2021/04/17(ガープ-p.24)


 気持ちが空中分裂しそうになるとき、歌で気持ちを現世に留めておくというか、歌で救われるとかそういう効能ではなく、なにかを繋ぎ止めておくために大音量でイヤホンで聴いて、声には出さなくても頭の中で大声で歌う。♪斉藤和義「君の顔が好きだ」。
 たまに文章書いてて空中分裂しそうになる。「空中分裂」がどういう状態なのかと、改めて言葉にしようとするとそれはむずかしくて、でも書きにくいことこそ書かなきゃいけないから書いてみようかと思う、けれど、書けないかもしれなくてどっちにしても、こんな言い訳じみたことはしなくていい。

 ほんとに「空中分裂」という感じ。熱暴走も似てる。頭というより「脳みそ」が爆発しそうな感じ。ゼラチン状の茶色い脳みその破片が飛び散るイメージ。ここに向かっていくのはとても気持ちいい。中毒性はない。いつもこんな風になれたらいいな、って一瞬思うんだけど、ふと冷静になった瞬間に、「これをずっと続けたら気が狂う」と思う。
 狂気の世界に行っちゃう、と言っても、狂気の世界に行ったことがないし、目の当たりにしたこともないから、狂気の世界がどういう世界なのか分からなくて、むしろ気が狂っていたら、
「ああ、俺いま、気が狂ってるな」
 とは思えないんだから、現状の、
「俺は気が狂っていない」
 と思っている状態の方がすでに俺は気が狂っているのかもしれない。

 まったく気は狂いたくない。「空中分解」しそうになっているときにちょっとだけ、狂気の世界を体験できているのだとしたら、たしかにこのまま行ったら気持ちいいだろうなぁ……、とは思っているけれど、それは向こう側に行ってしまう直前だから、まだ向こうの世界には行っちゃてない。まだ行っちゃってないからこそ、
「気持ちいいだろうなぁ……」
 と思えるのであって、行っちゃったら奈落なのは分かるから、気持ちがいいのはその一瞬だけで、あとは墜ちてくだけなんだろうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?