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坂口恭平の勘違い創作講座第二回ゲスト山下澄人 文字起こし

(坂口)どうやるんすか?でしょ? だからね、そうなんすよ、なんかね、俺が今ね、山下さんに招待状を送るんすよ、それで招待状を受け入れるみたいなことをボタンを押すとしゃべれるようになると思うんすよね。全然笑 いいです、いいです。でもこんな、俺だけしゃべるのもちょっと。スピーカー。やったことないっしょ、これ、山下さん。ね? なんか押したらね、リクエストってのは分かりますか? リクエスト分かんないっすか? でもまあいっか。あれなんだったんすかね、俺の、あの、俺と山下さんのケンカっぽい雰囲気の、ケンカじゃないけど全然。なにどこ?って言ってるけど。なんかね、これ説明、聞いてる人が、なんかねリクエストとかできるはずなんですよね。つぎ、共同ホストに招待を送ってみました。これなんか、招待状届いてきたでしょ、山下さん。あ、そうそうそう。それであとマイクをONにしたOKです。今ね、マイクがミュートになってんです
(山下)あー、あれ?
(坂口)山下さんお久しぶりです
(山下)これ、僕聞こえてますか?
(坂口)聞こえてます聞こえてます
(山下)(笑い)
(坂口)山下さんお久しぶりです、会ったの覚えてないでしょ? でも
(山下)え?
(坂口)会ったことあるの覚えてないでしょ?
(山下)会ったこと?
(坂口)あるんすよ、アメヤさんと、
(山下)あー
(坂口)山下澄人と一緒にやったあそこの、どこでしたっけ、アゴラじゃなくて、
(山下)アゴラです
(坂口)あれアゴラでしたっけ?
(山下)うん
(坂口)あれを観に行ったときに、髪を切ってたでしょ?
(山下)はいはいはいはい
(坂口)そう、で、まあその話を細かくしても、髪を切った子が俺とすごく仲のいい子で、
(山下)あ~
(坂口)それで一緒に観に行ってたんすよ
(山下)そのとき坂口さんいました?
(坂口)いたんすよ
(山下)あ、ほんと?
(坂口)そう、でもべつね坂口ですって自己紹介とか考えてなかったんで
(山下)うん、本番は苗場でしたよね?
(坂口)そうそう、で髪の毛切ってて
(山下)うん
(坂口)そうそう
(山下)え、俺、坂口さんと言い合いした?
(坂口)なんかね、あったんすよそういうの。俺が芥川賞のことを言ってて
(山下)うん
(坂口)そのときになんかあったんすよ、俺もよく分かってない、覚えてないんだけど、でもなんで山下澄人が俺に怒んの?みたいな感じで
(山下)ぜんぜん覚えてない笑
(坂口)ほんとに、だからもう、即物的になんかムカついたから殴ったみたいな感じだと思うんですよ、得意の。山下さんが。俺が山下さんに会いたくない原因。保坂さんの花見も行きたくなくはないんだけど、行くと山下さんいそうだから
(山下)全然覚えてない
(坂口)ほんとですか、全然いいんだけど、俺もなにも根に持たないので、なんか動物の「ファッ!」で終わったみたいな感じで
(山下)あ~
(坂口)でもよかったですよね、おれに聞くの?は。俺は自分で本にしたいぐらいに思ったぐらい、むしろいちばん最初に手ぇあげたんじゃないかって思ってるぐらいです
(山下)ほんと、あれ、坂口くんがなんかすごい、最初あの質問をやりだしたときに書いてくれて、いやこれ絶対本にした方がええって言ってくれたのがキッカケなんすよね
(坂口)あ~
(山下)全然そんな風に考えてなくてあれ
(坂口)そうですよね、だって山下さん的にはあれはエッセイ本だって認識もあったと思うから、そっち系出さないって思ってるんだろうなと思ってたから
(山下)なんとなくね、だから、それで、なんか、ネットのそういうコーナーやし、もっと別の利権が発生するかなとか、
(坂口)あー
(山下)知らんから俺は
(坂口)俺はアレは勝手に商品になると思っちゃいました
(山下)あー、なるほどね
(坂口)でも重版もしたんでしょ?
(山下)まだしてないんですよ
(坂口)あ、ほんとですか?
(山下)うん
(坂口)じゃあもう一息ですね
もう一息ですね
(坂口)でも新聞書評のってたし、
(山下)あー。なにやればいいですか?
(坂口)え?アレですか、いやなんもやらなくていいでしょ、山下さんは
(山下)今飴屋さんからLINE来てる
(坂口)(笑い)なんで飴屋さんは山下さんにLINE来てる、俺には話さないけど。おもろいっすね、今日前半は俺と千葉雅也で、
(山下)あー、だから俺それをたまたま録音のやつやったけど、ちょっとさっきまで聞いてたんですよ
(坂口)あっ、マジっすか? ありがとうございます、すごい、ちょっと変な話を
(山下)全編聞いて、で、終わったから、切ったら、あれ?またやってる、と思って
(坂口)(笑い)けっきょくしゃべったら興奮しちゃって眠れないから次の仕事やろうと思ってて、
(山下)やり方分かんないモンって言って
(坂口)でも山下さんも書き溜まんないよね、どんだけの原稿もかけるでしょ?
(山下)うん……、俺でも、今、今書いてる小説って、3年かかってるんですよね
(坂口)へ~。それって連載してるやつなんすか?
(山下)全然してないっすよ
(坂口)してなくて? そっちの方がいいじゃないですか
(山下)だからちょっときちがいじみたやり方で、で金にならへんからさすがに焦ってきて、
(坂口)あ、そうなんすか、どこにも出してないってこと?
(山下)一応、文藝からの依頼されて、文藝って言っていいのかな、まあいいや
(坂口)え、何枚くらい書いてんすか?
(山下)いや、それが(笑い)たぶん1回2000枚ぐらいいったんですよね
(坂口)あ、ほんと、やっぱすごい
(山下)でも、俺すぐあとから書き直すから
(坂口)あー、けっこう消しちゃうんですか?
(山下)そう、消しちゃう。だから千葉さんの話聞きながらなるほどなって思ってたんすよね
(坂口)俺は消せないんすよね
(山下)うーん、でとにかく何回もそれやってこの3年間で、
(坂口)うんうん
(山下)でまあもうこれそろそろやってまあおう、と思って今やってるところなんですよね
(坂口)へ~、でもじゃあ1500枚ぐらい残ってるんでしょ?
(山下)残ってないんですよそれが
(坂口)えー、けっこう消してるってこと?
(山下)消してる。俺こないだ計算してみたら、200枚もなかったからビックリして(笑い)
(坂口)えー、おもしろいね。えー、俺だったら初稿出したいな
(山下)だからそう、さっきの話聞いてたのが、これもうちょい、2年くらい前に聞きたかったなと思って
(坂口)そうね、まあでも消しちゃったらたぶんなんか戻すのもヘンでしょ?
(山下)一応でも全部じゃないけど、残したいのもありますね
(坂口)うーん、と思うけど。だから、初稿シリーズは出せるかも俺(笑い)
(山下)いやそれおもしろいですよね
(坂口)初稿シリーズで文庫版で良ければそれなりに、そんなにペイしなくてもいいから、俺の版元で出したいなあむしろ
(山下)俺これちょっと坂口さんに質問なんですけど
(坂口)はい
(山下)さっきバーって書いてましたよね?
(坂口)うん、はい
(山下)ほとんどしゃべりながら書いてましたよね?
(坂口)うん
(山下)んで、あれはもう地でバーって書かれていって、それはもうここで終わりって
(坂口)はい
(山下)それが頭にちょっと残って、あれもうちょいこっちの方がいいんじゃないかみたいときはないんですか?
(坂口)人生で一回もないですよ俺
(山下)ほー
(坂口)だからその、そうですね、それはないから、でも作家じゃないから俺は。
(山下)っていうか
(坂口)山下さんは作家なんすよ
(山下)どうかな、なんか
(坂口)作家だと思うけどな
(山下)あのー、あっそうかそれがないのか。でそれがないってことは、なんか、これよりこっちの方がいいっていう、もうその回路を捨てたってことですよね?
(坂口)いや、捨てたんじゃなくてたぶんもとからないんですよ
(山下)そう?
(坂口)だって生まれた子が左手がなくてもいいじゃんって思ってる
(山下)なるほどね
(坂口)どっちかっていうとそっちの思考なんですよ
(山下)いやでもその感じ俺めっちゃ分かるんですよ
(坂口)ですよね? だからやっぱり山下澄人的にはほんとに文章全部生き物感があふれてるから、だから壁ぬけの谷のノリで2000枚いってんでしょ?
