楽しかったポンペイ展の思い出
こんにちは。からし山まよ江です。
趣味でフリーウェアのゲーム制作をしています。
去年の夏、勢いだけで古代ローマを舞台にしたギャルゲーを作りました。
ロクに歴史の知識もないままハチャメチャなモノを作りましたが、いろいろ資料など見るうちに本当の歴史に興味もでてきます。
そんな折、上野の東京国立博物館で2022.1.14~『ポンペイ展』が始まりました。
見てきたよ!とレポートです。
7695字。長いので興味ない項目はスルーしてどうぞ。
・東京国立博物館周辺のことを知りたい→「冬の東京国立博物館」の項
・観覧の費用や諸注意を知りたい→「入館前」の項
・ポンペイ噴火の歴史概要を知りたい→「噴火当時をふりかえる」の項
・展示内容の事だけ知りたい→「ここからは画像モリモリ!」の項
をご覧ください。
『ポンペイ展』は巡回開催。こんなスケジュールです。
(東京)2022年1月14日(金)~4月3日(日)
(京都)2022年4月21日(木)~7月3日(日)京都市京セラ美術館
(福岡)2022年10月12日(水)~12月4日(日)九州国立博物館
ほか1会場(宮城)
詳細は公式サイトを見てね。(けっこう重いサイトだけど……)
冬の東京国立博物館
今回の会場は「トーハク」こと東京国立博物館。
国立科学博物館・国立西洋美術館・上野動物園などがあるエリアです。
このエリアにプラッと行ける時間の余裕が欲しいなぁ。
このエリアはどこもかしこもリッチな敷地の使い方をしていて、東京なのに空が広いな高いな感が味わえます。
「イスラーム王朝とムスリムの世界」も面白かったけど、写真は撮れなかった。
シャムシールの実物や、刃がナミナミのクリスナイフの実物を見たよ!
入館前〜お金のこと施設利用のこと〜
当日の諸注意で覚えていることを記録。
・チケットは入場時間指定の事前予約制。
ポンペイ展内の滞在時間はおおむね90分で、と要請されています。
コロナ対策でこのような対応なのです。
滞在時間を1分単位で測られるような厳しい規制ではないです。
だいたいの入場時間が決められているので、入れ替わりのタイミングで退場チェックされているのかな?と思いました。
平日のせいもあるのか、館内行列無しで見やすかったです。グループの方も静かに見学していて、足音とシャッター音(撮影可)と、係員さんの小さな誘導の声がさわさわーという感じ。
そしてお金のこと。
・入場料大人2100円
学生料金等は公式見てください。
チケットで各種常設展と、東洋館のイスラーム王朝とムスリム展が観覧できます。
正直、一日で全部見きれないくらいボリュームです。
事前に
・ポンペイ展のあとで見るものに目星をつけておく
・ぶらぶらして疲れたら引き上げるプランにする
・他の展示は見ない
などの方針を決めておいた方が良いかも。
・レストランや無料休憩スペースあります。
現在は「休憩スペースもお静かに、飲食時以外はマスクを着けて」というルールです。
敷地の庭にはベンチやキッチンカーも出てました。この季節寒いけどね。
・荷物預かりはコインロッカーが会場(平成館)一階にあり。
お金は後で戻ってくるタイプらしい。(私は使わなかったので伝聞です)
ボリュームある展示を見て回るには、荷物があると大変。コートを手に持ってたけど、その程度でもまあまあ邪魔でした。
皆さまはロッカー活用なさってはいかがでしょう。クッション等の大きいグッズを買う人にもオススメです。
・当日は音声ガイドも借りました。
600円也。総時間35分ほどのガイドです。
スマホアプリを使うと音声DL730円?(うろ覚え)、こちらは帰宅してからも何度でもガイドを聞くことができます。
展示内のところどころに「音声ガイド○番」と書いた標識があって、
標識を見たら番号を入力→再生、その場の展示物に応じたガイド番組(一回1〜3分くらい)が始まります。
解説文以外の事をちょろっとしゃべってくれたり、時々クイズも始まったりしてわかりやすくて内容が濃いです。
「高級魚醤(ガルム)は高級ワインの10倍の値」みたいな、実生活に役立たないけどここまで来た人種には嬉しい知識が身につくよ!
