな情報が得られた。それによると12Kは現在、その高すぎる視野角と解像度のためにGPUの性能が全く足りず開発すらまともにできない状況だそうで、開発が完全に停止しているそう。ただし、RTX5090が2024年中に発売された場合はおそらく次のCESで12Kのプロトタイプが発表できるだろうとのことであった。

 追加の情報として、Crystalや12KはLighthouseにも対応しているが、Indexコントローラの入手が難しくなっておりLighthouseのコントローラの選択肢があまりない現状について質問してみたところ、その現状を認識しており、現時点では出せるものはなく開発はしていないが将来に渡って全く開発を諦めたわけではないというような回答が得られた。今すぐにとはいかなくとも、多くの要望が届くなどすれば開発が期待できるのかもしれない。

Crystal・Crystal Lightの体験会とレビュー

 スライド発表が終わった後はお待ちかね?の製品体験会が始まった。今回はCrystalとCrystal Lightの2種類が用意されており、筆者は両製品とも色々と試すことができたためその結果を記したい。
 なおCrystalとCrystal Lightは基本機能は同じなため、主としてCrystal Lightについてのレビューにはなるが特に明言がなければ両者に共通した感想と思ってもらって構わない。
 レビューにあたって、今回の製品体験に使用したものはプロトタイプとのことであり、実際の製品とは仕様が異なる可能性があることを予め断っておく。

装着感

 Crystal Lightの装着感について言えば、まず何と言っても持ってみて軽いことに驚いた。元々Pimaxは高視野角のためにHMD本体が大きめになっているのも相まってあまり重量が軽いとは言えなかった。だが今回Crystalに比べ約300gを軽量化、それもその大部分がHMDの前側ということで、重心が後ろに寄ったのも相まって装着感は筆者の愛用するPimax 8KX(以下8KX)と比べても非常に良い安定したものとなりかなり快適であった。様々なメーカーのHMDと比べるとまだまだ絶対量としては決して軽い部類ではないのだが、重心と頭に固定するヘッドストラップの設計が良い影響を与えているのだろうと思われ、首を振っても持っていかれる感覚は少なかった。
 Crystalについては、Crystal Lightと違い多機能な分重量があるため8KXに近い感覚であり、重量はあるがヘッドストラップの後方がしっかりしているために重心が前より過ぎるということもなく、すなわち不快というほどではないがとても快適だともなかなか言い難いといった感じであった。

画質

 解像度は2880×2880ということで数値だけ見ると8KXよりもやや角解像度が高いといった性能なのだが、実際に被ってみると数値通り確かに8KXより気持ち綺麗かも?といった、高くはあるが特別驚くほどではないといった解像感であった。
 色味については、ありがちな赤みが強いといったような味付けも気になるようなものはなく、8KX同様PCモニターに近い色合いであった。もちろんPimaxのソフトウェアから自分好みに調整することも可能である。
 次に色収差については、8KXではその高い視野角を実現するためのレンズ形状により視界の中心から外れると色収差が多少気になる場面があったが、Crystal Lightではガラスレンズの影響か特に色収差が気になる場面はなかった。
 さてPimaxユーザーは特に気になると思われる視野角についてだが、Crystal Lightはカタログ値が公表されていないのだが、光学部分が同じであると思われるCrystalについては水平125度とサイトに記載がある。計測方法によって誤差はあると思うが、8KXは視野角が最大のLarge設定で165度ほど、Normalで145度ほど、Smallで125度ほど、Potateで105度ほどであり、実際にCrystal Lightを使ってみての感想としては、8KXのSmall設定に近い感覚であったため、実測でも大体125度程度の視野角がありそうである。これは特別広くはないが水中メガネを掛けているような閉塞感もあまり感じない使用感であると思う。
 視野角の次にレンズのスイートスポットについても述べたいと思う。スイートスポットはガラスレンズによるものか8KXと比べ全体的に少し広がっているような感じがした。特徴としては8KXと似た上側に寄ったスイートスポットで、中央から少しでも下側はすぐにスポットから外れぼやけ始めてしまうが、逆に上側に関しては特に素晴らしく上の視界の端までくっきり綺麗であった。左右は広くも狭くもないといった感じであろうか。下側のスポットは狭くすぐぼやけ始めると書いたが、解像度のお陰か似た傾向の8KXを筆者が使用していてそれほど不便を感じないのでそれほど問題はないのかもしれない。
 画質面での最後にCrystal・Crystal Lightの目玉の一つであるローカルディミング(Local Dimming)機能についてレビューする。それにあたってまずローカルディミングとは何かについて説明する。ローカルディミングとはディスプレイのバックライトを複数領域に分割しそれぞれの領域で明るさを調節することでコントラスト比の向上させる技術で、これがない通常液晶ディスプレイの8KXなどの通常のHMDでは、暗い洞窟などの映像シーンで画面が若干白っぽい黒色になってしまう問題があった。ローカルディミングを使用することで有機ELに近いコントラストを実現できるというわけだ。さて実際に試してみてどうだったのかというと、ローカルディミングによるコントラストは素晴らしいものであった。具体的には、筆者は体験会にて夜の空港で旅客機を飛ばしてみたのだが、まるでリアルで夜間車を運転しているときのような白と黒の感覚で、暗いところは白っぽくもならず真っ黒で、その中で白く光る部分は綺麗に白く輝いていた。有機ELにかなり近い黒表現が実現できているのではないかと思う。

