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12-1 出産24時間前のこと

1 お寺に参拝

8日の朝、落ち葉掻きの一仕事を終え、
前駆陣痛も和らいできました。

臨月に入って享ちゃんが繰り返したのは
「他にやりたいことないかー?行きたいとこないかー?」

出産すると今まで自由にできたことが
一気にできなくなることを見越して、
かのこが生まれる前にしたいことは全部しておくんやで〜
ということでした。

前駆陣痛も2晩、
朝は本格的なおしるし。
いよいよ今日かもしれない。
最後の最後に行きたいところはどこだろう。

ちょっと考えて、
お気に入りのお寺に行きました。
目指したのは志明院。
車でしか行けない場所にある、ちょっとした秘境のお寺です。
自宅からは車で30分のほど良い距離。
お寺には石段がたくさんあるので、
その上り下りの振動が陣痛促進にはちょうどいいかなという考えです。
ちなみに鞍馬寺も考えたけれど、こちらは階段だから段差が単調。
一段一段の高低差が多くて
振動がお腹に伝わる志明院の方がよいと思いました。
それにお寺の奥様ともおしゃべりをしたかったので。

でも後から考えると、まんっまるのお腹が死角になった足元が見えない中、
よくあのお寺に行ったなぁーと思います。

午後からの宮川さんの健診までに戻ってこれるために、
1時間ほどお寺でゆっくりする予定で、9時頃には出発。

お寺の奥さんとお話をし、出産間近で心配されつつも入山。
不安定な山道の階段をしっかり踏みしめて歩きました。
志明院は写真撮影を禁止されているので、スマホも禁止です。
電波からも離れ、豊かな水をたっぷり感じ、
50分ほどで下山しました。

2 突然の来客

実は、お寺に行く途中、私のスマホに母から連絡がありました。
横浜から京都に来ている叔母と一緒に、午前中に我が家に来るとのこと。
「え、今日、これから来るの?!」
とびっくり。
お昼から宮川さんの健診で時間はとれないから日を改めて欲しい、
と言ったけれど、それでもいいから家を見たいという。

というのも、秋に私のいとこが我が家に遊びにきて、
えらく楽しかったという話を聞いたそうで、
ずっと来てみたいと思ってくださっていたとのこと。
それはすごく嬉しいのだけど、
せっかく横浜から来てくださるのだから、
ちゃんとおもてなしをしたいところ。
けれども前駆陣痛の余韻が冷めやらず、
体と心はお産に一直線だから、
なんだか段取りの計算ができない。
お茶も準備もままらない。
お産の前でなければ、前駆陣痛がなければ、
もっと楽しんでもらえるようなご案内ができたのにと
悔やまれますが、
なんとかお部屋を案内して、
おばさんには享ちゃんのインテリアを楽しんでもらい、
なんとか終了。
こうして宮川さんの健診の時間になりました。

3 宮川さん、最後の健診

ゆったりした早朝の時間から一転、
気も休まらないままに宮川さんが到着しました。

いつも通り、元気な宮川さん。
まずはいつもの場所で座って一息。

と、いうところで、私は涙、涙。
何が辛い、というわけでもないですが、
予定日からすでに2日経っていること、
いつ本格的な陣痛が始まるんだろうと
焦りそうになるけれど、
焦りは禁物と思おうとしていること、
前駆陣痛という初めてで得体の知れない壮大な痛み、
いままで普通にできたことが、ちょっとずつできなくなっていること、
産むのは私、私がしっかりしなきゃ、
不安がっても仕方がない、私は元気でにこにこしていなきゃ、
絶対大丈夫、絶対大丈夫。

なんだか色々自分を奮い立たせていた緊張が急に和らぎ、
溢れてくる涙を止めることができませんでした。

10分か15分くらいかと思いますが、
宮川さんは私の気持ちが落ち着くまでずっと隣にいてくれました。

4 泣くこと、気持ちを吐露することの必要性

出産直前、体の中ではぐるんぐるんと変化が起きています。
体は変わるし、ホルモンは分泌もいよいよ増します。
これから起きる壮大なことに向けて、女性の体そのものが変わります。

テレビなどで特集される、犬や馬、ウミガメなど動物の出産シーン。
目をうるうるしながら、陣痛に耐えるお母さん。
やっとの思いで赤ちゃんと産み落とすシーン。
見ているこっちが泣けてきます。

動物の出産でも、喉がつまりそうに感動するのに、
それをこれから自分でやろうとするわけだから、
なんだか泣けてくるのは当たり前。
心からワクワクするけれど、不安になったり、泣けてきたり。
「なにかあった」というわけではありません。
特に何もないけれど、わからないけれど、泣けてくる。
涙を流すのは、これから起きる壮大なことへの準備。
我慢せずに泣いた方が、
ホルモンの調子も体の調子もよくなる気がします。

こうした気持ちの変化を受け止めてくれるのも
助産師さんのお仕事です。
一人で我慢なんて、絶対させてもらえない。
ちゃんと吐き出して、すっきりするまで横にいてくれます。

「大丈夫?」とか「つらかったら言ってね」とか言わず、
ただ横にいてなでなでしてもらう。
ほんとうにそれだけで十分でした。
いつのまにか楽になって、「あーすっきり」という気分。

こうして私の気持ちが落ち着いたところで一通りの検査をして、
健診は終了しました。

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