FXで100日後に億り人を目指すまつりちゃん【第1話】相場を操ろうとするな!操るのは自分の心だ!


「師匠! FX用の口座が開通しました!」

「ふっ、ようやくか。言われたとおり、海外の証券口座にしただろうな?」

「はい! ところで、なんで海外口座なんですか?」

「理由はいくつかある。
よし、海外口座と国内口座の違いについて説明してやろう」


「細かい違いを言い出したらキリがないが、大きな違いはこんなもんだ。
海外口座の場合、数千倍のレバレッジと、ゼロカットがメリットだな」

「ゼロカットってなんですか?」

「FXでは大きな値動きがあったとき、ポジションの決済が間に合わず、口座の残高がマイナスになることがある。ゼロカットシステムとは、そのマイナスをFX会社が負担してくれるというシステムだ」

「そんなシステムがあるんですね。
 それにハイレバレッジってことは、少ないお金でも大金を動かせるってことですよね?」

「いろんなFXトレーダーや教本ではそう言うがな。俺の意見は逆だ。ハイレバは、『大金を動かすためではなく、小額の資金で取引ができること』と考えた方がいい」

「?? 同じ事では?」

「お前の取引資金は5万円。
この金は、レバレッジ25倍なら100万円分の取引しかできず、ポジションを1つ持ったら他の取引をする余剰資金がない。

だがレバレッジ500倍なら、100万円の取引をするのに、2500円でいい。
そして、そのポジションを複数持てる」


「なるほど。じゃあ海外口座にはメリットしかないじゃないですか」

「そううまい話ばかりじゃなのさ。海外FX口座にもリスクがある。
その一つが、資金を口座から引き落とせない可能性もある点だ」

「お金が卸せない……? それって詐欺じゃ……?」

「日本でFX業者をやるには、金融庁の許可がいる。だから信頼できるし、そもそも会社が破綻しても金はきちんと返ってくるよう法律で整備されている。

だが、海外はそうじゃない。海外のFX業者は倒産したらお金が返ってこないところが多い。そして、多すぎる出金額には対応してくれない業者もある。

だから、信頼できる業者を選ばなければならない」

「師匠がFX業者を指定したのは、そういう意図があったんですね」

「俺の知ってる業者で、1番信頼性が高いところを紹介した。
そこなら……ま、裏切られることはほぼないだろう。

それより、だ。口座が開設したなら、実際に取引してみろ」


「え? い、いきなりっすか? まだ何も教わってませんけど」

「取引のノウハウやFXの知識は、明日からみっちりたたき込んでやる。
だが同時に、取引に慣れることも大切だ。
取引ツールを指先と同じぐらいの練度で扱えるようになれ。
実際の金を動かしているという感覚に慣れろ。

ロット数は0.03、通貨はドル円だ。この条件なら、そこまで大きく負けることもないはずだ。安心しろ、1万円ぐらい負けても、すぐに取り返せるようになるさ」

「了解です!(ふっふっふ、ボロもうけして、師匠の腰をぬかしてやりましょう!)」

「ふっ、がんばれよ。俺は少しでかけてくる。
 夜になったら様子を見に来るからな」
========================


「さて、あいつはどうなったかな」


(ぐすん……うっ、うっ)

「なんだこの不気味な呻きは……
まさかあいつ……」

「し、師匠……げ、下落が……下落が止まりません」

「……!! XAUUSD(ゴールド/ドル)で取引、しかも0.2ロットだと……!?
そして資金は……」

損益合計:-38,919



「……やってくれたな。何があってこうなっている。説明してみろ」

「は、はい……」
===========================

~6時間前~


「目指せ爆益、爆益……っと♪
とはいえ、師匠の教えを最初から破るのもどうかと思うので、
とりあえず言われた通りにやってみましょうか」

「このまま上にいくのでは……?
というわけで、買ってみましょう」


「…………WTF?」

「私の買ったところから急に下がるなんて意味がわからない!
世界のどこかの金持ちが、私のモニター覗いてます???」

「こんなの偶然に決まってる……
ああ、また下がった! こうなったらロットをあげて……
ドル円じゃ値動きが少なくて取り戻せない!!
なにこのXAUUXDとかいうの……すごっ! これ買いですね!
……は? なぜ私が買うと逆方向に!?」

