Run away together, 月影紅く|原典感想

この感想レポは独断と偏見を含みますのでご注意ください。また原典"血の婚礼"の盛大なネタバレを含みます。自分の目でまず読みたい方は回れ右してください。ちなみにイベントカード全制覇はできていないので、キャストによって解釈の解析度に差があります。(主にW寄りになると思われます)
ここまで読んでかかってこいやという方はぜひ読んでいってください。

血の婚礼  感想

原典読んでまず思ったのはですね、、、
ブラスタくんめっちゃマイルドになっとるーーーーーってことです。あんな物騒なジャケ写で、かたやハイライトを失った目、かたやナイフ片手でニヤリなブラスタくんでさえ、あのブライダルに略奪愛を持ってくるブラスタくんでさえ良心的に思えるほどの筋金入りのドロドロ劇……空いた口が塞がらねえや。

花嫁をめぐって、花婿とかつて恋仲だった男、レオナルドが衝突するっていう大筋はそのままなんですけれどもね、原典で焦点が当たってるのはあくまで女性サイドなんですよ。原典に登場する主な女性は花嫁、花婿の母親、レオナルドの妻なんですが……

そこの嬢ちゃん気づきました?ねえねえ、気づいた?

そう、レオナルドの ""妻"" が出てくるんですよ。

お主結婚しとったんかーーー!!!
おいおいおいおいおい!!!!!
略奪愛以前の問題だわ!!!あんた嫁さんほっぽって何しとんねん!!?
それもなんや、読み進めたらこの嫁さん第2子身ごもっとるやないか。嫁さんと子ども大事にせんか!

レオナルド、まさかの妻子持ち……この時点で修羅場確定演出入りました。

ちなみにブラスタくんの方では登場しなかったレオナルドの妻、今回のヒロインでもある花嫁とは従姉妹同士だって言うんだからさらに地獄。あんた元カノの従姉妹と結婚したんか……この世に救いはない。
そしてこの原典のレオナルド、かなり強引な男です。え、これ本当にケイ様や晶さんが演じるの?本当に言ってる???少なくとも当て役ではないと思う……嫁さんもらっておいて、結婚控える元カノの家に堂々と凸って、結婚式当日にかっさらった挙句、この先一生離さない(意訳)とか……なんて恐ろしい男……当て役ならソテツさんがやるでしょうよ。あ、待って、完全に私の偏見だから。イテテ、ソテツ担のお姉様方石投げないで!

まあ、レオナルドが思いのほかえげつない男だったことは一旦置いておいて、いや十分気になるんだけども。個人的にやっぱブラスタくんすごいなぁって思ったのが、脚色の加え方なんですよ。今回ブラスタくんの方では、花婿、レオナルド、花婿の父、召使い、死という5つの役をそれぞれ

レオナルド:ケイ、晶
花婿:ソテツ、黒曜
花婿の父:銀星or吉野、シン
召使い:夜光、大牙
死:ギィ、鷹見

といった配役でやっていたと思うんですけど、このうち原典でも男性なのってレオナルドと花婿だけなんですよ。原典では、レオナルドの家の人間に殺されたのは花婿の母ではなく、父と兄なんですよね。そして残された母親が一家の愛しい男共の命を奪ったフェリクス家を恨み続けていると。そして召使いは女中で、死も老婆の姿をしています。

舞台脚本である原典は3幕構成になっていて、最後の3幕目の後半はほとんど女性しか出てきませんでした。最終幕を読んで、ああ、これは女たちの恨みと憎しみの果てにある悲劇なんだなとひしひしと伝わってきたんです。ロルカの三大悲劇っていうだけあるね、本当に救いがない。
何より救いようがないのが、あなたよあなた。そう、そこのヒロイン、あなたよ。

ブラスタくんはお客様がヒロインって位置づけがあるからその辺は持ち込まずに、1人の女性に魅入られた2人の男の間で翻弄されるヒロインって描き方がされたんだろうけど……原典では相当なビッch…ヴヴン、流されやすい女性でしたね。結局結婚を目前に過去の男が忘れられんだけやろうにお主。
まあ現代でも、この人のことは心の底から愛しているけど結婚は考えられないってことも、この人と結婚したら幸せになれるだろうけど身を焦がすような情熱は感じられないってこともあるだろうしね。物語自体は突拍子もない駆け落ち劇なんだけど、ヒロインの心はどこまでも現実身のあるものなんだなあって思ったりもして。


