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タイギゴ (5)

バイトを終え、夜。
白岳のソーダ割り、三杯。
現在21時。まだ飲む。
部屋に置いたワインを開ける、まだ開けてない、白岳が残ってる、

小説を読みたい、ガープの世界、美濃、キリンがくる、キリンを漢字で書けないから「キリン」と書いた、これは手書きだ、キリンがくる、なんでキリンがくるの話をし始めたのか、読み返す、思い出した、なんで「読み返した」動作の方が「思い出した」動作より過去なのに、「読み返す」と現在形で書いた? 読み返した、思い出す、読み返す、思い出す、読み返す、思い出した、キリンがくる、キリンがきた、まだキリンはきてない、キリンがくるはまだキリンはきてない、まもなくくる、

毎週、美濃という言葉がキリンがくるに出る、そのたびに私は嬉しくなる、美濃は面白い小説です、面白くない人の方がほとんどかもしれない、それはわからない、まわりに美濃を読んでる人がいない、いなくていい、小説は読まない方が普通、退屈だから、大人になるとみんな退屈だから読まない、なのに出版不況や活字離れをまるで受け手が悪いように語る、退屈じゃない小説を書いてから言いやがれ、美濃はおもしろいです、私にとっては面白い、私は私のことをいつも「私」とは呼ばない、「俺」もしくは「僕」と呼ぶ、「私」と呼んでるときは小説を書き出したとき、俺(今、この文章を書いている俺、生身の肉体のある俺、白岳がなくなったのでワインを飲み始めた俺、)

( )のなかのことを書きてるうちに何を書こうとしてたのか忘れた、「忘れる」ではない、過去形、「忘れた」、俺のことを「私」と呼び始めたらそれは小説になった証、私は嬉しくなる、俺は? 嬉しくないの? 嬉しいよ。ほな小説ちゃうやん、関西人は「ほな」って言う? よく使う? 今も使う? ほなさいなら、「じゃあ」ってどこ弁?

人の日記を盗み読む、これは「私」の日記です、「のび太さんの、エッチー!」、あいつらは小学何年生? 私は23になったのに、あいつらはいつまで経っても半袖半ズボン、ジャイアンへの仕返しのために、自分の未来を知ってしまった不幸、「あなたは長生きしたいですか?」「よくわかりません、本当は、長生きなんかしなくていいって思いたいけど、いつだったか再現VTRで見た、娘の成人式を見るまでは死ねない、と言っていた人のことを思い出しました」「でもあなたは、そうは言っても、あなたはその人たちにはなれないのですよ? 娘は赤の他人です、なのに、長生きしたくないと言うのはその人に申し訳ないと?」

人の生き死にについては私にはわからない、俺にもわからない、分からないなら書かない、「今回、レズビアンの男子高校生役をやることになりました、ナニガシです……」、分からないならやらない、

美濃はスケべ心で読んでる、

バント帰り、のスギノール書店に寄って、「三田文学」という文芸誌に掲載されている山下澄人の、
「外出するな、驕りたかぶるな」
を立ち読みした、断片的に、ざっ、ざっ、ざっ、っと流し読みしただけだけど、面白かった、この小説(今、私が書いてる小説)は、完全に、この小説に影響されてる、下手な模倣、こういう書き方をするのにはこういう書き方をする正当性がないといけない、正当性、正当性ってなんだ? それは誰が決める?

もうだれてきた、飽きてきた、飽きてきたのにまだ書いてる、

 黙れないなら、語るしかない、

ベケットの小説のどっかに書いてあった、気がする、ないかもしれない、覚えてない、あったっけ? あったと思います、あったことにしておきましょう、
マネしたくなったらすぐマネる、俺にオリジナリティーなんかない、むしろオリジナリティーがあると思ってるやつら胡散臭い、独創的と普遍的はおそらく同じ意味の言葉、みんなマネごと、ボブディランのように書こう!
だからすぐ打ち明ける、これは山下澄人の「外出するな、驕りたかぶるな」のマネです、気になった方は書店へGO、あぁ、下手な模倣だと分かるはずです、

気にしてない、自分が書いてて楽しければそれでいい、他人の評価は気にしてない、自分の評価だけ、それでいい、アルコールも入ってるし、なにも考えてない、手が動くままに書いてる、これは手書きです、

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