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ケータイ捜査官7_15周年によせて

 シリーズ監督三池崇史・主演窪田正孝の特撮ドラマ「ケータイ捜査官7」が今日で放送開始から15年を迎える。


 しかし私はこの作品をリアルタイムで観ていない。観ていないというか、リアルタイムで存在は知っていたのに物理的に観られなかったのだ。全部テレ東系列がない沖縄が悪い。テレ東は悪くない。

 放送されてなかったのにリアルタイムで知ることができたのは家電量販店で配られていたソフトバンクのカタログのおかげである。ケータイ捜査官7はソフトバンクがスポンサーで、フォンブレイバーを模したリアル携帯も出していたので放送直前や放送中にちょくちょくカタログの中で取り上げられていた。

 その頃の私は小学生だったので自分の携帯はなかったが、いつか持つ時のためにカタログをもらっては携帯の画像を切り抜いてスクラップブックを作っていた。その一環でソフトバンクのカタログも手に取り、そこでケータイ捜査官7というドラマの存在を知った。カタログに載っていたセブンとゼロワンも切り抜いてスクラップブックに貼った。


 やっと本編を観ることができたのは放送終了後から5年近く経った高校2年の夏休みである。リアルタイムで放送していないどころかレンタルDVDすらどこのTSUTAYAにもゲオにもなく、ようやくチェーン店ではないマイナーレンタルビデオショップ(VHSが平気で並んでるような店)の一角で見つけた。あの時の感動は忘れられない。

 いざ観てみるとこれがまためちゃくちゃに面白い。ストーリーはコメディからカオスから泣ける話からSFまで幅広い。特撮をまったく通ってこなかった人生だったけどCGがすごいのもわかる。そしてまたキャラクターが全員魅力的。人間も人外も味方も悪役もチョイ役も強烈にキャラが立っている。

 そんな中で私の最推しになったのがゼロワン。テーマカラー、フォンブレイバーシリーズで最初にロールアウトしたところ、悪いヤツなところ、過去にトラウマを抱えているところ、最初敵だったけど途中から味方になってくれるところ、味方になってもツンデレなところ、最後はしっかりけじめをつけていくところ、全てがストライクゾーンど真ん中。あのちっちゃい携帯電話の中にこれほど好きな要素が詰まっている。恐ろしい。ついでに言うとゼロワンのせいで私の歴代携帯電話の色は今に至るまですべて黒である。スクラップブックには色とりどりの携帯を貼っていたというのに、もう黒い携帯電話しか持てない。あと変形しないってわかってるのにどうしても「501」(ゼロワンの変形コード)を打つのをやめられない。

 ゼロワンが大好きなので好きなエピソードもゼロワン回になりがち。悪役だったゼロワンのささやかな心境の変化と盲目の少女との絡みが美しい「こころのひかり」(第22話)、自分のバディを殺した相手であるゼロワンと葛藤を乗り越えて臨時バディになる千草さんが泣ける「ゼロワン、走る」(第31話)、そしてゼロワンにとっての最終回「ゼロワンの解」(第44話)。これは初見時自分の部屋にDVDプレーヤーを持ち込んで観たけど、泣きすぎて机の上がティッシュで埋まってしまった。未だにどのドラマでもあれ以上泣いたことはない。極論を言えば「モノ」に過ぎないAIを搭載した携帯電話にこれほど感情移入してその行く末に涙することができるとは思っていなかった。プログラミングとかディープラーニングとかじゃなくて、フォンブレイバーは人間と同じように感情を持ち、自分の意思で動き、誰かのことを思いやることができる。彼らはもう「モノ」ではなく、ひとつの「命」なんだなあと思った。


 そんな高2の夏からさらに時が経ち、あの時DVDを借りたレンタルビデオ店も潰れてダイソーになったが、放送終了から10年近く経ってブルーレイボックスが出たり(手元に置いておきたすぎてセル版1枚ずつ買おうかとも思ったけどいつか絶対ボックスが出ると信じて我慢しててよかった)、イベントが開催されたり、公式主導で15周年記念の同時視聴会が開催されたり、今でも忘れ去られることなく動いてくれているのが嬉しい。どんどんAIが発達していく中、AIのひとつの形を提示した作品としていつまでも語り継がれていってほしいしそうあるべき作品だと思う。

 AIが進化して、いつかセブンたちのような「命」を持つものが現れるかもしれない。そうなった時の人間とAIの関係はケイタとセブンみたいな「バディ」だったらいい。それを見て「これケータイ捜査官7じゃん」って思いたい。

 

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