クリエイティブリーダーシップ特論4月19日

補足:
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業をまとめているnoteです。
クリエイティブリーダシップ特論の授業においてデザイン研究者、パーソンズ美術大学非常勤講師、東北大学工学部客員准教授の岩渕 正樹氏からご講演いただき、記事にしています。
 
 
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論第2回岩渕 正樹氏(以下岩渕さん)—4月19日
 
 
岩渕さんはニューヨークを拠点に、社会規模の文化・ビジョンのデザインに向けた学際的な研究をしながら、パーソンズ美術大学非常勤講師をされるなど、研究、教育、社会活動など幅広くご活躍されています。
 
 

スペキュラティブデザインの萌芽を感じ取る

岩渕さんのお話を聞いて、印象的だった部分はスペキュラティブデザインについてでした。
スペキュラティブデザインといえば問題解決のためのデザインではなく問題提起のためのデザインであるということが大きな特徴です。
つまり、すでに何か問題があるわけではなく、そこの問題に気が付けるか、問題を見つけ出せるかというのが勝負になるわけです。(もちろん何かをより改善するのが前提です。)
しかし、それは口で言うほど簡単ではありません。
たとえばハーバード・ビジネス・レビューの日本版でもすでに2018年には特集が組まれるなど市場自体は温まりを見せていたものの、その実装となると成功事例は多くはないほど実装が難しいものであり、いわゆる「わかっているけどできない」の典型例でもあります。
その実装のハードルをどのように岩渕さんは乗り越えているのか。それが個人的な本日の授業のポイントでした。
そんななかで岩渕さんのお話から感じたことは「超プロダクトアウト思考」であるということです。
それはそういったキーワードが出たわけでもなく、岩渕さんがわがままにものづくりをしているわけでもありません。
ただ、思考の順番として、先にご自身が作ってみたいモノやコトがあり、それを社会に落とした瞬間に解釈され、形作られていくイメージに近いということです。
そのため、大局での目標は見据えるものの短期の目標はあるようで固執はしておらず、まずは作ってみる→社会に落とす→社会の反応を掴む→修正する→また社会に落とすというサイクルを回すことが岩渕さんの実装プロセスでした。
なかでも「社会の反応を掴む」のプロセスが特徴的で、そのプロセスのなかで岩渕さんは社会に問いかけるのと同時に、自分自身の仮説にすら問いかけることで問題提起型のデザインを実現していました。
そのスペキュラティブデザインになりうる萌芽を岩渕さんは感じ取ることを大事にしているように感じます。 
 


自らを超えるデザイン

通常「デザイン」という行為は自分のもつ引き出しが前提となります。
私自身もそうですが、椅子を作るにしても、建築を作るにしても、器を作るにしても、使っているシーンや使っている人を想像します。
しかし、その思考プロセスでは気がついたときには自分にとって都合の良いものが出来上がってしまいます。
自分がこれしか知らないから、自分が得意だから、自分が欲しいからなど、決して悪いことではないですが、問題解決型のデザインの域を出ません。(問題解決型も重要です。)
その意味では問題提起型のデザインというのは自分ですら想像できない反応や自分でも自分のものとは思えないものがあってはじめて成立するものなのかもしれません。
そのことを岩渕さんのお話から感じずにはいられませんでした。
大学院という場で学んでいると、わかっていても時折、自己中心的なロジックから脱することができなくなってしまう私にとって、「クリエイティブ」というものの本質にデザインの分野から岩渕さんに問われた気がします。

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