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あとがき01:C101新刊「仙石線・仙石東北ライン」

※本記事は2022年末にリリースする新刊「仙石線・仙石東北ライン」のあとがきの一部です

読み手の感想が、たぶん多岐に渡る

「あとがきだけで本が一冊できそう」

今回の冬コミの新刊「仙石線・仙石東北ライン 海風回廊64.0」のあとがきを連載でおとどけします。今回は、今作にはあとがきが入っていないこと、そしてその理由の説明です。


歴史編だけでも、お腹いっぱい

まずは今作の舞台、仙石線と仙石東北ラインについてご紹介しますと、どちらも宮城県仙台市から塩竈、松島などを経由して石巻へ向かう路線です。松島町の高城町駅から西半分のルートが異なり、また、仙石東北ラインは1日1往復が石巻線の女川駅まで足を延ばしています。今作では仙石線のあおば通駅-石巻間、仙石東北ラインの仙台-石巻-女川駅を題材にしています。

仙石線・仙石東北ライン路線図

また、仙石線は開業時には宮城電気鉄道という民間企業が建設した路線(要するに私鉄)だったのですが、それが戦時中に国に買収されて国有鉄道になった、という経歴を持つ路線です。

まあ、戦前・戦時中に国に買収された路線という存在自体は割と存在するのですが(今の南武線、鶴見線、阪和線、加古川線、小野田線などなど)、仙石線は会社を設立してレールを引こうとした矢先に親会社が潰れるという憂き目にあっておりまして、さらに開業直後には昭和恐慌やら東北凶作やら大変な逆風が吹き、そうするうちに日中戦争・太平洋戦争が始まって沿線に軍需工場が立ち並ぶようになったとたん今度は輸送力が足らなくなり、でも線路を単線から複線にすることもままならず、といった具合に、世の中の動きにえらく振り回された点も特徴です。

よって、開業から戦前までは企業史を見ていく面白さがあります。


一方で国有化後も、仙石線では「管理所方式」という制度が導入されたのも特徴です。駅や車両工場や保守部門など仙石線の運営にかかわる部門だけを切り出して一つの組織にまとめ、一定の権限を持たせた上で仙石線の収支を改善させるミッションを与える、というもので、今風に言えば事業部制とか社内カンパニー制のようなものでした。

この制度が大当たりしまして、国鉄総裁から表彰されたりとか、全国から視察が申し込まれたりとか、さらには「ローカル線経営の実際- 仙石線はこうして立ち直った-」なんてタイトルで本が制作されたりとか注目を集めました。しかし、全国展開してみたところうまくいかず、本家の仙石線も結局1971年に管理所方式をやめてしまいます。

このあたりの話からは最近話題の「ローカル線の経営の在り方」、つまり民営か国営か、もしくは自治体の関与はどうあるべきか、みたいな話も感想として出てくるかなと思います。


なお、今作では前史を紹介するページもあるのですが、そのページは多賀城が開かれたところ(つまり奈良時代)から始まっています。駆け足ではありますが、古代、中世、近世と歴史の流れを辿っていくことで仙石線沿線の各都市のキャラクターみたいなものをお話ししたい、という意図で書いたページがありますので、そういった歴史を辿るのが好きな方の目線の感想も出てくるんじゃないかなと思います。いや、かくいう私が歴史好きなんですけれどもね。


「今」を語るだけでも、すごい分量

そして、仙石線を語る上で忘れてはならないのは、いや、忘れられないものといえば、やはり東日本大震災です。沿線では大きな被害が生じ、仙石線自体も緊急停止した列車が津波で流されるなどの被害を受けました。

震災から10年以上が経ち、沿線では集団移転に伴う宅地整備などが進みました。しかし、集団移転をした後に残った土地をどうするか、といった問題であったり、震災をどのように語り継いでいくべきか、といった、問題であったり、復興に関連した色々な問題が残っています。この点もやはり今作を読んだ後の感想として出てくるのではないかと思います。


もしくは全く違った観点として、ローカルネタに興味を惹かれる方もいらっしゃるかもしれません。「普段通り過ぎているけど、こんな駅だったんだ。知らなかった」みたいな感想も出てくるかなと思います。
今作では仙石線32駅と仙石東北ラインの停車駅、そして石巻線の石巻-女川間の各駅を紹介するパートを設けています。ご当地系のYouTuberさんやVTuberさんなどなど、ネタを探している方にもおススメです(もしネタ元として使って頂ける場合には、ちょっとだけでも本書を紹介いただければうれしいです)
あるいは少し気が早いですが、お子さまの来年の夏休みの自由研究のテーマ探しにも役立つかもしれません(ちょっと難しい漢字やらが多いので小学生には厳しい気もしますが・・・)

例:あおば通駅


結論:あとがきに書きたいことが多すぎる

というわけで、思いつくだけでも多岐に渡る感想が出てきそうな今作です。それは書き手であるわたしも同じです。「あとがき」として書きたい内容が多すぎて、書くとたぶん10ページくらいになります。
ただ、それを掲載してしまうと印刷費が一気に跳ね上がるので(162ページを境に印刷費がすごく変わります)、じゃあもうNoteで公開しよう、という次第です。もはや場外乱闘です。
まあ、Noteに書けば宣伝も兼ねられますからね

そんな調子でしばらく「あとがき」を連載でお届けしていきたいと思いますのでよろしくお願いします

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1722377


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