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朝の仕事、8時からアオの送り迎えなのでそれまでの、喋らない仕事ラジオ(山下澄人ゲスト回)文字起こし

(山下)これつながってますか?
(坂口)つながってますよ、おはようございます、まだ寝てないでしょ?
(山下)今また寝ようかなと思って見たら、やってたから
(坂口)(笑い)
(山下)なにやっているのかなと思って
(坂口)いやいやいまから俺明日MONKEYの小説、短篇書かなきゃいけないから
(山下)ほんと
(坂口)今から、公開で短篇(笑い)
(山下)公開で?
(坂口)もう公開でやれちゃうんすよね
(山下)なんかぜんぶ公開してんね
(坂口)そうですね、でも今回けっこう山下さんたちがやってくれた以降の感じで、なんかもう、もうだらだらとやる方やってみようと思って
(山下)(笑い)
(坂口)昨日からヤバいっすよ、48時間中19時間スペースやってました
(山下)もうめっちゃいいじゃないですか
(坂口)そうそうなんか、めっちゃ、むっちゃ合ってますよね俺には
(山下)で今から小説書くんすか?
(坂口)(笑い)ちょっと小説書こうかなと思ってて
(山下)斬新だな
(坂口)(笑い)
(山下)(笑い)
(坂口)そうそうなんか、とりあえず今文章が、「昔々のことって今言っているけど昔ってなんだっけ。昔って今見ているこの釣り人たちは生きているんだろうか。釣り人たちがいた。砂浜にいた。いや砂浜ではなく岩場にいた。つまり海が動いていた。海は昔から動いていた。海の地面はどこにあるんだろう。海は雲みたいに浮かんでいるんだろうか。遠くを渡り鳥が、となりの子との距離を測りながら慎重に飛んでいる。でも目は笑っていた。あれはきっと遊んでいる。あれは遊んでいるときに流れるサラサラとした汗だ。その汗は静かに階段を降りると、渡り鳥のくちばしの真ん中あたりで、もうどうなってもいいやと半ば諦めるような顔をして、両手を一斉に離した。汗は鳥の中ですごした長い年月を思い出していた。」っていう冒頭があるんでなんかこれを手がかりに書こうと思って
(山下)ああ、なるほどね、なるほど
(坂口)(笑い)おもしろいっすね、小説書くの幸せっすよね
(山下)うん。でもさ今俺つらつらって聞いたやつを聞きながら聞いてたけど
(坂口)はい
(山下)なんだっけ、釣りをしている人がいる?
(坂口)はい
(山下)釣りをしてる人がいるじゃんか
(坂口)はい
(山下)それがまあべつに男の人でも女の人でも子供でも爺さんでも婆さんでもええんやけど
(坂口)うん
(山下)なんていうのかな、なんか、ちょっとなんかもったいない感じがちょっとした、あっと、そこそれけっこうその段階でなんか重要な感じがして
(坂口)ああ、ああ
(山下)その人はえっと、ちょっといくつの人なのかとか俺はまったく分からへんけど、たぶん坂口さんの感覚やったら分かる気がすんねんけど、あの全部の時間
(坂口)そうたしかにこの釣り人に落ちて、汗が落ちていくんすけど、まあまあほんとはこの釣り人の話書きたかったんすけど、釣り人から(笑い)いきなり鳥がかいてる汗がうまれたところの話になっちゃって今、
(山下)いやだから、なんか
(坂口)いつか降りてくんのかな?
(山下)けっきょく最初っからそういう描写がピュッピュッて入ってるってことは、あのなんていうのかな、もうおそろしいところにどんどん入っていける状態はできてる感じがして
(坂口)あー
(山下)あの、なんていうかな
(坂口)ヤバいっすね、こんな、こんなことやったことないもんね、小説書きながら小説家に小説書いてる内容をさ、しゃべりながら(笑い)
(山下)(笑い)おもしろいっすね
(坂口)冒頭の冒頭なんですよ
(山下)冒頭で決まるからね
(坂口)そう、しかも仮のタイトルが「腹の中でえら呼吸」っていう
(山下)いいじゃないですか
(坂口)なんか出てきた言葉で、たぶんそういう、人間なんだけどなんか、なんか魚みたいに、なんやお前ら、って言って泳ぎまくってる奴のイメージがあるんすよ、だから息できんはずやんって感じだけど、だから腹ん中でガンガンえら呼吸できるんで大丈夫っす、っていう
(山下)だからあれでしょ? 人間がなにから発生してきたのかしらんけど、その、魚になって出てきてって、なんかそういうことの時間の全部が、なんか入ってくる感じでしょ?
(坂口)あー
(山下)それすごいおもしろいと思う
(坂口)あ、ほんとですか? なんかちょうど今MONKEYで、えっと柴田さんがすごい、柴田さんだけなんすよ俺に小説を書けって言ってくれてるの、それで、まあ別に書けって言われなくても一人でずっと書き続けるんだけど、でも他者としては柴田さんはほんとに書けって言ってくれて、だから僕毎号今MONKEYでは6号目かな、だから毎号短篇を載させてもらっていて、で一冊の短篇集みたいななのを作ろうってのと、あと毎回俺が書いたそのときには全部英訳もできてんすよ、
(山下)あーすごい
(坂口)そう、サムさんっていうすごい翻訳者が、すごいらしいんすよ、外人が読んだらびっくりするらしくて、日本語がそのままやっぱ英語になってる英語らしいんすよ、そうだから山下さんもそのサムさんにやってもらったらいいかも、だって柴田さんとやってましたよね?
