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タイギゴ (4) 〜ガープの世界〜

とってもいい。
皮肉が効いてていい、いや皮肉が効いてるからいいんじゃなくて、純粋に面白いでいいのに、そこに理由なんかない。いいと思ったからいい。

「そこはわかってもらうのが一番難しいところだよねえ。」
 この声は『馬』や『小銃』が諷刺として読まれ、そこにある面白さが素通りされつづけた小島信夫という小説家の何十年にわたる気持ちが反響していた。(保坂和志『読書実録』河出書房新社、p.44)

   ◯

そして人間というのははまぐりと較べてそれほど神秘的でも、また魅力のあるものでもないことを発見しつつあった。(p.14)

その自伝のなかでジェニーは「その可哀そうな女は、自分がどういう感情を抱いたらいいのか、人にいってもらわないと分からないのだった」と書いている。
「あんな愚かな女には会ったことがないと母は言っていた。その女はウェルズリー大学の出身だった」とガープは書いている。(p.23)

 彼女は考えたーーこの薄汚れた世界ではだれしもがだれかの奥さんかだれかの情婦になっている、あるいはそのどちらかになろうとして躍起になっている。そのどちらにもならないでいると、皆が寄ってたかって、どこかおかしいのじゃないかといい立てる。わたしにはどこもおかしいところなんかありゃしない。(p.24)

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