(山下)壁ぬけの谷はそうでしたよ、あれ一回も読み返してないので
(坂口)うん、これちゃんと、だけど、まあわかんないけど、俺もこっち側に変に誘い込むのもあれだけど、
(山下)うんうん
(坂口)今の小説のやり方やってたらたぶん詰まると思いますよ、山下さん
(山下)うん、詰まると思う
(坂口)やっぱりそれは銭の問題でもあると思うし、なんかたぶん、微妙にいい位置に逆に押し込められてるとこもあるじゃないですか
(山下)うん
(坂口)だから俺はエッセイ本出してと思ったんです
(山下)あー、はいはい
(坂口)だってその話がおもしろいし、そのノリで見ると2000枚の小説も絶対読めるし
(山下)いや、すげーわかるね(笑い)
(坂口)そうそう、だから、ちょっと、だから、あんまりそう思ってないかもしれないけど、あんまり保坂チルドレン感が強いとダメだと思うんですよ
(山下)でも俺は手入れの違いでわかるやろっていう、ちょっとところがあって、で、だからその坂口くんが最初ネットでやりだした質問は、あれはもうパってその日質問見つけて、なんていうの、ほとんど即興でバーって書いて、
(坂口)うん、だってあんなの何にも考えてない書いてるでしょ?
(山下)書いてる
(坂口)しかも書き直してないでしょ? いやだからでも、さっきの千葉さんでいうと言ってることが音楽的、音的にまちがってないみたいに、
(山下)なるほど
(坂口)俺は山下さんは絶対そっちだから
(山下)なるほど
(坂口)あんまり文芸誌に揉まれんのやだなっていうのが、僕ねすぐね他人のこと心配しちゃうんで
(山下)いやでもすごい分かります
(坂口)なんならなんか清掃会社の社長かなんかやりながらやりまくっててほしいんすよ
(山下)いやもう、めっちゃ分かる(笑い)
(坂口)(笑い)そうそう、僕の場合はそれを清掃会社の社長じゃないんだけど自分の作業の中でどうやっていけばいいかっていうと、ある意味そこらへんの人たちと絡まんが良かったっていうので、だからまあよかったと思いますよ、芥川賞獲った方がよかったしね、山下さんは
(山下)あれだから不思議なのはさ、最初たぶん僕が書き始めたときは、文芸の世界にこようと思ってた人間じゃないし、なんとなく声かけられたことをキッカケにしてはじまったから、ちょーテキトーに最初書いたんですよね
(坂口)だけど、山下澄人のよさを気付くやつは有能すぎる編集者なはずだから
(山下)あー
(坂口)たぶんね。馬鹿な、馬鹿なって言ったらあれだけど、馬鹿な編集者だと形にできないから、形にできるからすごい賢いんだろうなって思うのは分かるんですよ
(山下)僕のいちばん最初の小説書いた編集者と、今回質問の本だした編集者はおんなじ人なんですよ
(坂口)でしょ? だからまあそう、そう、感覚がいいんですよ。でもほんとは俺が手刷りで出したかったってことですよ
(山下)なるほど(笑い)
(坂口)(笑い)分かんないけどね、まあほんとに、面白いのは俺だったらぜんぶ自分で、自分で手売りで3,000部売れるのになぁとか思っちゃうんすよ。1,500円で3,000部だから450万円してそしたらもうの半分山分けで山下さんに、
(山下)ほんとそう、ほんとそう
(坂口)ヤバいでしょ? 俺もうほとんど任侠って言われてるんで、任侠の人に本気でお前頭だけは任侠だなって
(山下)うん。坂口くんはヤクザやと思いますよ
(坂口)任侠スタイルもちょっとやっぱ、山下さんがどっかしらの窮屈さを俺が感じるとしたら、任侠なのにもかかわらずっていう感じはあります
(山下)もう超分かる
(坂口)そうよね、そこですよね、だけど、今回全然エッセイはほんとによかったと思うけれど、でもたしかになるほどその編集者なんだって思いました。緑ですよね? 緑をやった人。
(山下)そう、そう
(坂口)そうでしょ、なるほど、面白いっすね。だけどやっぱそういうことってちゃんと考えつつみんなで共有した方がいいって俺は勝手に思っているんで
(山下)うんうん
(坂口)でも山下さんって可能性溢れてるからね
(山下)可能性溢れてんの俺?
(坂口)むっちゃ溢れてる、ほんとに、俺は、最近どういうの読んでる? だから「白鯨」読んでるって言ってたでしょ?
(山下)うん
(坂口)でもそういうのしか書かないでほしいんですよ、
(山下)うーん
(坂口)だけどエッセイは書きまくっててほしいんですよ、だって書けるから、しかももうちょっと、保坂兄やんの話じゃないけど、保坂兄やんもそこでちゃんと上手にある程度ほら、三刷り四刷りはいく男なんですよね、そこは俺はちゃんとエッセイは真剣にやらないでできる、完璧な、すげーいい即興演奏できるスタイルだと思うんすけどね
(山下)そう、だからさっき千葉さんとしゃべってる話でそういう話がでてきたときに、すごい分かるなと思って、その反対に「白鯨」読んだりして、まあすげーなこの本って思って、おもしろいなと思って、俺の「白鯨」をやろうと思って
(坂口)うんうん、で、それがその作品なんですか
(山下)そうそう
(坂口)俺絶対2,000枚でいってほしい、俺来年2,000枚自分で出すんすよ
(山下)坂口さんって2,000枚どれぐらいで書くの?
(坂口)俺はね1日20枚なんで100日で書いてます
(山下)すげーな
(坂口)(笑い)まあそこは、山下さんはどんだけ、でも書くスピードは俺の方が速いっすもんね
(山下)書くスピードは坂口くんほどは早くないけど俺もけっこう早くって、ただ、早く書いたやつをバババって捨てていくわけ
(坂口)そっか、でもそうね、でもそこは俺の勝手な妄想は、筆が乗ってる文章はダメだっていう、ちょっと前に入れられた予備知識が邪魔してるって思ってんすけど、それやっぱり兄やんなんですよ(笑い)保坂兄やん
(山下)分かる、分かる
(坂口)なんでかっていうと、俺もぜんぶ入ってんすよ兄やん。兄やんと全然しゃべったことないけど、兄やんの言ってることってやっぱり、もう何周コイツ生きとるんやっていうところ言ってくるから、全部体に入っちゃうんすよね
(山下)でもさ、こないだ保坂さんとトークショーやってさ、二週間くらい前かな
(坂口)そうですね
(山下)そのちょい前に保坂さんにAIショックが起きてて
(坂口)うん
(山下)なんかちょっと気弱なこと言ったから、ちょっと喝入れたんですよね
(坂口)うそ、そんなAIでショック受けてるの?
(山下)なんかAIってインテリが騒いでるでしょ?
(坂口)うん
(山下)大騒ぎしてるでしょ? で、今日すごい面白いニュースがネットで出てきて、AIちょっとバカになってるらしい
(坂口)俺も読んで笑っちゃった
(山下)(笑い)これ面白いな、と思って、
(坂口)いいすよね
(山下)なんかすごい千葉さんとの話面白いなあと思いながら聞いてて
(坂口)でもAIってけっきょく人間の言ってること参照するしかないじゃないですか
(山下)うんそう、だから
(坂口)だからバカになんすよ、けど山下澄人は人間の言ってること参照してないからバカじゃないと思ってますよ
(山下)(笑い)まあな。たしかにそうやな
(坂口)そう。いいっすね「白鯨」、ノアの箱舟みたいな書いてくださいよ
(山下)そう、だからこの前宮崎さんの新作観に行って、
(坂口)うん、どうだったんですか?