(山下)柴田さんと一回対談したときに、俺すごいびっくりして、柴田さん俺の小説読んでるって思ってなかったから、
(坂口)いやむっちゃ好きですよ
(山下)だから柴田さん俺の小説とか読んでくれるんやと思って、でまあそのときはけっこう盛りあがって話して、だからあの柴田さんが坂口くんの小説ってすごい分かるし、あの、なんかちょっと潜っていってくださいよそれ(笑い)
(坂口)そうですね、そうそう、今度英訳は「現実宿り」の一番わけ分かんない断章のところを英訳するって言い出してヤバいっすねみたいな、嬉しいっすよとかって
(山下)すごい
(坂口)だからもう夢としては「現実宿り」を英訳本でも出したいなと思って
(山下)いいっすね、やった方がいいですよ
(坂口)そう、なんかね最近エージェント決まってなんか以外とあり得そうだなと思って。そう、山下さんって英訳してないでしょ?
(山下)全然してないっすよ僕なんか
(坂口)あれできると思うんだけど全然、ボイスがちゃんとあるから
(山下)で、その柴田さんにその、むしろ簡単にできるのがなんかちょっとむずかしいなとか言ってた
(坂口)あーもちろんね、だからそこは、ほんとに日本語の感覚を分かってるネイティブのアメリカ人とかじゃないとダメなんだ
(山下)そうだね
(坂口)でもサムさんはけっこうすごいかもそこらへんは、一応ねその山下さんの場合、俺の場合はボイスにあんまりこうなんていうの、ボイス自体はすごい、やっぱり俺海外文学からしか影響受けてないので、だから全部翻訳できやすいんだろうなとは思う、
(山下)あ~、なるほど
(坂口)山下さんはやっぱボイス自体にまあそれこそ関西弁もあるしね、分かりやすく言えば、なんかそういう、ボイス自体に色があるから、そこらへんをどうやるかなんでしょうね
(山下)そう、俺はあんまり英語のことは分からへんけど、俺の他言語に置き換えるってどうなんのかなって、できんのかなと思って
(坂口)でもそれこそベケットみたいに山下さんが英語を勉強して、英語でほとんどもうこれ大丈夫?って原稿を書いてみるとか
(山下)そうそう、いやマジで、それは一回よぎったことがあって
(坂口)ね、それはおもしろいかもしれない
(山下)え、でさっき書いてたやつをMONKEY?
(坂口)今から、そう、今から一日で30枚書こうかなと思って
(山下)いいじゃないですか
(坂口)いけるかな
(山下)あの太古の話と繋げてよ(笑い)
(坂口)うん、なんか全部そういう話かなっつって、でなんか俺の頭の中にはやっぱキリストみたいな奴がいるんで、そいつなんすよね、そいつがなんか、なんかそういう、なんかそういう真っ直ぐな人間っていうか、まあそれは自分なのかもしれないけど、なんかそいつがなんかいるんで、そいつなんなのかなとか思ってんすよね。で今回のテーマが「群島」って短篇集にしようと思ってて、島がいっぱいあって、なんかその、俺鬱のときいっつも海の上にいるんすよ、海とまったく関係がない人生だったのに、で実際に先祖たどると海人だったんすよね、だからなんかそのなんか人たちが出てきたらいいなみたいな感じ、それが今度イスタンブール行くんだけど、イスタンブールってまさにそういう場所だったんじゃないかなと思ってて、アジアとかヨーロッパとかの人たちが古代ギリシャとかのもとの、すごい土着の神様たちがいっぱいいたとこらしいんすよ
(山下)そうだね
(坂口)もうだからそこに海峡越えて船とかが行き来してたとか思うとなんかわくわくしてね、そこらへんの「ゲド戦記」みたいなやつ書きたいんすけどね
(山下)でもなんかそういう呼ばれ方は正しいよね
(坂口)うん、だからなんかまあ俺の中ではほんとに子孫っていうかね、自分の後に3世代ぐらいの人たちってたぶん俺を探ってくれると思うんすよね、身近な人はやっぱり、ね、パパが書いたものかぁみたいに思うと思うんだけど、でもほんとに、なんかそういう人たちに、なんていうか、ただのそのね、先祖からの代々の正しい情報っていうのは正しいと思ってないから俺、なんか俺が今感じてる先祖と子孫へのこの道みたいなのを書いたら、でもそうすっとそれ全部海の道なんすよね、昔ってスターナビゲーションっていってそのいわゆる星を見て、ね、その旅をしてたから、その、星の見方とかがあって、まだ星のコンパスですよね、コンパスにして旅してたみたいで、それらをとりまとめてたのが全部歌らしいんすよ、歌を、歌が海図になってて、地図、だから歌を歌うことで、たぶんその、その人の精神状態で歌って変わるから、でもそれって海と船がリンクしてて
(山下)星とね
(坂口)うん、たぶんこういうときとこの星の状態とこの天気のときのこの歌で、うわーもしかしたらこの言葉は、そのすこし南へ行けってことなんじゃないの?とかさ、なんかそういうイメージがあるんだよね
(山下)おもしろいな
(坂口)そう、それを具体的にするとなんなのかは俺は全然しらないんだけど、石川直樹はそれを学びに行ってて、だからその石川直樹って冒険家と写真家をやってるやつで、
(山下)あれ昔、植村直己さんがそれ習ってたんだよね
(坂口)あー、そうなんだ
(山下)北極行くときに、やっぱ方角が分からへんから、もう星を見るしかないから、だからそれを習って行ったらしい
(坂口)うん、なるほど、でなんか俺のイメージではね、俺と山下さんってその、なんにも別に技術はないのになぜか船に乗ってる係なんですよ
(山下)(笑い)
(坂口)そう、だから植村直己さんとか石川直樹とかはたぶん冒険家ってか技術を持ってるからパドリングとか持ってんすけど俺らパドリングしないし全然、ぼーっとしてて、俺はたぶんすごい言語がたぶん長けてるから、いろんな国に行ったら絶対にいい女といい飯と、でなんかちょっといい感じの裏口ルートがあって絶対に通れるみたいな役目で、で山下さんはもうわけ分かんないけど乗っけといたら大丈夫な気がする
(山下)(笑い)
(坂口)(笑い)能力は計り知れないけどなんの能力か誰も分かんないからただ置いてるみたいなイメージ、俺ん中で
(山下)(笑い)
(坂口)いいっすね、最近書いてんすか?