私はせっかちな性分ですが、1本の解説の時間が短いのでイライラ感はなかったです。
(会場入り口で物語の導入を聞いてる時だけは「あー早く会場入りたいのよ」ってなりましたけど。これも1~2分のドラマで面白いかったです)
内容はストーリー仕立てで
『かつてポンペイで友情を深めた二人の男。互いに噴火被害を免れて、荒廃したポンペイで再会。ありし日の街の様子を語り合う』
といった感じ。
声優の小野賢章さん、小野友樹さんが出演されてます。
噴火当時をふりかえる~タキトゥス、いい仕事してた
まずはあの頃のポンペイについてサラーッと触れたいと思います。
ポンペイを滅ぼしたウェスウィオス山(ヴェスヴィオ山/ベスビオ山とも)の大噴火は79年10月24日とされています。
(以前は8月24日説が有力でしたが、今はコッチが優勢らしい)
その日付からおよそ30年後くらいに編纂された『小プリニウスの書簡集』に、当時の噴火被害を描いた手紙が収められています。
『ポンペイ展』図録の冒頭、この手紙の日本語訳が掲載されていました。
お手紙を書いた人は小プリニウス。
ローマの文人・政治家です。
書簡集が当時の貴重な資料として有名。
叔父さん(養父でもある)の大プリニウスを噴火で亡くしています。
さて、この小プリニウスに
「あのさ、噴火の時キミも叔父さんも火山の近くにいたじゃない?
その頃の事、覚えてる範囲でいろいろ教えてくれる?
叔父さんの最期についてもホラ、一度ちゃんと記録に残そうよ」
みたいに手紙を催促したのが……
コルネリウス・タキトゥス。
小プリニウスの友人で、ローマの歴史家かつ政治家。
『年代記』『ゲルマーニア』などの著作が有名です。
未曽有の災害と、偉大な学者・大プリニウスの最期の記録を求めるのは歴史家の性でしょうか。
小プリニウス「タキトゥス君が言うならしょうがないなぁ」
……と書かれた手紙には、当時の様子が克明です。
超ダイジェストで紹介します。
その頃のイタリア半島地図で見るとこんな感じ。
「現ミラノ」と書いてある場所は、当時はこのような名称ではないです。
ローマを書きそびれたけれど(適当すみません…)ナポリより北、足の形の前ズネ部分あたり。
噴火当時、大小プリニウスたちはミセヌムにいました。
1通目の手紙の内容は、
・ミセヌムの空に見たこともない松の木に似た雲が見えた。高い幹から葉を伸ばしているように広がった雲だった。それがウェスウィオス山からのぼっているとはわからなかった。
・大プリニウスが事態の究明と友人たちの救出のため、船を出しウェスウィオス山に近い海岸に近づくが上陸できず。
(※当時まだ17歳の小プリニウスは叔父に
「お前も何が起こってるか見に行く?」
と誘われるも
「勉強の課題たくさんあるから」
とミセヌムに残った)
・大プリニウス、スタビアエ(スタビアとも)に上陸。パニックの知人をなだめながらここで休養する。
・スタビアエに軽石と灰が降り注ぎ、昼が夜のように暗くなる
・小プリニウスは「最後に彼(大プリニウス)を見てから3日後」、目立った外傷無く眠っているような叔父の遺体を発見する。
といったものです。
2通目は噴火当時のミセヌムの小プリニウスの様子。
・晩の大きな地震の後、夜明けのはずなのに日の光が弱い
・建物崩落の危険が強く、人々は「なんかわからんがみんなの行く方」とばかりに大移動を始める
・地面グラグラ。止めてる荷車が反対方向に動き出す
・海が盛り上がって、海の生き物が乾いた砂の上にいる
・真っ暗闇の中の人々の泣き声、とびかうデマ……
といった内容。
偉大な叔父の勇気と業績を称える1通目より、生々しく当時の様子が書かれています。
生き延びた小プリニウスのいたミセヌム。
命を落とした大プリニウスのいたスタビアエ。
そして、街ひとつが灰に埋まったポンペイ。
火山からの距離はもちろんですが、方角が命運を分けた感があります。
小プリニウスが叔父とともにスタビアエに行っていたら、この貴重な記録が残されることもなかったでしょう。
噴火
→怒涛の火山灰と軽石降下によって建物が倒壊・閉じ込め
→噴火から12時間後の再噴火で高温の火砕流発生……
という経過によって、ポンペイでは2万人の人口の内2千人が亡くなったと言います。
『プリニウス書簡集』はいくつかの文庫で発売されているので、読みたい方はそれが一番リーズナブルです。
悲しい悲しい滅びの日を迎えたポンペイ。
ところが、この地の火山灰の質がちょうど乾燥剤のシリカゲルのような役割を果たしまして……。
永い時を経て、紀元1世紀の街並みが超!良状態で発掘されたのが、今の私たちが見ているポンペイ遺跡。
往時の人々の無念をしのびつつ、「それはそうとコレはスゴイぜ」と展示品を見てまいりましょう。
ここからは画像モリモリ!会場内だよ!