(山下)俺は、なんていうかな、えーっと、衰えたって言い方するとすごく誤解されていくから丁寧に言いたいけど、俺、宮崎さん絵描いてないなと思ったの
(坂口)あれはそうじゃないですか、絵コンテをもとに
(山下)で、宮崎さんが絵を描かなかったら面白くなくならへんってことどういうことやろうってずっと考えてて。だから、そのなんていうかな、そのシステムを作ったんやろうなあと思った、年齢もあるし、できる作業時間とかを考えたときに、そのシステムを作るのに時間かけたなと思って
(坂口)へー
(山下)そうすっとこの人はこれで終わるはずがないって、これは実験作やって。実験作やから、今まで触ってことないこと触ってやろうってたぶん触った気がしたし、それは作品としてはあの人が作るんやからものすごい作品になるから、なんかそういう感じでしたね、これが遺作って気はまったくしなかった
(坂口)でもなんか、山下澄人のイメージの方が、面白いけどね。だからあれをアバンギャルドな作品だと思うのはどうかと思いますけどね、
(山下)すごくどうかと思う、なんかあれって
(坂口)アバンギャルドじゃないよって、
(山下)あれはだからたぶんその、弱ったって見えたなと思ったんですよね
(坂口)あー
(山下)弱ったって見えたらみんな安心して褒めるから
(坂口)うーん、でもなんか最近俺ゴダール見直してんですけど、俺全然ゴダールのこと分かってなくて、
(山下)うん
(坂口)いやゴダールとんでもないなって、「決別」って映画観て、ちょっととんでもない衝撃受けて
(山下)あいつはとんでもないっすよ
(坂口)なんなん、しかもちょうど俺が夢で書いてた文章とほぼ同じような文章から導入始まって、だから、うわこれってもう、一人の人がなにか頭の片隅の方で一瞬出てきたような映像とかを、と完ぺきリンクするように、考えてるわけないけどやってるってことはどういうことなんだろうと思って、だからそこらへんの奥の奥でほんとに見えてたものとか、本を開いてパッと入ってきた文字とかをもうそれと直感とかってまったく思ってないんだろうなって、もうこれは次のテキストで、これが次のテキストでって、それこそカフカが、まあ兄やんが言うには一行づつ書いていったって言うあのことをゴダールはもっと本とかじゃなくて、歩いてて見た新聞の一文字とかそういうもので読んでるっていうか、そういう衝撃を受けましたけどね、そう考えると駿の作品はやっぱりちょっとすごろく的だったなっていう、僕にはね、全然よかったけどね、面白かったし、だけどやっぱり山下澄人のイメージのほうがやっぱりおもしろいし、僕ぶっちゃけ山下さんの小説ってぜんぶは読めないの。なんでかっていうと書きたくなるから。だから読みたくないんすよ。でやっぱり人の名前とかって山下さんなんかもずるいっていうか危ないから、自分に関係ある人の名前だったりするんですよほんとに。だから怖い、だから読みたくないって感じ、だから壁抜けなんかいつも目の前に置いてますよ、横は「死せる魂」で、その横はドゥルーズのカフカ論だけどなんかそうこれ、そこらへんのところに勝手になんか置いてんだけど、やっぱ開くとちょっと怖いなって、でもいいんすよそれで、ちゃんとそういうところで勝負して書いてる人がいて、山下さんと俺との書き方っていうのは、千葉さんと俺の書き方が違うって観点でいえば近いから、たぶん
(山下)近いよ
(坂口)むっちゃ近いと思う
(山下)近いから、なんていうかな、近いからこそ、なんかこう、俺も探したんや、坂口くんのやり方、それは書くものに限らず、歌うことも、踊る、今日踊ってたけど、踊ることも、料理も、あとそれとTwitter、なんかなんていうんかな、それもさっき千葉さんとの話でされてたことやけど、自己検閲を外していくこととか、えっと、自己検閲を外すんじゃなくて、外れた方に行くっていう、強い意図があるじゃん
(坂口)うん
(山下)あれがすごいなんかキーやねん
(坂口)うん、でもそれってだって、いや、だけどそれがたぶん、兄やん、兄やんって言っているけど、兄やんはやっぱりかなり自然となぜか山下澄人はできているっていうのは、たぶんジュンク堂トークあたりでずっと言ってたことだし、山下さんがそうじゃなくてもっとうまくなりたいっていうのもあるって言ってたこととかも近いけど、でもどんどん外せるようになってると思う、逆に、
(山下)あー
(坂口)でもそれは「おれに聞くの?」で分かってるんす、感じてんすよね、おれに聞くので、あれも俺が思うに勇気の話に近いって感じがしてんだけど、どういう勇気を持っていくかっていうのが、べつにうちら下手でいいとは思ってないんでね
(山下)うんうんうん
(坂口)だけどその上手くなり方ではないっていうか
(山下)すごい分かります
(坂口)そこらへんはそう、
(山下)上手くなりたいっていうとすぐなんか違うことで誤解されていくけど、なんていうかな、向上したいんだよね
(坂口)うんうん
(山下)(笑い)じゃあ向上ってなんだって言われると困るんだけど、向上ってわからへんやつには説明できひんわ俺って思うとき
(坂口)だからそう、だからそれってほんとに俺が思うに悟空が修行してることとか、なんかそういうのには近いなって感じはしてて、まあ、山下澄人だとブルースリーかもしれないけど
(山下)そうです
(坂口)なんかそういう訓練を、訓練を経ている。訓練、俺の言ってる結論は、そういう訓練ってなんなのかっていうのにそれをもうちょっともしかしたら言葉でなんか、奥義書じゃないけど、なにか言葉になったりするのかなって
(山下)いや、そう思います
(坂口)でもそれって奥義書じゃないわけですよ、だからけっきょく今回の人生相談がよかったのは人が問いかけてそれに対して答えるってのがすごいやっぱよかったんですよね
(山下)そうですね、あれだからけっきょく中身に反応しているっていうよりは、投げてきたその球の形に反応してるんすよね、いろんな球がくるわけじゃないですか、本にするときに僕はほとんど注文出さないんですけど、来た質問全文載せてくれって、
(坂口)うんうん
(山下)端折らずに。それやってしまうとまったく噛み合わへんから、
(坂口)うんうん
(山下)このへんな質問に対して俺は答えたって
(坂口)うん
(山下)それがけっこう重要で、それはなんか訓練でしたね
(坂口)うん
(山下)一個の
(坂口)でも最近はほら俺はある意味ヘタウマだって言わなくなってるだけヤバいと思いますよ山下澄人は
(山下)あ~
(坂口)やっぱりなんか全然俺は一秒もヘタウマだとは思ったことはないけど、
(山下)うん
(坂口)だけどそのどっかしら文芸の人たちはそういう受け取りかたをした人もいただろうし
(山下)めっちゃ分かります、もうそれはもう僕すごく意識的にやりました、あの、なめんなよって、要するになめんなよじゃなくて、たぶんこれ坂口さんにも感じんねんけど、えっと品の良さなんですよ
(坂口)うんうんうん
(山下)単に、で、それをそのまま受け取ってくれてたら別にいいんやけど、
(坂口)うん
(山下)えっとなめてくるんすよね、
(坂口)ああうんうん
(山下)なめてきたらそれはこっちは全力出すよって、
(坂口)うん
(山下)っていう意味で、ヘタウマみたいな言い方をやめたし、その、僕なんか所詮小説の外からぽっと出で入ってきたんですよとか、そんな言い方はしてないけど、
(坂口)まあね、そういう空気というか
(山下)そうです、それはやめた
(坂口)そうそうそう、それでそんなんじゃないからやめていいんですよ
(山下)うん、おもしろいなこれ
(坂口)山下澄人はほんとに、まあ、さっきの千葉雅也じゃないけど、なんで俺こういうことばっか言ってんのかなって自分で言いながら不思議ですけど 
(山下)でもさ、さっき千葉さんのこともめっちゃうまいこと言うなあと思ったけど、俺もちょっと一回zoomやったけど千葉さんと話したことがあって、
(坂口)うん
(山下)あの人ってなにを投げかけても、次の日の電話なんですよね
(坂口)そうそう、あれでしょ?(笑い)寝かせた言葉でしょ?
(山下)寝かせた言葉がどんどん返ってくるじゃん
(坂口)そうね
(山下)これなんていう……
(坂口)でもそれは山下澄人の質問の答えも全部そうなんすよねこれ、準備してたんすかこれ?ってなっちゃう
(山下)あー
(坂口)だけどそれだからいろいろ、その、ヒントにはなるんでしょうね、だからそこで戦っているからその言葉がさっと出てくるから
(山下)なるほど
(坂口)だけどまあそうね、いくつもあるけど俺あれはほんとに俺が鬱で読めるほぼ数少ない本の一つなんで
(山下)ちなみに他なに読めるんすか?
(坂口)俺は「ベケット伝」を読んでんすよ
(山下)あ〜
(坂口)兄やんが嫌いな
(山下)俺読んでます、読みましたあれ
(坂口)評伝の、
(山下)分厚いやつでしょ?
(坂口)「ベケット伝」の上巻くらいすかね、上巻でやっぱり戦争で相当キツいころに、書けずに苦しんでるところ書いてて、そりゃ評伝は兄やん的にはダメかもしれないけど、でもやっぱりジェイムズ・ノウルソンって人も結構がんばってあり得ないぐらい調べてて、
(山下)うん
(坂口)やっぱ俺は逆で評伝ってやっぱすごく好きなんで
(山下)俺も好きです
(坂口)うん、評伝読んでるだけで、てか評伝を書きたいんですよねいつか(笑い)存在しない評伝
(山下)なるほど
(坂口)評伝はすっげー書きたい、てかなんなら山下澄人本ってちょっと評伝っぽいですけどね
(山下)あー
(坂口)だから俺が思うにこういう男がおった、でその男がどういう風なところでやってたっていうだけの、淡々と言葉もない評伝みたいなの2,000枚読みたいっす
(山下)あー、なるほどな、おもしろいな
(坂口)それでだんだんだんだん俺はなんかこう、うーん、そんなに改行いらんと思うんですよね、
(山下)あー
(坂口)俺会話文もしかしたらいらんかもって思うくらい
(山下)いやー、すごい、すごいね、それはちょっとすごいよ、あの、俺これさっきすごいと思ったことがあって、
(坂口)はい
(山下)坂口くんのスペース聞いて終わって、ケータイ熱なったから横にポイって置いて、で今度拾い上げるときにパって画面見たら、坂口くんとやってたDMの画面が出てて、
(坂口)うんうん
(山下)で、あれ?と思って、ほんでそれを消してタイムラインに戻したらこれやってて
(坂口)(笑い)
(山下)ヤバない?(笑い)
(坂口)それはなんなんすかね、でも俺そんなに全作品読んでるわけじゃないし、
(山下)いやそんなこと関係ないんやと思うよ
(坂口)うん、文面でやっぱり俺が横にいたら、連れだったらガーンって言っちゃうかなって思うこととかを言うんですよね千葉さんにだって
(山下)なるほどね
(坂口)でもだけど結論は、良くしたいじゃんって思っちゃうんすよ
(山下)いやいや、それは
(坂口)なんで作品を良くすることが悪いかよって、作品って作家なんか関係ねえから作家のプライドなんか傷つけたっていいよって思ってて
(山下)それがそのまま伝わるからすごく入ってくる
(坂口)俺むっちゃベケットぐらいの、でも改行ないとなるとまたちょっと大変だから、けっきょく、その句読点もなしでとかになりすぎない方がいいと思ってて、普通に
(山下)いやー、もうそれさ、それすごい、もう見てた?みたいな感じのこと言ってんねんけど
(坂口)ほんとっすか? でも分かるんすよ、そこで全部戦うのも、俺も全部、そうやってたから、会話文とかいらんでしょ?
