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風の音が僕にルピナスの色彩を

また目の前がモノクロになった

白と黒

その2色の交錯には何の希望も感じられない

交わっても灰色になるだけ

その事実が ただいたずらにぼくの心を閉ざしていく


崖の上にある岩場で空虚を感じながら

おもむろに太陽の光を浴びていたぼくは

自然と目の前を飄々と通り過ぎる風の音に耳を立てていた

最初はまるで興味もなかったが

ぼくはそのしらじらしさに若干心をうばわれかけた


キミの色はぼくにはまだ見えなかったけれど

キミならぼくの知らない世界を知っている気がして

色がカラーに変わりそうな予感がして

興味が湧いた


キミがぼくを包み込んだとき

ほのかに春の温かい香りがした

今までにない いい心地だ


そんなキミが

ぼくに「自分の色は何色か」と尋ねてくれているような気もして

ちょっぴり嬉しくもなった

ぼくはフルカラーにはなりきれはしないが

キミのおかげで徐々に灯されているような気がした


ぼくもキミに色を与えられる自信が出てきたよ

なんて 自分のペースで生きているキミの前で思ってもいいのかな


岩場は 相変わらずぐらぐらとしていたが

ぼくは不思議と垂直に立てていた

原理とか理論なんて キミとの空間には必要ないからね


目の前には 大きなルピナスの花が咲いているよ

ぼくより少し小さいけれど それでも大きいルピナスの花

一直線に立つ彼らのその光景に

ぼくの気持ちは安らいだ


キミは一歩引いたところに立って

驚いた目をして 不思議そうにぼくを見ているな

キミはそのままでいいんだよ


気が向いたら おたがいに色をつけよう

キミとぼくに ルピナスのような有彩色を

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