シンプルに衝撃を受けたのがコレ。完璧に水道管ではないですか……。
そしてみんな大好きキッチン用品。
(生活用品の資料が欲しかったから超楽しかった……)
これじゃお酒を手酌でトクトクとはいけませんね。
アンフォラは運搬用容器でもあるので、これで買ってくる→必要な分だけもっと小さい容器に移す感じなのかな?オタマですくったりはしない?
(こういう細かいところがわからぬ……)
お店で買って運ぶのも、小さい器に入れ替えるのも簡単な作業ではないでしょう。
これが個人宅にあるって、やはり家に奴隷がいることが前提になっている世界だなぁと感じました。
これは片手で持てるサイズ。みんな醤油でゴハン食べてた。
(米食ではないけど)
発酵不十分なガルムで寄生虫媒介もあったというけれど、味がないとゴハン進まないよねぇ。
パンの後ろにあるキビやイチジクなど、元の食べ物の形があらかたわかるのがすごい。炭化したパンは、ミュージアムグッズの『炭化したパンクッション』が人気でしたよ。Twitterでもバズってた。
そして「絵がうまい人2000年前も絵がうまい」シリーズ。
中央部分は損傷していてイセエビ君の雄姿がちょっと見づらいけど、間近で見るととても精巧なモザイクでした。食堂にあったらアガりますよ!
図録(2,900円)なら、とても展示品全点きれいな写真+解説付きなのでもっと精度の高い画像が見たい方はそちらをどうぞ。
おおざっぱに「金持ち」と書いたけど、イセエビvsタコ、ネコちゃんカモちゃん、仮面などの絵がある大邸宅は通称『ファウヌスの家』。
敷地3,000平方メートル!の豪邸で、幅6mの大作『アレクサンドロス大王のモザイク』を作らせちゃうほどのリッチマンが家主でした。
数字がなんでもデカすぎるよ。
※ポンペイの邸宅跡で家主の名前がわからないものは、お宅の目立つアイテムを取って「〇〇の家」というニックネームで呼ばれます。この家はファウヌス像があったから「ファウヌスの家」なのです。
ファウヌスは牧神で、ギリシア神話のパン(またはパーン)と同じものです。笛持った陽キャおじさん神。
ハイ、以下アレクサンドロス大王のモザイクです。
大きすぎて一枚絵は無理!
アレクサンドロス大王の活躍はこの時代からザッと250年くらい前。
富豪が自宅に大王のモザイクを作らせるという状況は、アレですね。
日本の社長が自宅・自社ビルに戦国武将の言葉といっしょに鎧兜を飾るノリ? 大王の横に相田みつを氏の書がありそう。
ちなみにこの展示のそばには超巨大スクリーンがあって、超高画質で本物「アレクサンドロス大王のモザイク」の修復のもようが流れていました。
この作品
「100年前の保全時に使った不要なニスを剥がしている。その作業は2022年末に終わり、作品はもっと当時の色彩を取り戻すだろう」とのこと!
修繕修復作業ってすごい!