(山下)書いてるよ、もう毎日書いてるしかしてない
(坂口)あほんと? すごいね
(山下)こんなに、まあけっこう10年ぐらいやってきて、
(坂口)俺今ぶっちゃけね、文芸誌やりたいんすよ
(山下)え、文芸誌に書きたいの?
(坂口)いや文芸誌を俺が作りたい
(山下)あ、作ってよ
(坂口)うん「現実」ってタイトルまではできてんすけど
(山下)それはもう作ってほしい
(坂口)(笑い)そう俺らが知ってるそれぞれの現実が載ってるような「現実」っていう
(山下)俺さ、これ別に言ってええんかな、俺あの、某国営放送の、
(坂口)うん
(山下)なんていうのかな、戦争中の、えっとN……、あ、国営放送が、要するに荷担したわけでしょ?やつらは、
(坂口)うん、そうね
(山下)戦争中、その荷担した歴史をドラマにしようっていう、
(坂口)うん
(山下)なかなか野心的な企画で、で俺最初シナリオ書いてくれって言われて、言われたんやけど、その俺ちょっと今ヒマがないから、ちょっと適当なやつ誰かシナリオ書いてもらって、でそれ僕直しますっつって
(坂口)うんうん
(山下)でまあできたドラマがあって、それが
(坂口)それ放映されたの?
(山下)放映されるの、このもうすぐ
(坂口)マジで? ヤバいじゃないっすか
(山下)で、俺は台本読んだだけやけど、まあまあおもしろくって、
(坂口)へー
(山下)でもなんていうかな、やっぱり、えっと、消されるんだよね
(坂口)消される。だからもうNHKは俺とは付き合わない
(山下)やっぱ消されんねん、で、
(坂口)俺(笑い)俺がね一回出たことあんすよ30分しっかり話す、そんときに、台本書いたら俺出ないって言ったの
(山下)うん
(坂口)だけど台本書かないと彼ら絶対ありえないから、俺、で、俺は一つ、俺の姿を出さないでいい?って言って、セーター、俺が着てるセーターを、セーターだけにして、手と首をグリーンバックにして、俺だからモジモジくんでセーター着てやってたんすけど、そしたらその消せるから、そういうやつにしゃべらせて、その代わり台本なしでやりたいってギリギリやって、そんときは消されなかった、だから全部、なかなかむずかしい、もう人数が関わってたら
(山下)むずかしい
(坂口)消される、まあでもそれでもね、山下さんがやったってのはデカいけど
(山下)だからまあいずれにしてもなんか、まあその既成の文芸誌にせよ、出版社、大きな出版社とかになってくると、俺はべつに直になんか言われたことはないけどまだ、でも、でもやっぱりそういうものが働く
(坂口)結果ね、山下のなんかもう犬歯のさ、犬の歯の犬歯の先をやっぱり、それはまずいからそこだけはちゃんと、なんか、マウスピース(笑い)
(山下)そう、だからこう、なんていうかな、ちょっと、翼をさ、なんかこう、抑えられてる感が、やっぱどうしたってあるから、それが羽ばたけるような(笑い)雑誌ができるとうれしいな
(坂口)ね、そう、俺初稿だけでやりたいんすよ
(山下)あ~、いいっすね
(坂口)イメージは、イメージはやっぱできるだけ初稿でやりたいっていうか、だからもうほんとに断章っていうかね、そして断章で物語つながっていなくてよくて、なんのストーリーもいりませんって。ただ、やっぱり、できるだけ一番くるしいときに書いたもの。
(山下)うん
(坂口)うん、できるだけ、所謂これを読む読者もたぶんそういう人たちだから
(山下)うんうん
(坂口)そういう人たちとかなり近しいその精神状態のときにあの、意地でも書いたやつだけくださいって言ってね
(山下)あー、おもしろいな
(坂口)まあなんかね、そう、それで俺と千葉さんと山下さんとね、どうかな、真理ちゃんも、朝吹真理ちゃん
(山下)あー、いいじゃん
(坂口)お願いしたらね、そうそう
(山下)あいつ書くん遅いけど
(坂口)え? なんすか?