(山下)いらんと思う
(坂口)だってもうボイスは入ってるから普通に、男がおったってだけでもう入ってんですよね俺ん中でボイスが、男が一言もしゃべらんでも、なんかよく分からんけど右腕がなくなっとる犬をとりあえず介抱してるのか抓ってるのか分からんけど一緒に歩きだしたみたいな感じで、声が聞こえてくるから、声は俺にとってはいつも山下澄人の場合はいいんだけど、いいのはもう分かるよって思っちゃうんすよね、
(山下)うんうんうん
(坂口)だってもうその声は頭の中で聞こえてるから、もう動作がどう動いていったのかが知りたいっていうか、もっと知りたいと思っちゃう、
(山下)うん
(坂口)だから声がちょっと俺には止まってるように見える
(山下)めちゃわかる
(坂口)動きが、だからなんとなくそうですよね、そういう文章ちょっと読みたいっすね
(山下)だから僕カギカッコをなくそうなくそうっていう、なんかそっちにもう
(坂口)飽きてんすか?
(山下)大分前からシフトしてて
(坂口)へー
(山下)でもそれでもこう残ってはくるんですけど。
(坂口)うんうん、もちろんもちろんそれは全然、必要なものは必要で、だけどそれも中に入れるときゃあいいじゃんって感じします
(山下)いやまあそうなんですよね、すごいわかる
(坂口)うん、だからもう関西弁じゃなくてもいいんだし、標準語だろうがなんだろうが、大阪人が標準語しゃべってもよくなってきてるわけだから、
(山下)ほんとそうっすね、だから、僕はいきなり小説の世界に来て、40すぎてから小説みたいなことに入ったから小説作法とかルールみたいなものをまったく知らずにはじめたことで、えーっと、まったく知らんってことがどっかまでは引っぱってくれるんですよ
(坂口)うん
(山下)だけど所詮我流っちゃ我流なんすよね
(坂口)うん
(山下)で、どっかで速度が鈍った感覚があったんですよね
(坂口)うんうんうん
(山下)で、これは我流の限界か?とか、まあいろいろ考えたこともあって、
(坂口)それはむしろ相談のタイミングだけだったんじゃないですかね
(山下)いやまあまあマジでそうやと思います
(坂口)(笑い)
(山下)これでも我流の限界やって言って普通の小説書きはじめんのか?って。それをやる気はないんですよね
(坂口)うん、いやいや言っとくけど、むっちゃメインストリートの小説書いてるよ
(山下)あーまあそうな
(坂口)まったく外れてない、外れてないって言うか、だから保坂兄やんで言えばアレじゃないですか、フアン・ホセ・サエールじゃないですか? 
(山下)(笑い)
(坂口)あれ読みました?
(山下)はい、読みました
(坂口)あれとか俺はむっちゃ山下澄人みたいな感じがしたけど、あれはすごかったけどな。やっぱ兄やんなんであんなに本読んでんすか? なに、どうやって見つけてくんの?
(山下)あの人はヤバいですよ、ほんとヤバいと思う
(坂口)ほんとは俺は兄やんと毎週会いたいくらいですけど
(山下)ああ
(坂口)でも全然会わない方がいいと思ってるんですけど(笑い)
(山下)でも今けっこうタイミングかもしんない
(坂口)ほんとっすか? 俺ずっと梅ヶ丘住んでたんで、完全に、お忍びで、兄やんと生活圏まったく一緒だった(笑い)
(山下)これ今保坂さん聞いてるとは思わんけど、あの録音で聞いて欲しいとはちょっと思うけど、えっとね、今絶対タイミングやと思う
(坂口)へー、そうですかね、でもやっぱり「現実宿り」ってまあほとんど誰にも理解されてないけどやっぱり兄やんが一番はじめにちゃんと言ってくれたから、いやいやほんとに、俺にとっては、しかもあれが生まれて初めてだったんですよ、もうなにも考えずに一番キツいときに、ド鬱で、もう自分が完全に消えちゃってて、でも浮かんでるものがあるんだからもう苦しくても書こう、と思って、書いて、でもたしかにそのときベケット読んでないんで、で、うわーと思ったんすよベケット読んで、マジで?みたいな、だからそれは、でもいいっすよね、こういうの楽しいなと思って
(山下)いや楽しい、いやこれはなんかすごく画期的な感じがする
(坂口)そうっすね、今日たまたまね、ほんと俺もなにか思い立って千葉さんと話したし、山下さんとも話したし、なにかその書くことについてのまあなんか、なんだろうね、ほんと書くことってのが大事だから
(山下)俺が言うのもヘンやけど、千葉雅也と坂口恭平がしゃべって、でもっかいやりますゆうてスペースやって俺がしゃべって、これほんまに全員聞くべきやで(笑い)
(坂口)(笑い)思いますよ、だってけっこう戦ってるから二人とも、でもなんか僕はなぜか多少ちょっと気楽なところにいるって思ってんだけど
(山下)え?なんのときに?
(坂口)気楽な場所にいるっていうか
(山下)いやー、それはそうは思わんわ
(坂口)そうっすかね、だけど、そう、そうっすかね。みんな、二人の戦ってるところではあんまり傷は受けないタイプなんですよね
(山下)だからたぶん身を削っていく場所が違う感じがする
(坂口)うんうん
(山下)うん
(坂口)そう、だからちょっとだけたぶん気になってんじゃないのかなってことですよね、つまりそこで身削らんでもいいんじゃない?って思ってて
(山下)あー、うんうん
(坂口)もっと、半端ないものをやるためには身を削ったらマズイんすよたぶん、
(山下)なるほどね
(坂口)その、作品のなかで身を削っていくことはもちろん、いや分かんないけど、やっぱりほんとに身を削る必要があるのかっていう結論は、俺は身を削ることはないって、カフカは身は削ってたかって思うといや~削ってないっしょって思っちゃう
(山下)あ〜、なるほどね
(坂口)うん、ベケットは身を削ってたかというとやっぱり分かんないけどあの人の評伝を俺が読む限りでは、いやーこいつはすごいのを一人で見つけて興奮してたんだろうなって、この一番キツのがやっぱりこれが作品にいくんだーと思って、そのなんかその実感みたいなのを勝手にね、それこそ三部作にもちゃんと乗ってるしなあ。なんかやっぱりほらそれなんとなくこれは山下さんに対してはある程度文芸の囲いがあることじたいがちょっと調整する必要があるかなって言うのと、その前のエッセイ出せって言ってたころは金銭的な心配もしてたと思うんすよね、だからそれで鈍るってこともたしかにあるから、だからそういうことじゃなくてもっとたぶんいろんなことなんでもやったらいいし、でもだけどその代わりにどんどんどんどんその危ない2,000枚の原稿も出せるようになると思うんですよね、そっちの方が
(山下)いやー、おもしろいな
(坂口)そういうのを気にするのも面白いなと思って俺も、なんなんすかね、いやいやある程度同志だと思ってるからですけど、だってちゃんとやってる人いないもんあんまり(笑い)。それはもう書いてる方もたくさんいるから失礼ではあるんだけど、やっぱり怖いことは怖がってるけど怖がってねえなって人いないからあんまり
(山下)これはここに保坂さんつれて出して話すべきだな
(坂口)ねー、やっぱ兄やんはそういう意味では先に引っぱってくれてますからね、なんで俺こんな、しかも兄やんの小説一個も読んだことないんですよ俺
(山下)あ、ほんと?