花嫁筆頭に出てくる女性たちみんな揃いも揃って愛と憎悪に忠実だっただけなのよね……

花嫁は自分を取り巻く愛と自分のなかに潜む愛にあまりにも溺れてしまっていたんだろうな。青い春に愛を交わした男も、自分の未来を捧げる覚悟を決めた男も、そんな二人の間で揺れてしまう自分自身のこともみんなみんな愛していたのよね。

そして花婿の母親はあまりにも憎しみに溺れてしまっていてたのよね。それはもう強烈に、愛しい夫と長男を奪ったレオナルドの一族に留まらず、凶器となったナイフにまで嫌悪感を抱くほどに。

そしてレオナルドの嫁は今にも失いそうな愛とそこから生まれた憎しみの間に苦しめられていたのよね。愛しい我が子を腕に抱きながら、帰らぬ夫を嘆いて憎んで。

登場する女性たち誰もが救いようがないほど愛と憎しみに正直で、それと同時にそれらの犠牲者なんだろう。
そして残ったものは2人の男の屍であり、新たな憎しみだけだったんだ。悲しいね。


それでもブラスタくんはこの救いのない物語からキャストたちがそれぞれの役柄について向き合うなかで、各々の愛の形を導いていくんだから本当にすごい。
あ、ここからカドストの話するからネタバレダメな人は回れ右してください。(特にWの話ばんばんします)


まず注目したいのが、「死」の役柄についてです。鷹見さんのストーリーで死もまた彼女に恋焦がれていたって話してたんですけど、似たような描写があるんですよ、原典に!これ気づいた時は本当に興奮しましたね。鷹見さんさては原典履修しましたね?原典では老婆の姿をした死が逞しく若々しい花婿たちの肉体に魅入られて死に誘う描写があるんですけど、この生々しく不気味な場面を鷹見さんは彼女への贈り物として昇華させてるんですよね。2人に与えた死は彼女に対する罰ではなく、あくまで贈り物だと。2人の間で苦しみ選択を強いられる彼女に対して、等しく愛の先にある終わりを与える。

原典と迎える結末は同じなのに、死神の心情が変わることでここまで綺麗な物語になるんだなって胸を打たれました。原典の老婆の姿をした死は若者の逞しい肉体を我がものにしようと奪い去っていきましたが、鷹見さんの演じる死はどこまでも恋焦がれた彼女に寄り添っていたんですね。彼女に最上のものを贈ろうと……そこから導き出された答えが2人の死だったと。なんて残酷で優しいんだろう。


そして、花婿の父です。原典では上述のとおり、残されたのは花婿の母なんですけれど、彼女相当神経質なキャラクターで、愛する人を奪ったフェリクス家に留まらずナイフに異様な嫌悪感をもっています。それはもう実の息子、もとい今回の花婿でさえ持ち歩くのを疎むほどに。ナイフをみるたび、次にその切先が向くのは残された次男なのではないかと。見ていて目を逸らしたくなるほど憎しみに囚われていて、もちろん息子が死んだことを告げられた時も泣いて喚いて、ひたすらに絶望します。

しかしシンさんはそれを、長年心を縛った呪いだった愛が祝福に変わった瞬間として捉えているんですよね。愛しい人を奪ったフェリクス家を恨み続けた日々からも、またもや愛しい人にナイフの先が向くのではないかという恐怖からも解放されたんだと。憎い血筋が流れ、途絶え、息子の死とともに全てに幕が降りた後、たったひとり残されて。きっと寂しく単調で、それでいて穏やかな余生を過ごすんでしょう。過去の賑やかだった日々が閉じ込められた家で家族を慈しみながら枯れていく。こんなエンディングにささやかな愛を見いだせるのは彼の感性の豊かさゆえのものなのかなとも思いました。


2人の命が失われることも、残される人が確かにいることも原典から変わっていないのに、演じる人間の感性ひとつでここまで美しく愛に溢れた悲劇になるんですね……

憎しみではじまって憎しみで終わる物語。それでもそこに愛はあって。いやむしろ愛があったからこそ生まれた憎悪が作り出した悲劇。この物語をただ悲しく暗いものではなく、散りばめられた愛にスポットライトをあてて展開されたことで深みのあるストーリーになったんだなと思いました。


原典、そしてブラスタくんの"Be With You"に関するストーリーどちらもとても素敵なお話でした。

今回思いのほか長文になってしまったので全キャストについての詳細は触れませんでしたが、それぞれのストーリーをまたゆっくり読み直したいと思います。Kの方も復刻したら全員分カドスト読んでみたいな。


さてここまでお付き合い頂いた方、こんな長文を最後まで読んでいただきありがとうございました!

ブラスタ大好き♡♡♡

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