======================

「私が買ったところが天井……
 私が売ったところが底……」

「……なるほどな。
まあ、俺の予想通り、きちんと失敗したな」

「予想通り……? 師匠はこうなることがわかってたって言うんですか?」

「当たり前だ。じゃなきゃ初日から取引なんてさせるか。
お前の性格や過去を考えれば、お前がギャンブルに走るのは目に見えていた。だからこそ、口座には5万円しか入金させなかった」

「わかってたなら、止めてくれたらよかったのに!
そしたら、今日1日こんな思いをせずにすんだじゃないですか!」


「甘ったれたこと言ってんじゃねぇ!」


「ひっ……!」

「投資の世界は、自己責任が大原則だ。
失敗も成功も、全部自分の判断で行うんだ。それを、決して誰かのせいにしちゃならねえんだ」

「お前のようなのが、SNSやブログで個人投資家にいいように操られて、情報商材を買わされたり、洗脳されたりする!
あいつのようにな!」

「……あいつ?」

「……おっと、口がすべっちまった。
とにかく、負けたときには誰かのせいにするな。
だからこそ、勝ったときも誰かのおかげじゃない。
自分の実力だと認識しろ。

俺は勝ち方を教えてやるといったが、もし勝ったとすれば、それは紛れもなくお前自身の実力によるものだ」

「わ、わかりました!」

(……ったく。俺としたことが柄にもなく熱くなっちまった。
これというのも、こいつが、あの女の境遇にそっくりだからか
俺がかつて救うことができなかった……あいつの……)

「わ、私の顔に何かついてますか?」

「なんでもねえ。
それより、言ったはずだぞ。ギャンブルはするなと」

「あ、はい。師匠のいない間に、パチンコとかには行ってませんけど」

「そうじゃねえ。ギャンブルっていうのはな、
『管理できないリスクに金を投じること』だ」


「管理できないリスク……?」

「例えば、競馬のレースでどの馬が1着になるか。
パチンコで何回転目にあたるか。
サイコロの目、配られるカード。
これらは、プレイヤー自身がコントロールできないものだ。

そしてギャンブルっていうのは、胴元が勝つようにできている。
コントロールできない要素に金を投げれば、当然負けるに決まっている」

「でも、ギャンブルで勝ってる人もいますよね?」

「それは、自分の管理できるものに投資するからだ。
競馬でどの馬に賭けるか。
パチンコでどの台に座るか。
そもそも、金を賭けるのかどうか。

この自分にコントロールできる要素に金を投資する。
それこそが、ギャンブルを、ギャンブルでなくすための方法だ」

「FXも代わらない。
どこでエントリーし、決済するか。
ロット数、通貨。これらは自分で選べる。
これを管理するのがFXだ。値動きに金を投資するべきじゃないんだよ」

「そして、もっとも管理が必要なのは

『心』


だ」

「心……」

「ああ、どんなに負けても冷静に状況を判断し、立ち回りを考える。

感情に任せて値動きに一喜一憂するなんて論外だ。
そんな奴、絶対にどこかで破滅する。
それをわからせるために、初日のお前には好きにやらせたってわけだ」

「う……」

……そうだ。
師匠の言うとおり。
私はギャンブルで負け続けたから、ここにいる。
それは、熱くなったままに投資を続けて、管理できないところにお金を注ぎ込んできたからだ。

「ふっ……その顔を見ると、目は覚めたようだな」

「はい……師匠。すみませんでした。
私は2度と、ギャンブルをしません」

「いい心がけだ。
今のお前なら、成果に期待できそうだ」

(あれ、師匠……いま、笑った?)

「どうかしたか?」

「(あれ、見間違いかな……)
い、いえ!なんでもありません!
よし、明日からがんばるぞー!」

(敗北は想定内とはいえ、まさか5万の資金のうち8割近くを溶かすとはな。こいつの成功は、この性質を押さえ込めるかどうかにかかっている)

「どうかしましたか、師匠」

「……なんでもねえ。
いいか。FXにおいて、相場の動きは個人で管理できない。
相場が思い通りにならないからって感情的になるな。

相場を操ろうとするな。
操るのは、常に自分の心だってことを覚えておけ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?