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映画備忘録「かぐや姫の物語」

このまえ廣木隆一監督の「月の満ち欠け」を見に行って、ふとこの映画を思い出した。月つながりだったのか他に気になることがあったのか残念ながら憶えていないが、約9年ぶりに見返すことにした。
…話が長くなる前に概要をまとめておいた方がよさそうだ。

※この先、映画のネタバレが含まれます。
観ていない方はお気をつけください。

映画概要

監督
高畑勲 
主な作品
「平成たぬき合戦ぽんぽこ」「火垂るの墓」
「アルプスの少女ハイジ」など

脚本
高畑勲
坂口理子

原作
「竹取物語」

キャスト
朝倉あき (かぐや姫)
高良健吾 (捨丸)
地井武男・三宅裕司(特別出演) (竹取の翁)
宮本信子 (竹取の嫗)

あらすじ

スタジオジブリの高畑勲が約14年ぶりに手がけた監督作。日本で最も古い物語とされる「竹取物語」を題材にしたアニメーション。かぐや姫はなぜ地球に生まれ月へ帰っていったのか、知られざるかぐや姫の謎と運命を描く。
Filmarksより

感想文

姫の犯した罪と罰

「この姫様はなにか悪いことをしたのか?」公開時、中学1年生だった私にはこの言葉の意味がわからなかった。意味がわからないまま、一緒に行った友達と泣きながらラストシーンを見ていたのは憶えている。

物語の解釈

解釈というとすこし大げさな気がするが一番書きたいのはここなので進めてみる。結論から言うとこんなことを考えた。

竹取物語=子供に先立たれる親の物語
姫の罪=親を残して死んでいくこと・月から地上に行ったこと
罰=月へ帰る(輪廻に還る)?生まれ変わったのに、大切な人を残して死ぬこと?または生まれること

竹取物語=子供に先立たれる親の物語

昔、学校で昔話の隠された意味を考えてみよう的な授業があって日本神話について勉強していたことがあった。それで思ったことが一つ。昔話ってうまいこと現実のことをフィクションにして話しているということ。死やケガレといったものの言い方もそうだが直接的な表現を使いたがらないと思う。

身を隠す・お隠れになる=死んだ・亡くなられた

死の表現一つ見てもこんな言い方をしている。
書いてみたらそれだけで色々想像できそうだったが長いのでそれは別の記事で。

話を戻して…そういう直接的な表現を避ける
というルールが物語にはあるとするならば

月へかえる⇒輪廻の輪に戻る・つまり死ぬ

シンプルに考えればこういうことだと思う。
年老いてようやく授かった子供。幸せであれと大切に大切に育ててきた。しかしそれは子供を死に追いやってしまった。自殺か病死かそれは答えが正直出せていない。

竹取翁と嫗(おうな)にかぐや姫が「月へ帰りたくない」と言うシーンがあった。これをさっきの解釈に当てはめると「死にたくない」ということになる。シーン的にみると死期を悟った子が親へ言うセリフのようだが、遺書を読んでいる親のシーンにも見える。後者はなぜそう思ったのかというと、かぐや姫はすでに帝と会った時に人ならざる方法でその腕から逃げたからだ。
これを帝の行動によって精神的に死ぬほど傷ついたと考えるか、本当にそれで追い詰められて死んでいると考えるか。どちらにせよ心あるいは心と肉体その両方の意味で死んでいて、あのシーンはあの子がここにいたのなら抱きしめて「死なせはしない」という翁と嫗の気持ちを描いているのかもしれない。
自分で言いながら筋が通っていないと思うのだが、細かいことは気にしない。なので読んでる人もこの文章から気になったことだけ拾ってくれれば良いと思う。

とにかくこんな想像を経てこの映画は、物語は子供に先立たれる親と死んだ子供の話だと思った。これだけ伝われば嬉しい。
それでは次は罪にいってみよう!