(山下)朝吹書くん遅いけど、
(坂口)あー、でもあの子ってたぶん書いてんすよ、だけどやっぱり断章になっちゃってるから
(山下)そっか
(坂口)だけどその断章はあるんすよ、絶対に、だから毎日書いてるはずだから
(山下)それでいいってことだよね
(坂口)そう、それをくれって。だから何月何日から何月何日までって締め切りじゃなくて、俺の場合は何月何日から何月何日までに書いたものだけくれって言いたいんすよ、
(山下)うん
(坂口)だから締め切りってイメージはなくて、一枚でもいいし、ギャラは同じ額にしますって
(山下)めっちゃいい
(坂口)そう、枚数であんまり原稿料割りたくないから俺、なんかそんな感じでねやったら、絵描きたい人は絵も挿絵も描いてくださいで
(山下)俺それやりますよ
(坂口)ほんとですか、やりたいんすよ、文芸誌、絶対おもしろいと思うんだけどな。そしたら若い人たちも、なんか送ってもらって、受賞とかじゃなくて送ってもらっておもろかったら載っけますっていう
(山下)そう、だからなんか、今坂口さんがちょっとなんていうのかな、けっこうこのスペースがキッカケではないけど、その前から坂口さんは動きつづけてるけど、なんか、でもこのちょっとスペース、なんか常軌を逸してるじゃん、
(坂口)うん
(山下)この常軌を逸した動きって、なにかになる、どこかに行くよねこれ
(坂口)うん、そうそう。もう俺、もうね直接手をさしのべるっていうか手を伸ばすってイメージなんですよ今回ね
(山下)あー
(坂口)マジでやりたいっていうか、だからそれって、なんかやっぱり今までってなにかこう芸術家と読者とか分かれちゃってるし、なんかこう、それを評価する人とか、それを出す出版社とか、なんかそういうのばっかりだし
(山下)分業化してね
(坂口)うん、だからそういうのがこうなんかね、ごった煮っていうかなんていうか、親戚の集まりみたいな状態に、なんかよくわかんないけどじゃあ俺こっち掃除してきますみたいな
(山下)(笑い)
(坂口)やっぱみんなが突然役目をもたされて餅つきやるときに、ああじゃあちょっと俺餅米ふかす役やりまーすみたいな
(山下)いや、めっちゃいいと思う
(坂口)そうね、で、ばあちゃんとかがやっぱり餅を丸めんのうめぇって、一見無能そうな人がさ、やっぱ能力を発揮するとかが一番好きなんだよね。だってこうやってやってきたからこうなってるのにとか思うのにね、いつの間にか芸術家は芸術家になっちゃうでしょ?
(山下)そうね
(坂口)あれが俺キライなんすよね
(山下)でもたぶんそれも、仕組みがそうさせてしまっていくっていうか、
(坂口)そうそうそう、その人がそうしたいわけではないからね
(山下)そうそう
(坂口)でもやっぱりでもその人たちはチョイスしてるから
(山下)まあそう、結果的にね
(坂口)でも山下澄人は芥川賞獲ってよかったと俺は常に思ってる。獲らなかったら逆に山下さんはなんかまた違う道だったけどやっぱ獲ったことによっていいこともいっぱいあったから、全然俺はあれはいいことと思ってんすよもちろん、だけどまあ、それだけにしては山下澄人はもったいないと常に思ってるから
(山下)うんうん
(坂口)なんかそれで小説、小説、まあ小説家なんだけど、本物の。だけどやっぱり死後発見される人だからほんとは
(山下)(笑い)
(坂口)(笑い)俺いっつも言われてたんすよ、俺も、お前って死後発掘される奴なんだけど生前活発だね~って
(山下)(笑い)
(坂口)そうそうそう、
(山下)分かるわ
(坂口)そう、だからね、そう、山下さん的にはベケットなんすね、俺は山下さんはカフカっぽいんだけど
(山下)いやまあ、うーん、そうね、どうなんかな
(坂口)でもおもしろい、俺はカフカの方が読むと入ってくるんすよ
(山下)うんうん
(坂口)でも俺はどっちかっていうとベケットなんすよたぶん、
(山下)うんうん
(坂口)っていうイメージ、山下さんはでもベケットがたぶんそのある意味対になるのかもね、対極にいるのがベケットなのかもある意味、でもカフカだなと思うよ、俺はカフカ全集ほんとは山下さんにあげたいんだけど、まあこの本棚も俺が死んだあとたぶん一応それなりに次のやついるしなあとか思って、でもほしいなら言ってくださいね
(山下)(笑い)
(坂口)いつでも送るから、でも持ってんでしょ?
(山下)何冊か持ってる、大丈夫、ありがとう
(坂口)俺が思うにエレナの手紙とかあっち側がヤバいと思うんすよ、
(山下)あー
(坂口)なんか手紙系が山下さんに入ってきそうな気がしてて
(山下)なるほど
(坂口)だから小説としてなってるんじゃなくて、あの後半は全部エレナへの手紙とかなんすよ、家族への手紙とか、なんかああいうのがけっこう、オットラと家族への手紙が第12巻とか、そう、なんかそういうのがなんかけっこう
(山下)だからあの人ほんとに境目ないよね、手紙、小説、なにって
(坂口)それはないからね、だからそこらへんの、その山下澄人の境目のなさっていうのは俺は本気でなんかちゃんと、なん、もう俺がマジちょっと金持ちだったら俺もうわけ分かんない版元つくってます、ほんとに
(山下)(笑い)
(坂口)山下さんは何月から何月に書いたやつ全部持ってきてって出すからって、もう売れるとか売れないとかじゃなくて出すからっつって
(山下)理想的やな俺それ
(坂口)そうそうそれでいいんすよ山下さんは、っていうか俺が売るからって思うもんしかもそれ、そんなやついないっすよ今版元で、なにやってもいいっすよ俺が売るからって、俺が一番売ってますもんだって、どんな版元でも俺営業部にまず行くんすよ
(山下)へ~
(坂口)そしたら営業部どう考えても俺のこと上司と思ってて
(山下)(笑い)
(坂口)恭平さんの営業のしかた半端ないですって、いやもうこれで行くから、これで一発重版決めるからって言って、行くぞっつって、そうそう、だからそういう意味ではまあ、でもまあそれこそまた保坂兄やんの話するけど保坂兄やんは上手なんすよね、ちゃんとやっぱり重版してるから
(山下)そうね
(坂口)そう、あの男はやっぱりね、あそこ、あれを書いてやっぱ重版できるやっぱり状況をつくってるって意味では、そう。いやいやおもしろいっすね、ちょっとパって適当に開いたけど、ちょっとあのー、なんかフェリーチェの手紙でも読みますか
(山下)そこにあんの?
