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政府、資産運用業の海外勢参入促進 首相がNYで表明へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA182VH0Y3A910C2000000/

本日の日経新聞記事で思い出すのが、8月31日に東京地裁に対して三菱フィナンシャルグループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対して集団訴訟が起こされた件です。まさにこの記事の「資産運用立国構想」に水を掛ける重大事案で、国も問題を座視できなくなっているのでしょう。

 三菱とモルガン・スタンレーの二つのキラ星の名前を冠したこの会社ですら、取り扱っている金融商品の危険性を良く理解しないまま、一般の顧客に販売しています。その背景ですが、実はモルガン・スタンレーとの資本関係やノウハウは今は消失しており、海外の金融商品のリスクを読み取れていなかったから起きた事案と思われ、日本の金融機関の世界における実力の低さを露呈しています。記事にもあるように、ほとんどの日系金融機関は海外のファンドに頼り切っています。
ちなみに野村證券など過去に海外での投資活動で巨大な損失を出した証券会社は、そこから学んだのか、この手のリスク商品を顧客に販売していません。

 同社が販売した金融商品はクレディスイスが発行したAT1債です。顧客らは、長期視点で、株より安全な運用を目指し、同社の営業を信頼して購入しています。ところがスイスのAT1債は複雑で、企業が倒産しなくても、先々の信用不安を見越して政府が介入した場合はその債券を無価値化できるというものでした。つまり「株式に劣後するリスクの高い債権」です。
一般に債権は株式よりも安全と言われますが、スイスのAT1債は株式よりも危険だったのです。これはスイス独特の商品で、発行母体の目論見書には当然記載されていますが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の顧客向け説明書には、意図的なのか、過失なのか、株よりも安全であり、クレディスイスの財務健全性が優れていることを謳い、長期安全性を求める一般の顧客に販売していました。ネット上では富裕層と書かれていますが、ごく一般の、しかも投資未経験の人まで紹介し、購入を勧めています。そしてその資産は、すべて無価値になってしまいました。

 投資は「自己責任」です。ただこの言葉が一人歩きして、証券会社が何を売ろうが、あるいはどう説明しようが、誰に紹介しようが、責任は無い。損した顧客が馬鹿だった、ということが罷り通るようになると、国の戦略である資産運用立国構想などは吹き飛んでしまいます。

証券会社には国際金融商品への深い知識と、それに基づく的確なアドバイスと、顧客の資産を増やすのだという崇高な理念が求められるべきです。だから手数料を取れるのです。

 財務省、金融庁の今後の指導強化と、海外のプロとの競争による日本の金融機関の質の向上とノウハウの蓄積を期待します。

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