コントローラ・トラッキング

 今回の体験会ではコントローラはCrystal Lightに同梱されるインサイドアウトコントローラを使用したため、インサイドアウトについてのみレビューする。
 使用感についてだが、まずVRChatにおいてはQuest系コントローラとして認識・動作するようである。そしてIndexコントローラやWindows MRコントローラなどと比較して、トリガーやグリップボタンを始め全体的にボタンの押し具合が非常に軽く、またコントローラ自体の重量もかなり軽かった。握りやすさはIndexコントローラよりも気持ち小さめといったところだろうか。
 コントローラのトラッキング範囲については、視界の範囲内では途切れることはなかったが視界の外に行くとすぐにトラッキングが途切れてしまう、そんな感じであった。トラッキングの精度に関しては、コントローラ・HMD本体ともに通常使用には問題ないが高精度というほどでもないといった印象であった。ただし、Crystal系列のHMDに適用されるかは不明だが、HMDの左右部分にカメラを追加してトラッキング範囲を拡張する研究についても研究はしているような言及があった。

 次に音周りについてだが、マイクについては自分ひとりでは確認が難しいためスピーカーについて話したいと思う。体験会で使用したものは耳を覆わない、オフイヤーのようなタイプのスピーカーであったが、体感では筆者が普段使用しているイヤホン(Smabat ST-10s)と比べ低音部分が少なく全体的に軽めの音のような感じがした。素人目線ではあるが特別音質が良いとも悪いとも言えない感じではないだろうか。
 さて耳を覆わない形状のスピーカーということで、音漏れについて気になる方もいらっしゃると思う。その音漏れについてなのだが、指向性が高いのか音漏れ自体は形状の都合上どうしてもするのだが、大きな音の出る場面であってもそこまで激しく音漏れしている印象はなかった。マイクの性能次第ではあるが、マイクがスピーカーから漏れた音を拾ってしまう所謂ループバック現象についてはもしかしたらそれほど気にならないのかもしれない。

眼鏡について

 最後になるが、一部のVRユーザーにとってはかなり気になる要素であろう、眼鏡周りについていくつか検証してきたので語りたいと思う。
 まず一般的な眼鏡を着用したままのHMDの装着感であるが、高視野角のために横幅が広い筐体ということもあり特に変な圧迫感などもなく眼鏡を掛けたまま快適に使用することができた。そのためほとんどの眼鏡ユーザーの方は普段使いをしている眼鏡を掛けたまま問題なく快適にVRをすることができると思われる。
 さらに追加の検証として、8KXを始めとする既存のPimax製品については、VR HMD専用眼鏡のVRsatileで有名な株式会社diVRseが、V2グラスPI(https://booth.pm/ja/items/1467800)というPimaxの高視野角をカバーするために専用の眼鏡を販売しているが、これについて既存のPimax用のものがそのままCrystal・Crystal Lightにも使用可能かどうか、筆者がV2グラスPIの実物を持っていって調査を行った。結果から言えばV2グラスPIをそのまま装着することはできなかった。これは専用眼鏡を固定する、コンフォートキットと呼ばれる樹脂できた接眼パーツの形状が8KXなどの既存のPimax製品から微妙に変更されている部分があったためで、具体的には眼鏡の中央上部パーツでコンフォートキットを挟んで固定するための隙間がなくなっていた。ただ大きさなどが大きく変更されたわけではないので、3Dプリントパーツ部分を少々変更することでV2グラスPIをお持ちの人はレンズを使い回すことができるかもしれない。

Crystal Lightの写真

コンフォートキットの本体への固定は依然のはめ込みのみの方式から磁石も併用した方式に変更されたようだ。そして写真の赤丸部分を見ると隙間がなく、この変更によりV2グラスPIを装着することができなくなっている。
コンフォートキットを外したCrystal Lightの写真。
Lighthouseモジュールへ付け替えるために前面部分のカバーを外した写真。本体中央の窪みにLighthouse用のモジュールをセットし、窪み上部の端子で接続されると推測される。

終わりに

 大変長々となってしまったが、以上が5月25日に行われた東京ロードショーのまとめとCrystal・Crystal Lightのレビューになる。記憶やメモなどを元に書いたが、もし間違い等にお気づきになられた場合は指摘していただければ修正したいと思う。もしこれらが誰かの助けになれば幸いである。ここまで読んでいただき感謝する。

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