(坂口)ありますあります。えーっと、「少なくとも三週間、手紙やたくさんのはがきに対して便りも返事もありません。僕はかなり不安です。内面的にはそのこととは逆に、高い平原のテラスに座り、僕の前方には広い谷、畑、草地、川、森のある丘が見えるんです。日当たりのいい涼しい日、いったいあなたはどこにいるんですか。どこにいようとも、真心からのあいさつを。」(笑い)カフカ最高でしょこれ、最高だよねこれ、なんなん最高だよね、これを書いてるときの時間があるってのがゾクゾクするんすよね
(山下)いや~ほんとそうね
(坂口)ヤバいっすね、俺と山下さんでなんかもうただただ好きな本の適当に、ちょっと断片を読んでもうヤバいよねって言い合うだけでも
(山下)あ~それたのしい
(坂口)うん
(山下)俺今1個ね、今ちょっとたぶん近くにあったと思うんだけど、ロシアの、これなんつうんだ、チェヴェングールっていう
(坂口)(笑い)全然知らん
(山下)知らんでしょ? だけどすごいぶ厚い本で、8㎝ぐらいあるんやけど、おもしろいところは、最初の2~3ページやねん(笑い)
(坂口)へー
(山下)そのうしろは蛇足やねん、それでも冒頭がすごいおもしろくって
(坂口)はい
(山下)「荒びれた森との境界が、地方の古い街のそばにある。人は自然から抜け出し、生きるためにまっすぐそこへやってくる。人間が一人現れる。悲しいまでに憔悴した鋭い顔をしている。それはあらゆるものを繕い、取り付けることができるのだが、当の本人は取り付けのうまくいかない生のすごした男の顔つきである。フライパンから目覚まし時計にいたるまで、人が作った工作物なら、どんなものでもその品の生涯のうちにこの人の手を避けて通ることはなかった。」これちょっと坂口さんっぽくない?(笑い)
(坂口)ヤバい(笑い)
(山下)何でも作る
(坂口)いや俺はもうそこ見える
(山下)そう、なんでも作るわけ
(坂口)へー
(山下)で最初、これ、この男が最初出てくんねん
(坂口)そこ、その冒頭だけパクってさ、その先は山下さん書いてよ
(山下)(笑い)
(坂口)つまんなかったんでしょ? その先
(山下)この先はつまんないんだよね
(坂口)うん、書いていいかも、その先、いやなんか、いやこの前あのなんだっけ、「決別」? ゴダールの、観たことあります?
(山下)あるある
(坂口)あれマジびっくりして俺、俺が書いてる文章とまったく同じだったから
(山下)おもしろいね
(坂口)だからわけ分かんない、えー?と思って、それもなんか、まあしかもそれって俺がもちろん書いてる文章って言ってもね、書こうとしてた文章ぐらいだから、実際に文字が残ってたわけじゃないけど、なんか、それどこだっけな、書き残してたんだよな、なんでだろうと思って、びっくりしたなあこの前、ゴダールのことなんかどっかに書き残してたんだよな、最近手書きがすっごいたのしくて
(山下)手書きなんすか?
(坂口)もう最近手書き、一回手書きで書いて、今日の短篇とかはたぶんあの、原稿、パソコンで書くけど、あああったあったこれだ、「ゴダールの決別を電気館で観て、冒頭が一人称視点で森の中を歩いていて、ナレーションが、私の父の父の、父の父の父は、叶えたいことがあると、いつもあの森へ行き、火をおこし、朝まで私の知らない言葉を唱えていた。という言葉を聞いて、その瞬間に、私は私の父の母で、私が生まれて目を使って目の前のものを観察できるころには父は亡くなっていた。と書いていた自分の一節を思い出した。」っていう(笑い)これちょっとね不思議な、俺の「雪の記憶」っていう、雪っていう俺の先祖がいるんすけど、雪ってその戸籍に載ってないんすよ、誰だ?って話で、それがうちの墓の、俺の家の裏に俺の墓があるんすけど、で、親父がなんでここに墓があるんだって言ったら分かんないって言うんすよ、生まれたところが違う場所なんで、でその、そのうちの坂口家の墓の裏にテキトーな石がころがっていて、なぜかそこに坂口雪っていう、雪が降る、Snowの雪ってのが書いてあって、親父にこれはいったい誰なの?って言ったら、いや分かんないけどおじいちゃん、いや親父からはとにかく私たちだけの墓じゃなくてこちらの墓もちゃんとお供えしろって言われてるって
(山下)へ~
(坂口)(笑い)誰なんだって、一緒に遡ってるんだけどどっかで探しても出てこないんすよ、でも俺にはもう一つのべつの小説があって、それがやっぱりその女がその、細川藩のやっぱり巫女なんすよね、たぶんね、でそこがまさに俺の家の裏が、もともと、今はただの廃墟みたいになってるけど、もともとの細川藩の、あの、完全な自宅なんすよ
(山下)へ~
(坂口)だから細川ガラシャが眠ってて
(山下)あれ? 細川藩って熊本だよね?
(坂口)そうそうそう
(山下)うちの奥さんは天草なんですよね
(坂口)えー、そうなの? えー、そうか、俺は息子とときどき湯島っていう天草四郎が談合をした島原の乱のときに、税にくるしむ天草の民を救うために戦うときの会議を最後やった場所でよく釣りしてますよ
(山下)俺は行ったことないけど、
(坂口)行ったことないんすか?
