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2024年度セルフトレーニング問題を解いていく!(1)〜急性胆管炎のドレナージ〜

急性期病院で9年間総合内科医として働き詰めるも、ヘルスケアスタートアップに転職したため、総合内科専門医試験の受験資格がなくなってしまった10年目の総合内科医です。
出願取り消しの連絡が来るまで今年受験するつもりでいたので、セルフトレーニング問題(日本内科学会発行)を試験対策のため購入していました。
もったいないので、自分のアセスメントを加えながら解いていきます。誰かの役に立てば。


問題:61歳男性、右季肋部痛

問題文は一部改変、解釈加えて記載します。

急性胆嚢炎、逆流性食道炎、脂質異常症の既往のある61歳男性が、昨日からの右季肋部痛を主訴に来院。
喫煙歴・飲酒歴はない。
BMI 28(Ⅰ度肥満)、37.9度の発熱あり。血圧、脈拍、SpO2は正常。呼吸数は20回/分でやや速め。眼球結膜に黄染あり。腹部平坦、軟で、上腹部に圧痛あり。
血液検査では、WBC 14,000(好中球96%)、貧血なし、PLT正常、PT延長なし。直接優位のビリルビン上昇あり、肝逸脱酵素は200台(ややAST優位)、LDH、ALPも軽度上昇、AMYは正常、腎機能も正常、随時血糖・HbA1cも正常範囲、CRP 7台。
腹部造影CTでは、胆嚢結石あるが、胆嚢腫大や胆嚢壁肥厚、周囲脂肪織の濃度上昇はない。総胆管下部に高吸収の結石嵌頓と、総胆管の拡張を認める。膵腫大や主膵管の拡張、膵周囲の脂肪織濃度上昇は認めない。
この患者の対応として適切なものはどれか?
(a) 胆嚢摘出術
(b) 経皮経肝胆管ドレナージ
(c) 内視鏡的胆嚢ドレナージ
(d) 内視鏡的胆道ドレナージ
(e) 超音波内視鏡下胆道ドレナージ

2024年度セルフトレーニング問題 日本内科学会

アセスメント

診断

急性胆管炎(結石性胆管炎)

Tokyo Guideline 2018の診断基準

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 p49 表1

この症例では、
A. 発熱、炎症反応所見
B. 黄疸、肝機能検査異常
C. 胆管拡張、胆管結石
A+B+Cを満たすため、確診となる。

重症度分類

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 p51 表3

この症例では、
重症胆管炎の項目に該当するものはない。(※意識レベルについては問題文に記載なし)
中等症胆管炎の項目のうち、

  • WBC>12,000/μL

  • 総ビリルビン>5mg/dL

の2つに該当するため、中等症と判断できる。

解答

(d) 内視鏡的胆道ドレナージ

治療フローチャート

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 p54 図2

中等症(GradeⅡ)の急性胆管炎の場合、血液培養採取の上、抗菌薬投与を開始し、早期の胆管ドレナージを行う。来院から24時間以内にドレナージを行った方が、死亡率が低いとされる。また、胆管炎からの改善が早く、入院期間を短縮でき、医療コスト削減につながるとされる。

胆道ドレナージ法の選択

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 p148

胆管ドレナージの手段としては、素直に(d) 内視鏡的胆道ドレナージを試みるでよいだろう。胆道閉塞の原因が腫瘍だったり、硬化性胆管炎などによる胆管狭窄だったりして、内視鏡的経乳頭的アプローチが困難なケース、かつ、肝内胆管が十分拡張している場合には、(b) 経皮経肝胆管ドレナージが選択される場合がある。

内視鏡的経乳頭的ドレナージ(EBD: endoscopic biliary drainage)は、ERCP後膵炎のリスクはあるが、他のドレナージ法に比べて低侵襲であり、偶発症の発生頻度も低く、第一選択と考えられる。しかし、悪性腫瘍による十二指腸狭窄例などが原因で十二指腸主乳頭まで内視鏡の到達が困難な場合は、EBDの代替治療として経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD: percutaneous transhepatic cholangial drainageまたはPTBD: percutaneous transhepatic biliary drainage)が有用である。

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 p148

EBD困難例には、超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージ(EUS-BD: endoscopic ultrasound-guided biliary drainage)も検討されるが、熟練したな胆膵超音波内視鏡医のいる施設に限られる。

感想

あまり悩む点はなさそう。
このケースでは、胆嚢結石が残っていますし、症候性の胆石症なので、再発予防を目的とした待機的な胆嚢摘出術が推奨されると思います。

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