ところで。
当時の上流階級の家に「本の絵」「本を所有する自分/家族の絵」がよく飾られていたそうです。
これ、知的で精神性の高い自分を演出する技法なんですって。
画像がないですが
・左手に本
・右手に持ったペンの先を口元に当てる
・カメラ目線
のアンニュイな女性の絵を見ました。
(「書字板と尖筆を持つ女性」という作品)
ずいぶん美人なんですが、解説文の「写実的ではない」という一文に笑いを禁じ得ない。
知的な自分を演出しつつ顔を盛る。
完全にSNSじゃんよ……精神性が……
そしてエジプトの都・アレキサンドリア産の美術品はみんなの憧れ。ある時期の日本人にとっての「おフランス製〇〇」という感じでしょうか。
この器は本当にきれいでした。黒曜石を削り出して作っている逸品。
背面・牛の彫刻も見えるように鏡が置いてありました。私の顔が映り込んだのでスタンプで隠しています。見苦しくてすみません。
で、こちらは当時の貴族の家の模型
当時の家は外壁に窓はありません。治安が悪いのに、外からの侵入口をわざわざ作らない。
家には中庭を作ります。そして中庭から採光するのです。
家の中はこんな感じ。写真が悪くてすみません。これはもちろん裕福な人の家の模型です。貧しい者の家には普通、台所はない。
防火消火の手段が乏しく、火事リスクが高い時代。
富裕層以外の家庭では火が使うこと自体がアウトでした。かわりに外食やテイクアウトは盛んに行われました。
非常口一面の晴れ渡るポンペイのプリントに見送られてお別れです。
楽しかった!
大好きミュージアムグッズ売り場
SNSで話題の『炭化したパンクッション』『円柱型抱き枕』など、ポンペイ展にはキレッキレのミュージアムグッズがいっぱい!
(「ポンペイ展 グッズ」とかでSNSで検索してくださいな)
あれこれ見ましたが、私が買ったのはちょっとだけです。
図録と書籍を買ったので予算が……。
でもね、可愛いの買いました!
ポムポムプリンのコラボグッズ、どれもポンペイとポムプリ両者の良さを引き出した良コラボではないでしょうか。
ファイルを開くとこんな感じです。
トーガを着たプリンも仲間も楽しそうですが、モノがポンペイ展なので
「……こんな幸せがある晩突然……」
という脳内ナレーション不可避。
可愛い+しれっとひどい笑いが魅力。
真ん中の真っ黒犬、会場を一回りしてきた観覧者視点だと
『炭化したポムポムプリン界住人』
にしか見えない仕組み。
ポムプリもユーモアも真っ黒こげだ!
(赤い首輪をしているので「猛犬注意」の黒犬コラボと言えないこともないけど、あの犬はスレンダーで立ち耳だし……)
商品名が単に「ぬいぐるみ」なのが策士だぜ!
こうして冬晴れの会場を出ました。ありがとうトーハク!
『ポンペイ展』レポートは以上!
以下は個人的宣伝コーナー!
せんでん:古代ローマ系かもしれない自作ゲーム紹介
ここから先は私が作ったフリーウェアゲームの紹介です。
ポンペイ展やトーハクとは全く関係ない内容ですよ。
古代ローマをイメージしたようでしてない『オローマ』で、主人公が美女と出会って即わーお♡
ただソレだけの超短編ノベルゲーム作りました!Yes!
タイトル:ヤ〇〇ン民族の大移動と史家タキトゥス
12才以上推奨。モロな描写は画像も文章もありません。
少年誌お色気枠とか、青年誌のゆるゆる艶笑モノのノリ!
1エピソードだけ遊ぶなら3分!くまなくプレイで20分!
主人公はローマの歴史家コルネリウス・タキトゥスがモデル!
舞台はタキトゥスの著作『ゲルマーニア』をモデルにした「ヤリマーニア」地方!
「ヤリマーニアはヤリ〇ン娘がいっぱい♡」というサイテー改変!
ゲームのタキトゥス君は史実ガン無視で草食系のむっつりすけべ青年に書かれています!草葉の陰で怒らないでね本物!
一応本物のローマに触れるシーンもあります!ほら!
公衆トイレの話くらいしかない!
尻を拭く器具(海綿のついた棒)は「いや、尻拭きじゃなくて便器掃除道具だぞ」という説もあるらしい。
正月にPV作りました。2分。リンクはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=PRgejUk_gnM
遊べるサイトはこちら!
ノベルゲームコレクション
こんなサムネの世界観です。DL版とブラウザ版在り
こちらは各章クリア時にweb上のおまけ「バッジ」をゲットできます
Plicy
Plicy版はオープニングパートがなくて一番スピーディ。バッジ無し
ゲームアツマール
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23566
アツマール版はバッジなし。ブラウザ版のみ
以上、CMでした。良かったら遊んでください。怒っちゃイヤ♡
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?