(山下)俺はまだ行ったことない
(坂口)あ、絶対行ったらいいのに、山下さんもやっぱ海とはつながりがあると思うけどな、
(山下)天草なんだよね
(坂口)うん、えーそうなんすか、で俺ゴダール全然知らなくて、そしたら俺の友だちがゴダールのDVDを全部貸してくれて、だから今ちょっとづつ読んでんすけど、
(山下)おもしろいよ
(坂口)あ、読んで、観てるんですけど、いやおもしろいというか俺の場合は、やっぱり30分くらい観たらもう作りたくなっちゃってしょうがなくて切っちゃうっていう、だからそれでいいんだって
(山下)それでいいと思う
(坂口)そう、ゴダールって結局、なんか、そう、なんかこう、そうなんすよね、ゴダール観ると作りたくなる
(山下)それはだってゴダールの正しい見方でしょ。
(坂口)うーん
(山下)ゴダールをさ、なんか奉って、なんか解釈して、理屈でこねてってさ、あんなものはゴダールは求めてないよ(笑い)
(坂口)そうですよね、俺だからこの「決別」も映画館で観て、30分で出ちゃったんすよ、でやっぱ親友がやってるその映画館だから、えっ恭平さんダメでしたか?って、いやもう落ちつかなんくなって帰っていい?っつって
(山下)すごく分かる
(坂口)で、お前その、今日俺は映写機じゃなくて受付の方だから観れないんすよ、とかって言って、今日だけなんで、毎日1個づつやるっていうゴダール特集だったんですよこの前、で観てきていいよ俺の代わりにって言ったら、マジっすかー!ってその人観に行って、そうそうそういういい日があったんすよ
(山下)俺ゴダールってさ、なんかさあまりよく知らなくて、で、なんかでもゴダールってさ逸話で、スピルバーグがあの「未知との遭遇」を撮ったときに、
(坂口)うんうん
(山下)あれ子どものときに観た「未知との遭遇」って、宇宙船からちっちゃい子どもみたいなのが、宇宙人が
(坂口)あのねうちの息子が観た瞬間、おいこれ最後ないだろーって
(山下)(笑い)
(坂口)入ってるじゃん人間って、これないじゃーん、って息子が言ってるから10歳の息子が(笑い)ここまでよかったのにどうしてって
(山下)あれで終わるじゃん、人間が乗っていって、飛んでいって終わるじゃん、あれをゴダールが、スピルバーグはなんで中を見せへんねやゆうて(笑い)
(坂口)そうだよね
(山下)それがスピルバーグは悔しかったらしくて、作り直したんだよねあれ
(坂口)あーそういうことなんだ、そういやゴダールは言ってたよ、それ「映画史」で言ってましたよ
(山下)そう
(坂口)そう
(山下)おもしろい人やなあと思って
(坂口)いや、あの人ってほんと、まあ、なんか俺もすごいその、俺はゴダールの映画は観れないんだけど、ゴダールのテキストはむっちゃ読めるんすよね、
(山下)あー
(坂口)だからゴダールのテキストだけは読了できるんすよね
(山下)分かるな
(坂口)全部読みたいって思っちゃうっていうか、むっちゃおもしろい
(山下)それはおもしろいね
(坂口)なんであんなおもしろいんだろうっていう文章、ほんと俺はどんな小説家よりも、なんか、うん、なんかまあ、なんにせよ機械っていうか、それはドゥルーズとかのミル・プラトーに近いっていうかさ、作りたくなるんすよね
(山下)うん
(坂口)で、もうそれだけでいいのに、意味、その意味とかもう評論とかじゃなくて、こんだけ作りたくなったってことだけ伝えればいいだけだから
(山下)俺もそう思います、うん
(坂口)しかもそのあと作ったものをやっぱり、ね、見せなきゃいけないっていうか、だって彼らも見せてくれたから俺が作れてるから
(山下)そうなんです、それが続いていけばいいんだって思う
(坂口)そうそうそう、おもしろいっすね。(笑い)たのしいっすね。いや、俺がちょっと読みたいところがあるんすよね、ゴダールの、どれだっけな、ああこれ。まあ「哲学と冒険」っていう、まあ僕が日記作品を書いたときのタイトルにしちゃった、えっとゴダールのエッセイなんすよね。これもね今度貸してあげたいけど、三に一って書いて数字、いや漢字で、三一書房のゴダールという、まあ現代シネマ特集の1っていう、やつがあるんすよ、で、その中の「カイエ・デュ・シネマ」、映画雑誌の、まああの中での、1959年4月の原稿で、「『哲学と冒険』私の三本の映画は、結局のところいつも同じ主題を扱っている。私の主人公はある考えを抱くとその考えを徹底的に進もうとする。私が好むのは日記の原理である。たとえば私が小説の構想を練っているとして、その間の私の生活、いわばその二週間の私のすべてを映画にしてみたいと思う。それだけでいい。私は小説を書こうとする。書き上がるかどうかどうでもいい。とにかくそれは小説を書こうとしている間の私の生活であり、私が見たり話したりする人たちであり、小説を書こうとしてる私の姿である。私は小説を書くにはどうしたらいいかサルトルに聞きに行く。サルトルにインタビューする。……という具合だ。私は本当の演出家ではない。クルーゾーはなおさらだ。なぜなら彼の唯一の真実的な映画は彼の映画「真実」ではなく、彼が結婚しブラジルへ旅行した際の旅行記をもとにしたものだったが、それは完成せずに終わってしまったからだ。しかるにロスセー(?)にはイタリア旅行を戻すこともできた。映画では一つの物語を語ることもできるが、また一つの考えの歴史を語ることもできるのだ。バルザックは哲学であり冒険である。それは映画に敵っている。だからバルザックの小説を脚色せよと言うのではない。映画とはそういうものだと言いたいのだ。すなわち冒険であると同時に、その冒険の哲学であるべきなのだ。演出とは現代哲学、たとえばフッサールやメルロポンティのようなものだ。始めに言葉があり次いでに思想があるというものではない。まず思想、そして言葉なのだ。言語とはそれ自体なにかを意味するものではない。なにかを翻訳するものでもない。演出もまた同様なのである。私は演出が言語ではないと言うとき、それは演出が同時に思想でもあることを意味する。演出とは人生であり、人生に関する反省である。それゆえ私の映画では登場人物になにもかもしゃべらせる。私は、彼らを、生のまま捉えるのだ。」っていう、なんかそれにすっげえ、いつも困ったらここの文章に戻ってくるんすよ
(山下)いいっすね
(坂口)もうそのまんまでいいんや、ってことでしょ? 