(坂口)兄やんの小説まったく読めない、俺はほんとに小説、あの小説の三部作が最高の俺にとっての小説だと思ってるんで、あれを読むととんでもないエバーグリーンが広がります、どこにも壁ないじゃん、って思っちゃうから
(山下)うん
(坂口)すっごい自由な気持ちになって、まあたぶん千葉さんもすごいそれは影響受けてると思うから
(山下)受けてるしね
(坂口)うん、それはそれでしっかり受け継がれてるからと思いますね
(山下)だって僕なんかそれこそ最初に書いた小説、まあそれは出版社から依頼があって書いたんやけど、その、なんて言うかな、さすがにどこの馬の骨の小説を出版社もなかなかGO出さなくて、それでゲラまで出て、その段階でもなかなかGOが出なかったんすよね、なんて言うか、保坂さんが「これ出さなかったらなに出すんだよ!」って(笑い)
(坂口)うん(笑い)
(山下)めっちゃあの人推してくれて
(坂口)へー
(山下)それで本になったんですよ
(坂口)そうかそうか、まああの人もそういう励ましをするって人ですよね
(山下)すごいするし、大分前に坂口さんと一回DOMMUNEかなんかでしゃべって
(坂口)俺が動物のときなんですよ
(山下)ほんであれ俺たまたま聞いてて、あのあと保坂さんからメールが来て、坂口くんとしゃべるべきやって
(坂口)へー、ほんとですか
(山下)そう、でもそんときあんまりトークとか苦手で、あんまり上手くしゃべれなかったんですよね、で、山下しゃべんねえからな~とかっつって、だけど坂口くんとしゃべった方がいいよって
(坂口)俺は保坂山下ジュンク堂対談はそれぞれ全部10回以上見てますよ
(山下)(笑い)
(坂口)マジで
(山下)雑談大会ね
(坂口)あれは本気で文字起こしした方がいいっすよ、ほんとに、で、最後に今の気持ちで二人でもう一回やるっていう、小島さんとの往復書簡の小説修行みたいな本、俺はあの本よりクオリティー高いものになると思うな、あの本はあの本で素晴らしいっすけどね。いいっすね、まあでもペドロ・パラモもいるんだしなあ、なんかぜんぜんいっぱいありますよね、山下澄人がどんどん進む上では。あれもやってもいいんじゃないですか、口語訳系も
(山下)こうごやくってなんですか?
(坂口)あのよくやってるじゃないですか町田康が
(山下)あ~
(坂口)ああいう
(山下)なんか古典みたいな
(坂口)うん、あれで道元の正法眼蔵でしたっけ? ああいうのとか、仏法のやつとか読みたいっす
(山下)なるほどな、おもしろいな
(坂口)(笑い)なんだってできるんだから山下さんって。もうほんとに何千枚も書き続けてた方がいいっすよ、ずうっと、で、俺からするといくら足んないのか教えてもらってそれをみんなで集めるぐらいがやっとおもしれえぐらい
(山下)(笑笑)
(坂口)ほんとに。
(山下)(笑い)
(坂口)なんかもう250ページの本いらんのやないですかって思ってる
(山下)うわー、ああそうか
(坂口)うん、なんかどんどん行けちゃうんじゃないかって
(山下)俺ちょっと明日からほんまめっちゃ書こ
(坂口)そう、ほんと山下さんはもう一切自己検閲しないで、文芸誌に載るかとか考えないでバンバン書いて、頼むからエッセイ集もバンバン書いてほしい
(山下)わかった
(坂口)それで書き下ろしでバンバン出せばいいんすから、しかも大和書房とかでいいですよ、なんかもうマトモな文春とか付き合わなくていいから
(山下)(笑い)
(坂口)ほんとに(笑い)エッセイとかですよ、で、1,000枚くらいで勝負かけたいときはそれはちょっとそれなりの文芸担当に声かければいいんじゃないですか。そうなんかそれよりも、だってせっかく書くのたのしくて今あり得ないぐらいの世界にぶっ飛んでいきたいのになんかもったいないじゃないですか
(山下)なるほどね
(坂口)うん、だってどんどん書けますよ。っていうかたぶん俺とその千葉雅也山下澄人危ないっすよどんだけでも書けるから。うん、でどんだけでも書かせたいんすよ、だから今ね億万長者になるのが夢なんですよ、俺が思ってる人に、頼むからどんだけでも書いてくれって、必要な金額書いてくれたら送るからって、そう、足るを知れって一言だけ言って(笑い)
(山下)(笑い)
(坂口)あとはもうかんけーねーから飛ばそうぜっていう、なんかねそっちの方が全然いいっしょって思ってて。で、だからなにが俺が気楽かっていうとそこは俺自分でやったんすよね、俺もそういうことで止まんないんすよ
(山下)はいはい
(坂口)ちょっとそこは心配でとか
(山下)坂口さんの本いっぱいあるもんウチ(笑い)
(坂口)ほんとですか? それはうれしいっすね、そこで止まんない、どんだけバカにされてもエッセイ集だろうがなんだろうがどうでもいいっていうか、今こんな感じで書いてみたんだから!みたいな
(山下)俺さ、これちょっと話変わるけど
(坂口)うん
(山下)俺はドゥルーズだって書き始めた小説あったでしょ?
(坂口)はいはい、「けものになること」
(山下)あれって、あれ一気に書いたの?
(坂口)あれ1日50枚の7日なんですよ
(山下)マジで?
(坂口)マジっす。あれはほんとにもうマジでヤバかったっす
(山下)だけどたぶんそうでしか書けないよねあれ
(坂口)うん、と思う。
(山下)あれはなんかストッパー入ったら書けないよね
(坂口)書けない書けないどんどん出てきたから
(山下)あれヤバいよ
(坂口)あれはね誰にも理解されてないけど、
(山下)あ~そう?
(坂口)だけど兄やんだけまた(笑い)兄やんがちょっと帯を書いてくれてますけど、
(山下)いやまあ
(坂口)お前見つけたな、って書いてあって(笑い)この書き方見つけたか~って。いやあれもドゥルーズの第10章読んでただけなんで
(山下)あれはすごいよな
(坂口)だから白鯨読んで白鯨書けばいいんすよ
(山下)そういうことですよね
(坂口)うん、ほんとにそれでいいと思う、白鯨がおもろくて白鯨読んでみます今から、みたいな(笑い)そういう感じでいいじゃんって、だって書くのが幸せなんだから書かせたいっしょみんな
(山下)そう、だからこんななんでもしゃべってええんか分からんけど
(坂口)ぜんぜんしゃべっていいですよ
(山下)誰もね。俺その今書いてるやつって、ニーチェを読んで、これは俺が言ってることや、と思って(笑い)
(坂口)うん、ヤバいな
(山下)それで書き出したんですよね
(坂口)へー
(山下)なんかそれはやっぱり「俺はドゥルーズだ」っていうのがずうっと残ってて
(坂口)へー、おもしろいっすね
(山下)それはなんていうかな、その
(坂口)え、タイトルなににしたの?
(山下)タイトル「ムエイドゥ」っていうんですよ
(坂口)え?なになに?
(山下)「ムエイドゥ」
(坂口)「ムエイドゥ」
(山下)ムエイドゥって俺が勝手に作った言葉なんですけど、人の名前なんですけど
(坂口)はあ~
(山下)その……(笑い)話の筋は……
(坂口)ニーチェはなに読んでるんですか?
(山下)ツァラトゥストラ
(坂口)へ~
(山下)で、
(坂口)面白いっすか?
(山下)面白いっす、ツァラトゥストラがおもしろくって
(坂口)うん、それ日本語訳を読んでるってことでしょ?
(山下)うん、あのね、佐々木中さんの訳
(坂口)(笑い)中の訳で読んでんだ
(山下)うん、そうあれヤバい、あれ面白い
(坂口)マジで? いやいやそれは面白い
(山下)だからなんていうか、まあ
(坂口)っていうかドゥルーズを教えてくれたのが中なの
(山下)ん?
