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伝統と先端

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第12回 上町 達也さん, 2020年8月3日

上町 達也について

北陸の玄関口と言われる石川県金沢市。昔から多くの工芸が育まれてきたこの地域で、あるクリエイティブユニットが注目されている。プロダクトデザイナーの上町達也(うえまち・たつや)さんと柳井友一(やない・ゆういち)さんが率いる「secca(雪花)」だ。彼らが手がけているのは、最先端のデジタル技術と工芸のアナログ技術を掛け合わせた、オリジナルのテーブルウェア。“工芸のまち”金沢から発信を続ける彼らのスタイルには、ローカルでものづくりをするためのさまざまなヒントが隠されていた。

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seccaは陶芸を中心に、特に和食器の分野で話題になっている。特徴的なのはその製造手法だ。手作業が基本だった工芸にCAD(コンピュータ支援によるデザイン設計)と3Dプリンタという、現代的なインダストリアルデザインで使われるものを持ち込んだ。

人の手だけでは作れないような複雑な形状を、CADの手を借りてアイデアを広げ、3Dプリンタで試作品をサンプル出力する。実物を確認しながら作られた最終版から型を作り、陶磁器などに展開する。こうした過程を経て出来上がったseccaの器は単に物珍しいというだけではなく、第10回国際陶磁器展美濃デザイン部門で金賞を受賞(柳井友一氏の個人受賞)するなど、そのレベルの高さは誰が見ても確かなものだ。

今までにないような造形を持つseccaの作品は、日本有数の料亭を構える金沢の料理人たちの間でも、すぐに話題になった。その道のプロの目で見ても面白く、想像力をかき立てるようなデザインを持つ器の評判はあっという間に広まり、雑誌にも取り上げられるなど、その作品の素晴らしさは加速度的に周知されていった。

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数学的な曲線を用いた複雑なデザインの石膏型を3D切削機で製作して焼き物に展開したり、3Dプリンターでつくった生地に地場の職人が漆や金箔といった工芸技術を施した製品をつくったりなど、seccaの製造手法はとてもユニークだ。最先端技術を使ったseccaのものづくりは「未来工芸」とも言われているそう。たしかにデザインは近未来的だが、古くから日本に馴染みのある手仕事の技術が使われているせいか、不思議と無機質な感じはない。

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