(山下)そうね
(坂口)もう、お前が思いついた、恭平がなんかやりたくなった、全部スペースでアップしろっていう
(山下)うん
(坂口)なんかそれ、なんかこれゴダールなんすよ、思ってることをやる、はじめは創作講座やろうとしてたけどもう途中でどうでもよくなってきたーみたいな、
(山下)うん
(坂口)もう、創作自体をなんか、もう、ね、みんな創作を仕立てるっていうか、しつらえてるから
(山下)でもこれがまさに創作講座じゃん
(坂口)そうそうそう、まあ、ほんとそうなんすよ
(山下)てか、これ、こういうやり方は誰もやってない
(坂口)ですよね、あ、豊田さんいらっしゃいますけど、豊田さん入らないでしょ?(笑い)豊田さんって知ってますか?
(山下)知らない
(坂口)(笑い)豊田さんってミュージシャンなんすけど、おもしろい、(笑い)山下澄人的な感じなんすけど。ー、豊田さん会いたいっすね、豊田さん聞いてくれてありがとうございます。いやなんか、豊田さんが書いてくれた原稿すっげーうれしかったんすけど、豊田さんがTwitterで、なんか書いてくれたのが、なんて書いてくれてましたっけ、「今年見た権威がある人が作るアニメ、劇映画、
(山下)あー、俺それ読んだ
(坂口)ドキュメンタリー、どれも退屈だった。なにも起こらない感じ。」(笑い)ってもうこれ最高、なんで豊田さんってこんな文字、原稿、言語がすごいっすよね、「ただ坂口恭平がやってることは常になにかが起こってる。」誰も注目してないのにほんと注目していただいてありがとうございますって思った。「芸術なのかムーブメントなのか。個人であるから一番大きなことができるなんて。」めっちゃうれしかったんすけど、なんかこれ説明してくださいよ、まあ説明しなくてもいいっすけど、うれしかったっす。あ、読んでくれたんすか、山下さんも
(山下)読みました、あっそうだ、と思ったよ
(坂口)うれしい
(山下)そうだって思ったっていうのはさ、なんていうんかな、その、実はなにかがすごい激動してるって感じはする
(坂口)うーん
(山下)それは
(坂口)でもこの世の中がほんとはそうじゃないですか
(山下)ものすごく激動してて、それで、なんていうかな、激動したときってだいだいみんなボンヤリするでしょ、
(坂口)うんうんうん
(山下)立ちすくむっていうかさ、
(坂口)なる
(山下)そうじゃないってことだよね
(坂口)うん
(山下)チャンスってことだよね
(坂口)そうそうそう、それはなんかほんとに躁鬱の人ってマラリアに罹ったら平熱になるっていう
(山下)うんうん
(坂口)だから俺はなんか、そんな感じなのかなって思って
(山下)だからなんていうかな、生き物として、まっとうな反応に見える、俺には
(坂口)うん
(山下)やっぱりなんかこう、激動するときって生き物が動くときだよね
(坂口)うん
(山下)で、そこでうずくまった種族は、まあ、消えていく
(坂口)そうね、だから、俺はふだんは相当揺れちゃうんで、平和だとめっちゃ揺れすぎて、やっぱ一歩も外出らんなくなる
(山下)超わかるそれ、だからレーサーみたいなもんでしょ、
(坂口)そうそうそう(笑い)
(山下)レーサー公道怖いらしいからね
(坂口)だから山下さんF1乗ったまま駄菓子屋があるような、その中入ってっちゃって、もうどうしていいか分かんないみたいな
(山下)植村直己さんも東京帰ってきたらソワソワしてたってよ
(坂口)(笑い)たしかに
(山下)行きたぁてしゃあないんやから、死ぬところへ
(坂口)うん
(山下)でもそういう人種やから、
(坂口)いやほんとに
(山下)そういう人種がさ、切り裂いていくよ、どう考えたって
(坂口)そうですよね、そうでありたいっすよ俺も
(山下)俺も一回保坂さんに、その、山下は宇宙遊泳とかに出てもうたら、あのサイバー、なにあれ?なんかこうヘルメットの前なんか被ってるじゃん、宇宙飛行士
(坂口)ああ、ああ
(山下)あれ開けちゃうよ~とかって言ってて(笑い)
(坂口)(笑い)
(山下)ダメだよ、あんなとこ行かせたら山下開けちゃうもん、って(笑い)
(坂口)そう、へ~、いやおもしろいっすね、でもそんな二人が実はさイスに座ってただ文字書いてるだけっておもしろいっすね(笑い)けっこう俺らどこでもだいたい、どこ行っても一番先頭でやっても全然いけますって感じなのにね
(山下)でもほら宮崎さんの新作観たけど、なんか石積んでたじゃん(笑い)
(坂口)(笑い)そうだから、まあ、そうね、でもやっぱり、俺はもちろんああいう風にはならないだろうから、だから、まあよかったなって最近いつも思うんすよね
(山下)うん
(坂口)うん、あんな状態で、あんな金集められて、あんな風に物を作らなきゃいけないって状態で、なんか、でも一流の人はしかたないなんてまったく思ってないんで俺の場合は、やっぱりほんとにそういう意味ではやっぱりいっつもカフカはそういう生き方としてはね、ああやっぱりこうやって一番身近な人にだけ原稿を送るっていうのを、やっぱり死ぬまでやってくれた人っていう意味で、死後発掘されたとかじゃなくて、自分としては同じ感じなんすよね、身近な、ほんと身近な人にちょんと原稿届けて、やっぱ生きて死んだ人なんだなって。それだけじゃないんだけど僕の場合は、僕たぶん長生きしなきゃいけないんで、やっぱり病気で亡くなってはまずいっていうか、やっぱ細く、深く、細くじゃないっていうか、なんていうんすかそういうの?(笑い)
(山下)太く長く?