(坂口)ドゥルーズを教えてくれたのが中なんですよ
(山下)ああそうなんですね
(坂口)そう、中とよく飲んでるときがあって、で、ドゥルーズが1969年の学生闘争みたいなときにパリの大学の、第8大学かなんかの講堂でしゃべってる姿をあいつがいきなり演説し始めて、
(山下)へー
(坂口)ドゥルーズになって(笑い)なんやお前と思いながらすげー感動して、でもまあ中さんは中さんでけっこう今多少干されてるんじゃないかって思ってるんだけど、でもなんかまあねそれはそれでいいっすよねみんな、うちらチルドレンがね、いますからね
(山下)おもしろい
(坂口)へー、いいですね、もうもう山下さん相談した方がいいんじゃない? 俺これでこうやってこうやったらいいじゃんってすぐ出ますよ
(山下)俺する
(坂口)うん
(山下)(笑い)
(坂口)(笑い)俺たぶんね、俺が一番得意なのそれなんすよ、人にこうやったら一発でできるからヤバいからすぐやんなっつって、で、やれるやつとだけ話したいんすよ、もう俺やれないんすかねとか言ってるやつ、ちょっとごめんそこはもうアマゾンだから死ぬわお前ってなっちゃうから、アマゾンなんで死なん奴だけ来いって、もうナイフの使い方知らんかったら死ぬよみたいな感じなんすよね、まあ一応ねそればっかりだとハードコアすぎるから、一応そうじゃない人に向けても書くのが俺の趣味ではあるんだけど、でもほんとの仕事は、ほんとの俺の真面目な意見はこの国マジヤバいから本気で俺の中のある意味で閣僚じゃないけど芸術的なそういったメンツをちゃんとその人たちに発破をかけながら足りないのならば金銭的援助をしながら守らなきゃって思ってるみたいです
(山下)すごいよなんかあれみたい、鈴木敏夫みたい(笑い)
(坂口)(笑い)そう、そんなのなんだってできるよって思っちゃう、だってすげーこと俺全部プレゼンできるちゃくから、みんなそれぞれ自分はプレゼンできないじゃないですか
(山下)それはだけどものすごく勇気づけるな
(坂口)そう、だってすげーのにすげくないことすんなよって思っちゃうんすよ。山下さん今んところすげーことやってると思うから、でもなんとなくちょっと金に困ってたりすんのかなとかちょっと心配させそうな感じもあるからおもしろいんすよ、でももっと、もっとミッショウ(?)とかは食ってるのかとかは心配しないじゃないですか、なんかああいう感じで行きたいです(笑い)
(山下)ありがとうございます(笑い)
(坂口)むっちゃたのしみじゃないですかそれ、次の作品、いや形にならないってことはありえないから形にすればいいだけだと思うので、だからなんか形にするために型にはめるために削るのはやめた方がいいかも、それが必要であれば削った方がいいから
(山下)うんうん
(坂口)でもなんか文章って書いたものが全て魂があるからな
(山下)あれいい話でしたね
(坂口)(笑い)ほんとに俺は、捨て犬ばっかりもう。でもみんな帰ってくるんですよね、よかったですね、でもそういう一連の流れがありましたね今日も
(山下)あった
(坂口)だけどこういうとこって俺と山下さんの場合も全部うちらで勝手にそれぞれ思ってることとかしゃべったら全部ピンってくるのはだってその進路で生きてたらそうなる当然だもん
(山下)そういうことですね
(坂口)だから小説とかは俺にはパワーけっこう強いから、まあ俺はパッケージングの話をたぶん押すんでしょうね。でもやっぱ文字面見たら感じるのはいっぱいあるから
(山下)これめっちゃいっぱいの人聞いてない?
(坂口)今? 聞いてんすかね、200人ぐらいですか
(山下)(笑い)
(坂口)同時で、いや見ますよほんと、一応ね、なんかでもほんとこんな話ばっかすればいいのにね
(山下)ほんとそう
(坂口)やっぱ面白いのは俺にやっぱ依頼をする人ってほんとにいないから
(山下)ビビってるだけでしょ?
(坂口)ビビってんすかね、分かんないんだと思う、扱い、扱えないとは思ってるとは思う
(山下)いやだから要するにビビってるんですよ
(坂口)でもみんな保坂さんはビビんないのかな
(山下)いや保坂さんも結局
(坂口)一人でやってるしね(笑い)
(山下)うん、そうじゃん
(坂口)そうね、そうね、ちゃんと保坂さんも、でも保坂さんはやっぱりまあ俺と保坂さんは経済感覚は意外と近いですから
(山下)あー
(坂口)上手ですよねあの人も
(山下)うん、俺下手やからなそこがな
(坂口)でも下手やからって、じゃあ下手だったらどうすればいいかって俺の中では単純なんですけどね必要な金額を俺に請求書送ってくれっていう
(山下)(笑い)
(坂口)ほんとそうなんですよ、その代わり原稿くださいよって思っちゃうから(笑い)だって原稿書いて売れたらまたあげるんですよって思っちゃう、もうなんかそんなことしか考えてない、やっぱ先祖たどると完全な商人だったっぽくて
(山下)うん
(坂口)海で目せん使って海でやってたから、言葉が会話できない奴らとの商売だから、だからもうおもろくないかぎり今すぐ消え失せろみたいな世界なんですよ(笑い)
(山下)なるほどね
(坂口)おもれーことだけやって8mとか飛べる奴がいればそれでOKみたいな
(山下)俺の先祖って那須与一なんですよ
(坂口)なんすかそれ、ナスノ?
(山下)那須与一って源平の合戦で弓の名人
(坂口)えー
(山下)扇をパスンって打った奴がおるんすけど、超一発屋ですよ(笑い)
(坂口)すごいな、まあでも弁慶系ですしね
(山下)超一発屋がうちの先祖なんですよね
(坂口)えー、でもそれ明確に判明してんすね
(山下)うん、巻物みたいなんがあって
(坂口)うわ、ほんと? うーん
(山下)だから超一発屋の血が遠くからながれてるんやなって思って、何作も頑張って書いてるんですよ
(坂口)うんでも全然一発屋じゃないよ。一発って全然思ったことないな、っていうかどうやってこのテキストが生まれてるのかは知りたいから、俺は一つは創作論をちゃんと書いてほしいと思う
(山下)創作論をね
(坂口)俺は分からないけどソクラテスの、やっぱり自分で自分を救え、救ったら次は修善の目の前でちゃんとみんなにどうやって自分を救ったかを全部事細かく説明しろって、そのソクラテスの教えがしっかり身についちゃってるから
(山下)なるほど
(坂口)まずは自分で完ぺきに自分を救って、いや自分の救い方についての研究なんですよ、俺が千葉さんを見たり山下さんを見たり、まあ保坂兄やんもそうですけど、どうやって自分を助けていくかだからほんとに、それってほんとはみんなの根っこのところでほんとにどんぴしゃりで大事だからやっぱり人生相談は完ぺきだと思ったんすよ
(山下)なるほど
(坂口)もっと売れてほしいですね
(山下)そうっすね、がんばります
(坂口)どこでしたっけ版元
(山下)へんぼーしゃ
(坂口)へんぼーしゃ?
(山下)平凡社
(坂口)あ、平凡社、渋いとこっすね~
(山下)渋いとこ
(坂口)重版してほしいっすよ、もっとちゃんと刷ったらちゃんと回してくれんのになあ、せっかく読売新聞に出たのに(笑い) そうそうそう俺の場合すぐね営業部の中の配本のノリまでいっちゃうので
(山下)(笑い)
(坂口)(笑い)怒りもしないですけどね最近はみんな分かってるので、そうだから、わざとこことここと書店まわりするからってわざとやると配本がちょっと増えていくんでね
(山下)うんうん
(坂口)そういう風にしてあげるんだけど、でも山下澄人はそれやる必要ないしな。いいっすね、なんかやっぱ変わったでしょこの今回の本でなんかまた
(山下)いや変わったと思います
(坂口)うん
(山下)圧倒的に
(坂口)ちょっと荷が下りたところもあると思うし
(山下)あるし、なんかやっぱり思ってなくても小説の枠みたいな
(坂口)うんうん
(山下)それは文芸の世界の枠なのか、外から入ってきた珍獣ではあるけれど珍獣でも中に入ると出されたエサ食ったりするんですよね
(坂口)まあまあそれはそうでしょ
(山下)で、しかしそれはつねに意識的にいようとは思ってやってはきたけどどっかで窮屈になってきて、この窮屈は野放しにしてはならないってすごい思ったんですよね
(坂口)そこでは抵抗する必要はあったけど人生相談でそういう抵抗する必要なかったじゃないですか、みんなああ同じポイントで悩んでて
(山下)そうそう
(坂口)しかもヤベェ山下澄人も同じポイントどころかちょっと下の方で悩んでるぞみたいな
(山下)そうそうそう
(坂口)そっちがあったからすげーよかったですよね。なんだってできると思うよ西遊記でもなんでも書き直してほしいよ、だからなんか口語訳ってのは結構いいんじゃないかなって
(山下)それ覚えとく俺
(坂口)うん、それむしろ文芸の仕事じゃないですか河出の、坂上ちゃんなんですか?
(山下)岩本くんっていう
(坂口)へー、そっかまあねだけど文芸誌のたぶん編集者って扱いきれないところもあるのかもしれないですね、
(山下)まあどうなんすかね
(坂口)なんかヤバいことやりたくないですか?っていう奴の方がいいんだよね
(山下)ほんとそうですよ、だからあの質問ってもともと外資系の就職相談サイト
(坂口)(笑い)
(山下)なんやねんこいつらって
(坂口)それをオーダーした奴が一番やばそうだけど
(山下)やばい、これ間違えてませんか?とか言って
(坂口)うんうん
(山下)いや!むしろやってほしい!みたいな
(坂口)へー
(山下)ノリがおもしろいなと思ってやったんすよね
(坂口)いいっすね、へー、俺ん中では山下澄人とジャック・ケルアックとか勝手に結びつけてますけどね、
(山下)え?なにと?
(坂口)ケルアック分かります?
