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MMTとは何か <日本を救う半緊縮理論> 島倉原著 角川書店 その2

20年以上前にあったいくつかの国債デフォルトはなぜ起きたのか。なぜ日本では起きないのか?
= ロシア、イギリス、イタリア、タイなどでかつて起きている。
これらの国は、当時、固定相場制を採用していた、あるいは変動相場でも当該国がその通貨の実力以上に為替操作をしていたこと。自国通貨の国債でも実質的に為替固定にして外貨による発行と同じことをしていた。それにより防衛のための外貨が必要となるが、外貨準備が足りなくなると防衛手段が枯渇してしまっていた。日本は変動相場制を採用し、また外貨と為替交換レートを固定した国債を発行していないので、同じことは起きない。

日本は結果としてこの20年間、ずっと赤字国債を発行してGDP比で一番大きな額の国債を発行している。なのになぜMMT理論で主張するようにデフレ脱却できないのか。
= 金融緩和で行っており、財政支出をしていないから。金融緩和は銀行にある国債を政府・日銀が購入するわけだが、民間銀行からすると資産にあった国債が現金(実際は当座預金)に変わっただけ。それだけだと企業や個人からするともっと借りて投資しようとはならず、行き場を失った当座預金は株式市場など別な運用先に回るだけとなる。
= 財政支出はこの20年間ずっと緊縮政策をとっており、増えていない。中国、米国と比べても、日本は伸び率はほぼゼロ。また財政支出は民間(企業、個人)の収入を直接増やすので、より大きな乗数効果(お金を使い、それを受け取った人がまた使うという繰り替えにによりお金がもっと回る)が期待できる。これを日本政府はやってこなかった。

財政支出が本当に効くというエビデンスはあるのか?
= ある。内閣府とOECDのデータによると、財政支出伸び率=経済成長率であるとわかる。日本は1997年から伸び率はゼロ。中国は14%、米国は4.5%。

経済成長率が高いから、財政支出の伸び率が上がったのではないか。因果関係が逆ではないか。
= 違う。政府がお金を出し、これが世の中を回り、納税で帰ってくるという貨幣論がMMTで、先にお金を出すことから始まっている。

日本は少子高齢化で、だからGDPが減っているのではないか。財政支出の問題ではないのではないか。
= 違う。ハンガリー、ラトビア、リトアニアなど、同じように人口が減っている国は多いがGDPの伸び率は高い。例えば台湾は出生率は低いものの成長率は2.5%。

財政出動をするとハイパーインフレになり、危険だ。
= 違う。MMT反対論をはる学者の一番多い反論はこのハイパーインフレ論だ。特に戦中を持ち出して物価が上がったことを例として持ち出す。戦時中高橋是清などが行った財政出動は実際に経済を好転させたデータが残っている。一方で軍部が軍事費に多くを回し、次第に国内で必須の物資がなくなり、それにより需要供給バランスを崩してハイパーインフレを起こした。ハイパーインフレの犯人は財政支出ではなく、いま心配するべきは過剰な軍事費の増加と、実際の戦争。
かつ、20年もの間、デフレで苦しんでいるときに、ハイパーインフレを心配するというのは建設的な議論だとは言えない。

以上、MMTを勉強していく中で自分自身で疑問に思ったことを中心にQ&A形式でこの本の紹介を試みた。MMT理論自体もまだ詰めが必要な部分が残っており、完璧なものにはなっていないことは筆者の島倉氏も書かれている。私自身、まだ理解を深める必要があると感じているが、データや、現在金融市場、経済状況を見渡す限り、MMTは納得できる解答を与えてくれる。実際私自身も過去にブログで書かせていた考え方がMMTによって見事に勘違いであったことを認めざるを得ないことが多い。最後にMMTの日本経済への処方箋として再度まとめて終わりたい。

金融政策(いわゆるリフレ派政策)に頼るのではなく、財政支出の拡大が必要である。いまのような予算削減、増税だと消費者の所得向上が達成できない。(実際、安倍政権下の7年でインフレ2%目標は達成できなかった)
税制支出は直接的に民間を黒字化し、乗数効果が高い。
今後は財政規律の基準はプライマリーバランス(税収と政府支出をバランスさせようとすること)ではなく、インフレ率(例えば2-3%)にし、いまの生活や未来に残る分野に財政支出を惜しみなくつぎ込むこと。
コロナ増税はしない。これをすると不況に輪をかけて消費を抑制し、デフレ+大不況に向かう。

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