(坂口)そうそう、太く長くっていうか、太く長くやっていかなきゃやっぱダメだな~ってのは強くあるから、そう、そういう意味では芸術を作るっていう意味で、う~んとか言う時間は俺には必要ないっていう、やっぱ思ってるんだよね、でも山下さんは書き直すでしょけっこう、悩んで考えてるでしょ?
(山下)まあ悩みはせえへんけど、まあ書くね
(坂口)うん
(山下)書いて、まあちゃっちゃと片付けてしまおうって今は思ってるけど
(坂口)うんうんうん、まあそれはそれですばらしいと思うけどな、まあまあプラス、もう一つはチャッチャチャッチャなところもほしいっすけど
(山下)そう、そうでしょ? だから坂口くんにこのあいだそれ言われて俺、ちょっと手始めに、Twitter多投をはじめてみたわけ(笑い)
(坂口)うん、え、Twitterなに?
(山下)多投、一日に何個か書こうって決めて
(坂口)ああ、ああ、思ったの、へ~、俺が思ってるのは最悪って思うかもしれないけど、noteでずっと書いてほしい
(山下)ああ、noteね、ああ
(坂口)うん、noteでもう、この日のもう山下澄人日記なんだけどもう全部原稿、もうなんやこれ、日記かよっていうものでいいから、もうなんか山下澄人の日記っていうタイトルでテキトーにもう全部書いといてほしい
(山下)いいな、やってみよう
(坂口)うん、それでなんか毎日、その一時間とかテキトーな感じで書いたものだけを全部バンバンバンバン載っけて、そのあとの小説とかもあるんだったらそれはそれであれしていいけど、でも俺の場合は全部載っけてもおもしろいんじゃないかって、どうせ形になるときは変わるから大丈夫でしょって言って、最近文芸誌もべつに文句言わないですわ、前に出してても、だって俺なんか全文載っけてるんすから
(山下)載っけてるもんね
(坂口)だってそれ売れますからって分かってきたもん、恭平さん教えてくれてありがとうございますって
(山下)なるほどね
(坂口)全文載っけたら三刷行きますとかって言って
(山下)マジで、でもそれ俺分かるんだよね
(坂口)そう、だから、まあそれって版元的にも俺のやり方の方が金になるって分かったらもうあいつら、ほんとおもしろいから、金になるって分かったらすぐ気持ち切り替えてくれて
(山下)そうなんだよね
(坂口)うん
(山下)いや、俺だから、俺まだ坂口くんみたいなとこまでやれてないけど、その、なんかトークショーとか朗読会とかがあったときに、あの、今書きかけのやつを朗読するんだよね
(坂口)うん。うんうん
(山下)で、まあべつに反応を見るわけじゃないけど、その、
(坂口)でも結局あれって、俺らが気付きますよね
(山下)そう、そうやねん
(坂口)(笑い)それがヤバい、俺なんで今これをこんなときに読んでんだろうこのタイミングでって
(山下)そうそうそう
(坂口)みんなの気持ちと同時に自分が見てきたものとかになりますもんね
(山下)そっちの方が重要やから
(坂口)そうなんすよ、あれなんなんすかね
(山下)だから、なんかその、いわゆる今までのやり方みたいなものはもう信用してないし、
(坂口)うんうん
(山下)なんていうか、これ
(坂口)もともとだからゴリラだからね山下さんも、してないからね。そう、もともとのやり方をしてるわけではないから、だけど、ゴリラ的に考えてときどき言われた通りにやるっていうのもやってたっていうのがあるだけだから
(山下)うん、そうね
(坂口)うん、だけどほんとはたぶんそういうのはまったく関係ないから、なんでもできるよね、もうほんと俺が山下澄人だったらと思って俳句みたいに俺アイデア出ますもん
(山下)(笑い)
(坂口)俺が山下澄人だったらって一日30冊ぐらいアイデアができそう
(山下)(笑い)
(坂口)マジで、
(山下)俺でも
(坂口)ほんとにゴダールの映画を全部観て、自分が感じてること書くだけでもほんとにおもしろいそのゴダールの映画のガイドブックとしてもなるし、小説作品としてもなるし、ああもうこれ俺普通に売れるなって思っちゃう
(山下)すごく分かる、でそういうものを読みたいわけよ俺ら
(坂口)そうそう読みたい、みんな読みたい、だって創作が生まれる瞬間の、まだ性別がない、男なのか女なのかの前くらいな感じが一番おもしろいから。そうですよね、性別が分かれる前っていう感じがけっこうあると思うんすよ、山下さんの場合。寝なくていいんすか、山下さん
(山下)いや、そろそろ寝るよ
(坂口)寝ましょう
(山下)たのしかったです
(坂口)ありがとうございました、いやおもしろかったです
(山下)深夜の電話たのしいね
(坂口)うん、好きですよ、俺はもうこれが早朝だから、俺の場合は
(山下)あ、そうか
(坂口)そうそう、俺はもう寝ちゃってんすよ、4時間半
(山下)そっか(笑い)
(坂口)そうですそうです、山下さんでも、寝て
(山下)分かりました、ありがとう
(坂口)ありがとうございました、またまた。やってます俺毎日だいたい
(山下)うん、はい
(坂口)ういっす、はーいどうもどうも

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