前述したように姫は本編で罪と言われる程のことはしていないと思っていた。作物を盗んだり、貴公子たちに無理難題を行って一人を死に追いやるなどしたがいずれも姫だけの「罪」とは言い切れない。
ではその罪とは何か。正直わからない。わからないので、思いつきを並べていこうと思う。好きな言葉を選ぶか考えてみてほしい。

思いつき
生まれてきたこと
→これだけ言うとひどい言いようだと思うが、最後まで聞いてほしい。
月の世界と地球あの世とこの世だと考えてみる。
月の世界には苦しみも思い出もない。これは生者が考える死後の世界のイメージと似ていないか?天国地獄的な考えは置いておいて。※1

苦しみのない世界からわざわざ逃げ出したこと、与えられた幸せを捨て逃げたこと=罪

※1
ちなみにこれについてはそう考えたきっかけがある。それは同じ高畑監督作品「平成たぬき合戦ぽんぽこ」でたぬき達の計画が失敗し、一部のたぬき達が踊り念仏を始めるシーンと宝船に乗るシーンから。すでに高畑作品の中であの世には苦しみがないという考えが出ていたのでこの作品でもそうではないかと考えた。
(宝船のシーンは新天地を目指して仲間が離れて行ったとも取れるし、生き延びた仲間の傷は深く繋ぎ止めとしたが結局は死んじまったんだ。ともいくらでも想像できる。そんな気がする)

逆に親より先に死んだことが罪なのではないか?と考えたがそうすると物語の順序に合わない気がする。かぐや姫は地上に来た時から罪を背負い、罰として生き苦しみ、月へ帰る。
月という楽園、理想郷を出て苦しみが待つ地上にやってくる→自分が望んだのにそこからすら逃げ出したいと思ってしまった→お迎えが来る
この流れだと思うのだ。

大切な人を残して死ぬこと

これはそのままの意味で育ててくれた翁や嫗、仲間たちを残して死んでしまったこと。前述した元から背負っている罪とはまた別で。

月の世界

天の羽衣をまとったかぐや姫の表情から察するに月の世界は苦しみはないけれど生きる喜びも何もない世界なのだと思う。
月の世界で地球を眺めていた人物が流す涙、苦しみのない世界で涙を流す=感情の動きをみて姫は地上に興味を持ったのかのかもしれない。

地上の世界
翁たちがいる地上の世界は苦しみがあるが、そこには花や鳥が歌い、木々がしげり、日々に生きる幸せがある。しかし結果として姫はこの地を離れなばいけなかった。天地(あめつち)は姫を受け入れてはくれなかった。
捨丸との夢のような逢瀬(おうせ)のシーンが捨丸の夢オチみたいに終わっているのをそう思いながら観るとまた辛いものがある。

以上が無い頭をふるって考えて見た私なりの姫の犯した罪と罰だ。
間違っているような気が8割方するが一つの想像と思って楽しんでもらえたら嬉しい。

こうやって見てみると日本の死生観というか、思想はたまにMなのか?というくらい厳しいと思う😌

映画の感想

観た当時は理由もわからずラストの月へ帰るシーンでボロ泣きしていた。
またこの作品は高畑監督と地井武男さん、二人の人間の遺作にもなっていたことを知って子供ながらにジーンと来ていた。
三宅裕司さんが代役として翁を演じていたことには驚いた。声聞いてて全く違和感がなかった。新聞かテレビで地井さんと三宅さん両方の声を使ったところで作る人同士の話繋がりや思いみたいな、なんかすごいと思ったのだ。ものつくりってかっこいいなとさらに思わせてくれた。
8年かけて作った作品だったり、日本画のような筆で書いたような絵も衝撃的だったし友達と見に行った数少ない映画ということでも覚えているw

改めて見返すと、なぜ竹取物語を原作として選んだのか?
あれだけこねくり回して考えてみたが、結局姫の犯した罪と罰とはなんだったのか?想像は尽きない。だからこそ辛いけれどまた見たくなる。そんな映画だと思う。

といったところで今回はここまで!
他人の解説きくの我慢していたのでこれから解説動画をさがしてこようと思う!!

ここまで読んでくれてありがとう。それでは!

追加(2022/2/17)

解説動画見て、やはり自分の妄想とは全然違うなと思った。同じ映画見て違う考え出るの面白い。
しかし少しだけなんとも言えないこの気持ちに一言。

(間違ってようが)知ーらね!

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