クリエイティブリーダーシップ特論5月10日

補足:
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業をまとめているnoteです。
クリエイティブリーダシップ特論の授業においてインタラクションデザインの領域で活躍しているソフトデバイス代表の八田 晃氏からご講演いただき、記事にしています。


武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論第5回八田晃氏(以下八田さん)、—5月10日


八田さんはヒューマンインタフェースを人のふるまいのデザインと位置付ける事でソフトウェアとハードウェア、サービスとプロダクトの区別なく一体的に提案することを実現しています。また、プロダクトデザイン分野の黎明期から培った経験と独自の手法によって、ビジョン策定時や要件定義前の段階での先行デザインからプロトタイピングなどの実装まで幅広くカバーしています。


「行為」からはじめるデザイン

八田さんのデザインアプローチには特徴があります。それはサービスデザイン、プロダクトデザインの両方ともユーザーの「行為」に着目しているという点です。つまり、そのサービスがどうなのか。このプロダクトをどうやって使うのかではなく、このサービスやプロダクトを通してユーザーがどのような体験をするかということを起点にしています。
その意味では、八田さんはプロダクトデザイナーでもサービスデザイナーでもなく行為のデザイナーと言えます。
さらに、ビジョンを意識することで、課題解決型の行為のデザインで終わるのではなく、課題発見型のアプローチを実現しています。
プロダクトデザインなど形があるものはどうしても視覚的なインパクトが大きいため、課題解決型に陥りがちです(悪いわけではありません。)。
しかし、八田さんはそれだけではなく、ビジョンデザインとして意識的に直近の課題から離れる視点を持つことで、ニュートラルな立場からデザインを行なっています。



デザインプロセスの上流に関われないデザイナーだからこそできること

今回、八田さんのご講演のなかで最も驚いたのはプロのデザインの現場では各プロセスにプロがいるため一貫して作業ができず、プロトタイピングなどのデザイナーに話がくる段階でコンセプトがわかりづらいことがあるという点でした。
授業などでは最初のコンセプトからリサーチ、プロトタイピング、アウトプットまで全て一貫してできるためそのような課題を考えたことがありませんでした。
しかし、考えてみればそれは当然で、クライアントがコンセプトを決めて、リサーチにはリサーチのプロがいて、作りはデザイナーがいて、マーケターが市場を観察するというのが普通のプロセスです。
そんな多くの関係者が関わるなかでデザイナーが全体の考えを汲み取り形にするというのはかなり困難に思えます。
しかし、八田さんはプロダクトを作ることだけがデザイナーの視点ではないという考えのもと、そのプロセスやおそらく製作中に交わされるであろう会話までデザインされている印象がありました。
クリエイターでありながらまさにマネージャーでもある八田さんの制作スタイルは現代のデザイナーのあるべき姿のように感じました。
デザイナーと聞くとどうしても「作る人」という印象がありましたが、これからはモノもプロセスも体験も人間関係も、あらゆるものを「創る人」だけがデザイナーとして生き残っていくのだと強く感じました。

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