(山下)あーはいはい
(坂口)ケルアックのスクロール版っていっていわゆる彼の初稿のスクロール版の「オンザロード」、書籍になってますけど河出からでてて、それもけっこうおもしろいと思う。それこそあと普通に熊楠やってほしいけど
(山下)くまぐす……
(坂口)うん熊楠とか、やっぱ日本人でおもれー奴見つけて、そいつの新聞連載できそうな奴(笑い)まただってさうちら書けるから新聞連載なんの苦もないと思うんですよ
(山下)(笑い)たしかに
(坂口)ヤバいっすようちら、だって俺も今新聞連載書いててまだ始まってもないのに30回50回終わっちゃってるから
(山下)(笑い)
(坂口)ウチの場合はね娘が挿絵だから本気で芸能一家でやってくぞみたいな
(山下)いやほんとおもしろいよね
(坂口)マジ稼ぐぞって言って、それで行くしかねえんだよウチらわって笑 そしたら息子がムゼー(?)いって帰ってくる、文字だけでもありがとうって
(山下)あのマンガ読みましたよ俺
(坂口)(笑い)メダ男の物語。あのメダージュが生まれた瞬間のコマとかもちょっとすごいなって
(山下)すごいね、彼は何歳?
(坂口)10歳。10歳でやっぱね一言ひとことが結構山下澄人のキャラクターッぽいっていうか、どっか連れていこうかとか言うと、お前は躁鬱でキツいんだからそんなこと考えなくて良くて
(山下)(笑い)
(坂口)横にいてくれればいいんだよって、その言葉の優しさがなんか
(山下)優しいな
(坂口)優しいんすよ、結局さすごいいい人間を書いてるわけだから山下さんは、もう一個は人物伝ですよね、人物伝もすっごい読みたい、どうでも、誰お前?っていうようなやつの人物伝じゃないけど、「平凡人物伝」の深沢七郎じゃないけど、俺が好きなのは山下澄人のまわりのやつについて山下澄人が感心したり自慢したりする文章が大好きなんですよ
(山下)あー
(坂口)あれを主人公として書く小説っていう形も面白いんだけど俺が好きなのは普通に言っててコイツはヤバいからって言ってて、普通に説明してるのがヤバいんですよ
(山下)あーわかります、たぶん俺がなんかするときにちょっとまだやっぱり構えがあるって、そこを坂口さんはそれっていらねえんじゃね?って言ってると
(坂口)でやっぱ本気ですごそうじゃないですか、あの誰でしたっけ? オギタさんですよね。オギタの評伝とか書いてほしいんですよ
(山下)オギタの評伝は書けるもんな俺(笑い)
(坂口)書けるっしょ? それむっちゃ勇気もらえると思うんですよ
(山下)そうか、そうなんや
(坂口)だからなんか俺たちって自分の作品を発表して認められるとかって世界はとうに降りてると思うんですよね、どうでもいいっていうか、ただおもれー、むっちゃおもれーこの文章みたいな感じの本でいいから、俺は刊行点数増えていくんじゃないかなって今回の本で山下澄人が、だからそれがすっごい社会にとっていいんじゃないかって思っちゃうんですよね
(山下)なるほど
(坂口)ほら書きたくなってきたでしょ?
(山下)なってきたよ
(坂口)(笑い)それが一番ですよ、俺がやりたいことはそれですから、いやもうめっちゃ書きたくね?これヤバくない?っていうような会話やってたら俺もういつもギリシャの賢者かっていつも思っちゃうんすよ、それぐらいな気持ちで遊ぼうぜみたいな
(山下)いやすごい、おもしろい、マジでめっちゃおもしろい
だからその人がどういうことだったらどういう風に書きたくなるかって喚起さすのが、喚起が得意なんすよ俺
(山下)これだからさ、さっき千葉さんとやってたけどさ、呼んでくれたからしゃべるからさ、こういう話を、しかもタダでしょ、これ?
(坂口)うん、タダ
(山下)これさめっちゃすごいよね、
(坂口)そうっすね
(山下)と思うけど
(坂口)だけどやっぱり、これ金取るって俺らすごいってこと?って思っちゃうんですよ、タダやろ!って。タダで見せなさいってソクラテスは言うと思う
(山下)いやいやだからタダがいい
(坂口)そう、タダだからいい
(山下)タダだからいい
(坂口)タダだからずっとたぶんなんか俺がこれから始めるのかなって感じ、月一くらいで
(山下)うん
(坂口)山下さんに電話したり、千葉さんに連絡したり
(山下)俺めっちゃいいと思う、これやるんやったら今書いてるやつこんな話であんな話でってしゃべるもん(笑い)発表前に
(坂口)でもそれってむっちゃ逆に言うとみんなむっちゃ読みたくなるし、だって読みたくなる本をなんで前もって教えてくれないのって思っちゃう
(山下)ほんとそう思いますよ、やっぱり坂口さんがやっていることはすごい、いっぱいすごいことあるけど、タダやってことですよ
(坂口)(笑い)だってタダうれしいじゃんって
(山下)これなんか逆でしょ今世の中は、
(坂口)まあね
(山下)noteで金取ったり
(坂口)Twitterもお金取るらしいから
(山下)読みたかったら500円払ってくださいとか今普通でしよ? 俺なんかすごい勘違いしてる気がして。ラジオでタダで聞けたり、なんかでタダで読めたりするから広まるって
(坂口)俺の場合はめちゃくちゃだけど、そのあと前はnoteは全部タダだけど、この本は実は講座になってて、俺のマジックにかかって学生だと思った人は10万円払ってくださいって100人払ってくれたんで
(山下)すごいよね
(坂口)それはギャグでしょ? もうそれもうまぁまぁねそしたら本が3日で5,000部売れたんですよね
(山下)いやほんとにすごいと思う、国崩しやってるよね(笑い)
(坂口)しかも原価1,000円の本を1,000円で売ったから、そういうこともできるんすよ、だからなんだってできるし、ここまできたらそのニーチェって生まれなかったら読みたいんで恭平さんお願いしますって絶対言われんすよ
(山下)うん
(坂口)もちろんやりますよっつって、もちろんみんなから前借りですよみたいな、オレもタダでやってきたんだからリスクは背負いたくないから、もっと楽しいことやろうよっていうと乗ってくれるんでね、だからそれって面白くなかったら動かないだけなんで、面白いから動くから、しかもやっぱり作家って金入っててほしいんすよね俺(笑い) やっぱり、作家ってべつに贅沢興味ないじゃないですかなんにも、ただ朝から俺みたいに山下さんも起きてたけどやっぱもう書きたくて起きちゃうわけだから
(山下)うん
(坂口)それヤバいっすよ、バカですよ俺たち
(山下)いやバカですよね
(坂口)でもこの幸福を幸福と言わずになにを幸福と言うかと思うから
(山下)ほんとそう
(坂口)それってニーチェもカフカもそうだし、ベケットも一周回ってその幸福に気付いてるわけだから
(山下)うんうん
(坂口)なんかね、でもよかったですね、これからちょっとそのもう関係なくていいから連載とかの打ち合わせで、もうバンバン書けちゃうんだから
(山下)うん
(坂口)書いちゃってもらって
(山下)うん
(坂口)だから全部気になった本を読書にしない方がいいと思ってんすよ、山下さん
(山下)気になった本を? 読書?
(坂口)だから気になる本読んだら書きたくなるでしょ?
(山下)うん
(坂口)だから読みながら書く
(山下)うんうん
(坂口)もう全部それでいいんすよ
(山下)うんうんうん
(坂口)それでまあその名前が残ってたらその人読んでこういう本書きましたでいいけど
(山下)うん
(坂口)名前なんか書かなくて最後に参考文献さいご書いておけばいいだけだから
(山下)うん
(坂口)だってドゥルーズんとこ参考文献すら書いてないですからね
(山下)(笑い)
(坂口)だって俺がドゥルーズなんだから参考文献もないだろって小説ですからって
(山下)いらんよね
(坂口)そう。だからああそれでいけるんだと思って。だから少年の自伝とかも読みたいですよね、あいつはなんだったんだっていう、なんかヤバい少年が、しかもそいつ誰?みたいな、でも山下さんがよく知ってる子たちはいるわけじゃん?
(山下)うんうん
(坂口)だからなんかそういうのとかも
(山下)いやー、おもしろい
(坂口)人を見る眼があるんですから山下さん。受け止め方がすごいからね
(山下)いや、作家してよかったです
(坂口)ありがとうございました
(山下)また誘ってください
(坂口)またやりましょう、月一ぐらいで
(山下)月一ぐらいで
(坂口)そう、最近の進行みたいな
(山下)うんぜひ
(坂口)ぜひ、書くんすか今から? もう書きたいでしょ? 書きたい? 寝ます?
