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ドイツのGDPは日本を超える理由と対策

ドイツのGDPが急激に上がっています。日本のGDPが伸びていないこと、また短期的には円安状況にあるため、なおさらドルベースで比較すると日本が落ちている状況です。ですので、近くドイツに抜かれて、世界第4位の経済大国に格落ちする事になります。

なぜ、こうなったのか。さまざまな要因があるでしょう。
日本政府は経済成長策、賃金上昇などの政策を採っています。その結果が早く出て欲しいと思いますが、同じような政策を既にドイツも行っている訳ですから、そう簡単にはドイツの追い上げから逃げきれないでしょう。
もちろんドイツと比較するだけでなく、世界の先進国と比較して論じるべきだと思いますが、私自身がドイツ企業で働いたこともあり、対ドイツに関して論じるに際して、働き方に焦点を当てたいと思います。
そして、ドイツに抜かれない様にするための対策は、他の先進国、例えばG7や新興国に対しても共通の対策になると考えます。

1)パフォーマンスに対して給料が払われるドイツ
日本はジョブ型の働き方にシフトしつつありますが、いまだに実質は時間給制です。長く働けば、仮に残業代が出なくても、周りから認められる、そういう忖度が強く残っています。ドイツ人は結果を出せば良いので、人より遅く出勤して、早く帰宅しても、やる事をキチンとやっていれば高い評価をされます。ですからドイツの労働時間は日本よりも圧倒的に短い訳です。

2)個々の役割が明確
日本の場合は、チームワークを重視しすぎて、働く人の役割や権限が重複し、結局だれが責任を持つのか明確ではありません。ですので、会議が多く、コンセンサスを取るのに時間が掛かります。
一方でドイツはそれが明確です。会議も必要最小限の時間で済みます。

3)語学力・コミュニケーション力
2000年代になるまでは、ドイツでは働き盛りのビジネスマンでも英語ができる人は多くありませんでした。その後、子供の頃から外国語をしっかり学ばせ、現在では誰でも英語あるいはフランス語が話せます。
また日本に似ていてチームプレーをする考え方です。その際の、コミュニケーション力が非常に高いのです。目的は何か、そこに至るプロセスがどうあるべきか。こういう基本的な計画性は日本人と似ているのですが、コンセンサスを取るための技術が高いので、日本よりも効率的に物事を決めていけます。

4)移民、海外現地社員の巻き込み力(インクルージョン)
ドイツの国民はもはや生粋のゲルマン系だけではありません。国民の25%以上は元々海外から来た移民です。
トルコ、イタリア、ポルトガルなどから1950年代から移民を受け入れ、既に第二世代、第三世代がドイツの勤勉な文化に慣れ、社会の中で活躍しています。最近は中国系、韓国系の高度人材も増えています。つまり多様性を受け入れ、戦力として巧く利用しています。
多様性とイノベーション、あるいは多様性と一人当たりGDPが比例することは様々なデータから明らかです。ドイツは、戦略的に、長期的に行っていると言えます。

5)品質に対する意識の高さ
ドイツと言えば品質の高さです。日本と同じです。しかし日本のように99.99%の品質は求めず、99%の合理的なところを良しとしています。
この点がアメリカの様に品質はあまり高くない国とはかなり違うところです。品質の高さを維持しつつ、かつ無理のない、異様なコストにならないところで折り合っています。
例えば学校の点数を60点から80点に持ってくるのは比較的簡単ですが、95点を100点にするのは並大抵の事ではありません。
その程よいバランスをドイツは理解しているという事です。

最後に全体をまとめると、ドイツの人口は約八千万人。日本は一億二千万人。つまり日本は1.5倍の人口を持っています。なのに、ドイツに並ばれ、抜かれると言うことは、一人当たりの効率がドイツは日本より1.5倍優れていると言う事です。日本とドイツは同じ勤勉な性格の国民性を持っています。それなのに、これだけ効率性に差がつくのは、社会のシステムに問題があります。
日本の企業、あるいはそれを支援する政府は、改めて効率をどうすれば良くできるか、何が効率化を阻害しているのか、ドイツに学び、しっかりと議論して対応策を合意するべきだと思います。
すなわち一人当たりGDPをいつまでに世界一にする、そういう目標を掲げた上で、短期的な視点ではなく、長期的な戦略を描き、実行するべき時が来ています。

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松野尾 萌
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