僕の地元にあったスペースワールドの話し

僕の地元、北九州市にはスペースワールドというテーマパークがあった。これは宇宙をテーマにしたテーマパークで、福岡県民なら誰もが一度は行ったことのある場所だ。

スタートから約3秒で最高時速130kmに達し、高さ65m・角度89度のタワーを駆け上り、急降下する「ザターン」や、高さ60mの急降下と2連続ドロップが続く「タイタン」などがテーマパークの目玉で、その他宇宙にまつわる様々な乗り物がある。
子どもにはスリリングすぎて乗れない物もたくさんあるくらい、大人も楽しめる場所だ。

僕にとっては、本当に青春の場所で、初めて彼女ができたときも、家族で出かけるときもいつも行ってた。
なんなら、大学の夏休みは宮崎からわざわざ1ヶ月くらい北九州に帰り、スペースワールドでバイトだってしていた。

それほど思い入れがあるスペースワールドが2017年12月31日をもって、閉館した。
僕にとってそれは、なにか青春が本当に終わったんだなーという感じがして、とても寂しいものだった。

ではなぜそんなスペースワールドが閉館したのか。
集客や経営の問題などはもちろんあるだろうが、僕はやはりスペースワールドは攻めすぎたからだと思う。

スペースワールドは事あるごとにとても攻めた内容の企画をやっていた。

例えば世間で貞子が流行っていたとき、スペースワールドはすぐにその流れに乗っかった。

スペースワールドには「エイリアンパニック」というアトラクションがある。
これは、墜落したUFOの中を歩いて探索し、襲いくるエイリアンから逃げるというホラーアトラクションだ。

貞子とコラボしたとき、「エイリアンパニック」ではエイリアンと一緒に貞子が襲いかかってきた。

添乗員さんは今までのマニュアル通り、「UFOの中にはエイリアンがいる!気をつけろ!」としか言っていないのに、急に貞子が襲ってくるので、それはみんな腰を抜かしていた。

妖怪ウォッチが流行ったときも、スペースワールドはすぐにコラボした。

「ブラックホールスクランブル」という真っ暗な暗闇をジェットコースターで駆け抜けるというアトラクションがある。これはブラックホールの中を乗り物に乗って探検するというテイのアトラクションだ。

そこではコースの途中で、ブラックホールの中にいるはずなのに急に明るくなり、吊るされた妖怪ウォッチのキャラクター達が目の前に現れた。

「世界観どうなってんだよ…」
前に座っていた8歳くらいの男の子ですら、そんなことを呟いていた。

でも僕としてはそんなスペースワールドも大好きで、そういうコラボも楽しみの1つだった。

しかし2016年の終わり頃、そんなスペースワールドは攻めすぎたがゆえ、閉館の原因ともいえるとんでもない企画をやってしまった。

それが、ニュースにもなった「氷の水族館」だ。

「フリージングポート」というみんなでガチのアイススケートをするというアトラクションがある。
まあ、アイススケートの時点で宇宙という世界観からは少しブレてる気もするが、そこで行われたのが日本中で物議をかました「氷の水族館」だ。

どういう内容だったかというと、5000匹もの本物を魚を氷漬けにして、スケートリンクの氷の中に埋め込んだのだ。

みなさん分かるかと思うが、ファンタジーの世界とは違い、本物の魚はグロテスクだ。

氷の中で固まった魚の目は完全に瞳孔が開いており、ギョロとした目で氷越しから見つめてくる。
地面のスケートリンクがシューズで削れていくと、魚の体がむき出しになり、魚の匂いがしてくる。
氷の中では白目で血の滲んでいた魚もいたそうだ。

心臓の弱い人なら卒倒するような企画だ。
まさに絵に描いたような机上の空論というか、魚の生感やリアル感を見誤っていたのかと思う。
現に訪れた子どもは泣き崩れ、スケートを滑るどころではなかったらしい。

もちろん、ネットでは大炎上を巻き起こした。
スペースワールドの言い分としては「元々死んでいる魚を使っていた。」と言ったが、炎上は少しも収まらなかった。

でも僕は初めてこのニュースを見たとき、少し不謹慎だが、スペースワールドらしいなとクスっとした。

誰がこの企画を考え、誰がオッケーしたのかは知らないが、なにか他と違うことをしよう、新しいことをして他のテーマパークとは違うところを見せよう、そういう気概を僕はスペースワールドからいつも感じていたからだ。

僕がバイトしていたのも、この「フリージングポート」だった。
そこで働く人はいつも新しい挑戦に胸を踊らせていたし、ただのアイススケート場じゃなく、お客さんにとって特別なアイススケート場にしてやろうという気持ちを持っていた。
死んだ魚のような目をしている人は1人もいなかった。

そしてどんな不良が来ても、ここは宇宙のアイススケートリンク場だという無理な設定は守り続けていた。

結果、「氷の水族館」は大失敗して、企画中止、正式に謝罪して、大損失を負うことになったみたいだが、僕はこの新しいことをしようという姿勢に関してはすごく尊敬する。やり方は間違えているだろうが。

でも、このスペースワールドを通して、小さい頃から大好きだったこのテーマパークを通して、僕はいつでもこのスペースワールド魂は忘れないようにしている。

芸人は常に新しいことを探していかなければいけない職業だと思う。
他の人がやってないようなネタを作ったり、誰もしていないような特技を考えたり。

僕は何かネタを考えついたとき、これはちょっと攻めすぎかなーとちょっと不謹慎かなーと思って辞めてしまいそうなときがある。
でもそんなときは、スペースワールドなら多分攻めるわ。多分GOするわ。そう思って、とりあえずやってみる。「氷の水族館より不謹慎だろ、これ!」ってとき以外はとりあえずやってみる。

まあ、99パーセントスベりますが、それでいいんだと思う。

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