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タイギゴ (7)

※インスタにおなじ内容を挙げた、長い文章になったからnoteにも挙げることにした。



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保坂和志『読書実録』河出書房新社
pp.112-114
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 とくに、「むずかしいけど大事っぽい」とメモったところは、手書きで筆写して、パソコンにも書いて、小説にも書いたけど、いまだに分かんない。なにをもって、天寿をまっとうしたことになるのか、分かんない。
(112ページ、最後の行、「その話は私は天敵と獲物は、……」からその話は始まります。)
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「そんなむずかしく考えんなよぉ」
「あー、いい、いい。そーゆーの要らないから」
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 どうしたら人生をまっとうしたことになるのかなんてもっと分からないけど、小説の終わり方と人生の終わり方は似てる。
 なんか、大きな事を言おうとしてる。
 これは俺が言ってるんじゃありません。
 作り話です。
 北大路錦之介という人がむかし言ってました。それを便所の窓から覗き込んでました。
 以下、北大路さんの言葉。↓
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 人生の終わりなんて本人の了承もなく突然くるのに、小説の終わりは作者が書くもんだと思ってる、作者のコントロール下にあると思ってる、起承転結の整った小説を作者は書こうとする、読者は読もうとする。でも人生に起承転結なんかない。起承転結があるなら困らない。無いから困ってる。どんなにリアリティーのある小説だと言われても、起承転結があって、オチがあって、「めでたしめでたし」で終わる小説は、ぜんぜんリアリティーがない。
 だから俺は小説を読まない。人生はそんな理路整然としてるものじゃないから。
 オチがあって、感動の余韻が残るようなものはつまらない、だから読まない。
 危機管理能力、だと。危機管理能力。危機を管理する能力。人間は危機まで管理できると思い込んどるわけだ」
 ぼくは思わず口から
「なるほどー」
 と言いました。
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 そうか。北大路さんは長いあいだ小説がつまらなかった。それはけっこう早い年齢で、物語がいらなくなっちゃったからかもしれない。

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