(山下)まあちょっと寝落ちするまで書こうかな
(坂口)あー、ちょっとやってください、書いた文章公開してほしいそのままnoteに
(山下)なるほどな
(坂口)(笑い)
(山下)(笑い)
(坂口)逆に言うと山下澄人の文章ってそのなんか単行本で読むより断片でバンバン送ってきてほしいんだけどなって思っちゃう
(山下)あーあー、なるほど
(坂口)そう、だから清とかも山下清とかも本になってないじゃないですか
(山下)なってないね
(坂口)だたノートに書いてある文章がヤバい
(山下)いや~そうだな
(坂口)だからあの人生相談の物量はよかったと思うんすよ
(山下)うん
(坂口)だってあれぶっちゃけ言うと質問なくていいですから
(山下)まあね
(坂口)うん、正直。べつに質問ないっすよね、どうやって書いてんですか?で終わりでいいですよ
(山下)あー
(坂口)でも書きあぐねたやつも兄やんの影響受けて書いてみたいと思ったから書いてみたでよさそうじゃないですか
(山下)うん
(坂口)でも書くことの覚悟にかんしてははかなりトップレベルに行っちゃってると思いますよ。今、だって俺ほとんど小説書く人で興味ある人ほとんどいないからな
(山下)坂口さん興味ある人誰よ?
(坂口)日本人で? 
(山下)うん
(坂口)古栗さんは好きだけど
(山下)あー
(坂口)でもまあ朝吹真理ちゃんもそうだし、でもうーんなんかほんとに同じところで地平でやってるってなると山下澄人と千葉さんぐらいなんじゃないですかね、本を持ってないから、今並べてるけど、あっ「イエスという男」読みました? 田川建三
(山下)読んだ、読んだ
(坂口)あれはちょっとヤバかったですね
(山下)面白かった
(坂口)ほとんどないっすけどね、最近はフーコーの「真理の勇気」ってまたこれ高いから買えないんすけど、それとか、でも山下澄人の日記は絶対面白いと思いますよ
(山下)うん
(坂口)日記は日記でやってほしい、べつに日記といいながらカフカの日記でいいんだから
(山下)うん
(坂口)そのときに思いついたやつだけ書くって、いやマジで失礼なことにほとんど日本人の本はないですね
(山下)うんうん
(坂口)あの「みみずくは黄昏に飛びたつ」っていう村上春樹と川上未映子のやつだけは目に入った
(山下)あー
(坂口)これはでもけっこうおもろいっす、こういう文章を俺も誰かインタビューしてくんないかなって思ったぐらいの(笑い)
(山下)僕もさっき千葉さんとのときに「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」出てきたけどあれは読んで面白いと思って、
(坂口)うん、あんな、あれぐらいのやつ書いてほしいですよ
(山下)なるほどなあ、がんばろう
(坂口)うん、なんかそういうのが見えるけどな。いやボラーニョの「2666」とか
(山下)うん
(坂口)あれぐらいの物量で書いたらよさそうだな
(山下)うんうん
(坂口)うん、あと旅行したら面白いと思いますよ山下さん
(山下)旅行ね
(坂口)俺今度イスタンブール行くけど、旅行行ったらおもしろい
(山下)うん
(坂口)なんかでも俺ん中でははらやっぱりあれじゃないですか、なんだっけ、忘れちゃったど名前、あれ?なんだっけ、いやどっちかというとやっぱりあの人、なんだっけ、アメリカのもとになったやつ、なんだっけ「クリスマスキャロル」書いた人誰でしたっけ
(山下)あ、ディケンズ?
(坂口)うん、ディケンズとか白鯨とかなんじゃないですか?
(山下)あー
(坂口)どっちかというと
(山下)なるほどな
(坂口)うん、あと徒然とか方丈記とか面白そうっすけどね、その口語訳。どんどんあるじゃないですか、読む本読む本イメージできそうだし
(山下)たしかになあ、そうやねんな、読む本やんな、そうか
(坂口)そう、自分が興味がある本読んだらもう書きたくてたまらなくて書きましたってバカでそのままでいいですよ、どうせ書いてるのヤバいからって感じでいいと思うんすよね
(山下)そうだからほんまに後出しするわけじゃないんだけど今書いてるやつって本を読みながら書いてるんで、それは今俺「アンネの日記」とかニーチェとかまあそれこそ「モロイ」とかもでてくんねんけど、
(坂口)うん
(山下)そういう話では全然ないんやけど、読みながら考えていっていろんなことが起きるみたいな話なんやけど
(坂口)へー
(山下)だから長いな引用みたいなところが出てきたり
(坂口)うんうんうん
(山下)読んで考えたことだったり
(坂口)なるほどまあまあでも兄やんの小説論の変奏でもあるし
(山下)まあまあそうですね、うん
(坂口)でもそこに関して言うと俺が思うには、その、まあこれは兄やんは聞かないでほしいけど、兄やんはたぶんそれ出てこないんすよ、そのイメージは。だから読むんすよ。だけど山下澄人はイメージが出てくるんで逆に言うと横に右に本を置いて、本を読んだ自分なんか登場させないで、本読んでたらどんどんイメージ出てくるんだからイメージだけ書いてって感じがします
(山下)うんうんうん、分かります
(坂口)(笑い)兄やんイメージが出てこないって言うのも、でもそれなのにあれをやってること自体はあれはとんでもないですね、方法論だけど、でもどんどん出てくるから、なんか、うーん、それを、しかもやっぱり少年、なんか杉浦茂じゃないけどああいうマンガのイメージとかも強いじゃないですか、山下さんって
(山下)うん
(坂口)だから超長いマンガのなんか少年が成長していくみたいなビギニングスロマンみたいな長篇もめちゃくちゃ読みたいけどな
(山下)うん
(坂口)でもその白鯨、白鯨はまだ書いてないんでしょ?
(山下)書いてない
(坂口)白……、いいんじゃないですか海に向かっていく感じで
(山下)(笑い)
(坂口)白鯨、白鯨読みたいっすね
(山下)なるほどな
(坂口)うん、わくわくしそう、あのわくわくするノリだけもらえば全然いけそうな感じじゃないですか、メンバー全部出せるし
(山下)まったくそう
(坂口)ね、もうなにを取るか分からんけど金がないからすでに乗っただけでいいですよ話は
(山下)ほんとだな
(坂口)いいっすね、やっぱでもこれってけっきょくいろいろ発想が浮かぶから、しかもこれって今までは隠してたんですよねみんな作家たちはね
(山下)いやそう思います
(坂口)そう
(山下)で、たぶんその風穴を坂口くんは開けてるから
(坂口)うーん、だってそんな
(山下)今回急に突如、千葉さんとはこの前トークしてたのは聞いたけど
(坂口)うん
(山下)なんていうかな、ここの、ここの動きはすごいおもしろい
(坂口)だってそれさこんなに幸せなことになんで自分たちだけでなんか受け持つの?みたいな、だから嫌いなんですよ芸術家だけで集まった会話みたいなのが
(山下)あー
(坂口)(笑い)こんなおもしろいんだから、なんか、もじもじして、わたしは本なんか書いてないんですけどみたいな言ってるやつとか、かんけーねえから来いよってなるじゃないですか
(山下)あー
(坂口)だからそういう、こういうのが一番クリエイティブだし、作品で書きたいっていう人いっぱい出ると思うよ今日の読んで、ああそうか好きな本読んで書けばいいのか
(山下)いやマジで
(坂口)気付くだけでヤバいから
(山下)いやマジで
(坂口)でもそんな人にも「けものになること」読んでほしいですもんね(笑い)わけわかんねえけど、イメージだけは出てくっから、いや~たのしかったすっよこんときは
(山下)楽しい
(坂口)1日大体50枚5時間で書いて
(山下)あー
(坂口)でそっからあとは書きたいけどちょっと一週間で書き上げるために、休ませるためにむっちゃ必死努力したし
(山下)いやー、それはすごいな
(坂口)いやぁ、最高の体験でしたねこれは、どんどん出てくるし、書いたの翌日ね、なんにもまあ俺と山下さんそうだけどなんにも覚えてないし
(山下)うん
(坂口)書いたの覚えてないって、あのほぼできないですみんな
(山下)あー
(坂口)いやそれができてるからうちらはたぶんある程度自分から離れて書けることができてるんじゃないかなと思う
(山下)あーなるほど
(坂口)そう、だからもう、もうある意味こっちの世界来てほしいですよね、何千枚書く世界に、もう本に収まんなくていいと思う、収まれないんでこれやりますって、noteでだって、お前こんなのにみんなお前ちゃんと、この人が作家と思えたなら10万払いなさいって言ってあげるよ(笑い) もうそっちの方がおもしろい、だってもうそんな感じだったもんね昔の志村けんとか、この人がおるなら、こんな人がおるなら頑張るよみたいな、なんかそういうね規格外の世界が、ブルースリーもそうなんでしょうけど
(山下)うんうん
(坂口)それでいきましょうか、また電話しますよ
(山下)ありがとうございました、楽しかった
(坂口)いや~楽しかったです、ありがとうございます
(山下)ありがとうございます
(坂口)じゃあ仕事に戻りましょうか
(山下)はい
(坂口)どうも~

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