めざせアロサウルスマスター
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めざせアロサウルスマスター

Atsushi Ito

 人はいつ、どんなときに「オールイン」という決断をするだろうか?

 多くの人は、人生における重要な局面や、期待値を大幅に超えたリターンが計算できるときであれば、「オールイン」を決断することができるかもしれない。

 だが逆に、そういったシチュエーションでもなければ、「オールイン」という選択は大抵採りえないものだ。

 なぜなら人生は一度きりであり、背負ってしまった一個の生命としての歴史は、容易には手放しがたいものだからだ。

 しかし。

 もしそれがゲームの中だったとしたならばどうだろう?

 ゲームの中であれば基本的には死という不可逆性は存在せず、むしろ再現性がある。ならば学習の最大効率を得るためには、どのようなアクションをとるべきだろうか?

 そう、「オールイン」だ。

 なぜなら最も極端な選択肢は、起こりうる事象の振れ幅の極限を決定づけると考えられるからである。

 だから最初の質問には、私の場合こう答えることになる。

 ゲームの中であれば「常に」である、と。


■ モダン環境でステューピッド・グリショールを選択する理由

 「ステューピッド・グリショール」は、モダン環境において「オールイン」に分類されるコンボだ。

 だが「オールイン」というアーキタイプがTCGのメタゲーム環境において、環境トップになることは決してない。なぜならもしそんな事態になったとしたらそんなゲームはハイパークソゲーなので、運営が禁止 or ナーフするから (cf.「MoMaの冬」) である。

 では、常に運営の監視対象としてデッキパワーが制限されがちの「オールイン」が、なぜモダンにおける合理的なデッキ選択となりうるのか。

 ここで「インタラクション」という概念について考えてみよう。「インタラクション」とは、相手のコンセプトに対する何らかの干渉として定義される。《極楽鳥》を《稲妻》で焼いたり《思考囲い》を打ったりすることはもちろん、《廃墟の地》で相手の特殊地形を割ることも「インタラクション」だ。そう考えたとき、「オールイン」とは「インタラクション」のないデッキと言うことができる。

 次にモダンにおけるメタゲームの回転について考えてみる。モダンでは何らかのコンセプトが流行ったとき、それに対する「インタラクション」が強いデッキがまずは隆盛する。そして次にそれらの「インタラクション」を回避 (スルー) できるコンセプトが台頭すると、さらにそれに対して「インタラクション」を被せられるデッキが出てくる……といった具合に、コンセプトと「インタラクション」とのいたちごっこによってメタゲームが回転してきた。

 現在ではその回転が行き着くところまで行った結果、あらゆるコンセプトに対して幅広く干渉できるオーバーインタラクションなデッキ (人間や青白コントロール) と、それに対して強いインタラクションスルー (=コンセプト上、メインボードに入りうるインタラクションが効きづらい) なコンセプトを持つデッキ (トロン、ドレッジ、イゼフェニ、バーン、アミュレットタイタンなど) が上位で幅を利かせるようになってきている。

 ではそこにきて「オールイン」の立ち位置を考えてみると、「オーバーインタラクションには弱いものの、インタラクションスルーには強いデッキ」と言うことができそうである。

 なぜならインタラクションスルーとは結局のところインタラクションを避けるために迂回したコンセプトであり、お互いインタラクションを前提としない対決になれば、勝敗を決定づけるのは速度となるからだ。

 しかも「ステューピッド・グリショール」は、「オールイン」の中でも最速と断言できるほどの速度を誇っているのである。

 加えてこの事実は、オーバーインタラクションとの対決においても有利に働く。いかに人間が2マナのヘイトベアーを大量に搭載しているとはいえ、先手1~2キルにはどうやっても対応できないからだ。

 さらにメタゲーム上オーバーインタラクションがインタラクションスルーに攻め立てられている (たとえばドレッジの隆盛によって人間は数を減らしている傾向にある) という現状に鑑みれば。

 「ステューピッド・グリショール」という「オールイン」は、それがコンセプトとして成立している限りにおいては、『モダンホライゾン』参入前である現在のモダン環境にかなりマッチしたデッキだと言うことができるのだ。

 さて次項以降では、「ステューピッド・グリショール」の最新レシピを構成するカードたちがどのような採用理由に基づくものであり、また実際プレイするにあたってどのようなTIPSがあるのかといった点について、詳細に語っていく。

 かなりマニアックな話にはなるが、「オールイン」というものがどういう思想でデッキ構築されているのかという意味では、今後のデッキ構築の参考になる部分も多いはずだ。

 ちなみにこのデッキができた経緯について知りたいという方は、前回の記事をご参照願いたい。


■ デッキ構築

 「それがコンセプトとして成立している限りにおいては」と書いたのには理由がある。

 「ステューピッド・グリショール」は、正しい構築・正しいプレイを守らないと吐くほど自滅が多いデッキだからだ。

 これほど単純に見えるオールインデッキにしては意外に思われるかもしれないが、初めて「ステューピッド・グリショール」を回す場合、敗因の50%近くは自滅 (契約不履行などに限らず、ミス負けも含む) になるだろう。それくらいこのデッキは、随所で微妙な判断を求めてくるシチュエーションが多い。

 少なくとも前回の記事で最後に掲載したレシピ (上記の画像) の時点ではそうだった。

 このデッキでMagic Onlineの競技リーグに何度も潜ったものの、思うような勝率を叩き出せなかったのだ。

 そこでどうにかして自滅を減らせないか、その原因はどこにあるのかという点に向き合ってみたとき、私は「土地の枚数」「緑のカードの枚数」という結論に思い至ったのであった。


◇1. 土地の枚数

 「土地の枚数」については前回の記事で「10枚が最低値」だと書いたが、最低値は最低値でしかなく、土地が1枚もない手札をそれでもキープできるという確率がかなり少ないことを考えると、10枚よりは安全側に寄せた方が良さそうというのが何ゲームか回してみた後での結論だった。

 1ターン目《ラノワールのエルフ》の場合と一致しないのは、そもそも初期手札の7枚に土地がないと、「ワンマリガン後に《ラノワールのエルフ》と《山》1枚でキープして、占術と合わせて2ターン目までの3枚で《森》を見つける」といった後寄せの (デッキトップの3枚目が求める土地であるパターンを許容する) 選択肢が採れないからである。

 そこで、そこから《通りの悪霊》を削りながら土地を1枚ずつ増やしてみて感触を探っていくことにした。

 はたしてその結果、適正値は体感で「13.5枚」という感触を得た。これは「13枚では少ないと感じるが、14枚では多いと感じる」という意味である。

 マジックは60枚から7枚という、ライブラリーの約数ではない素数の初期手札を取って開始するゲームなので、解が整数値ではないことも当然起こりうる。

 ではこの「0.5枚」を、デッキ構築においてどのように処理するべきだろうか?

 一つの選択肢は、ここでも一貫して安全側をとって「14枚」に寄せるというものである。

 だが、それは正しくないように思われた。なぜならこのデッキは「緑のカード」を「土地」に変換する術はあっても、「土地」を「緑のカード」に変換する術だけは持たないからだ。

 もし土地が足りないなら、《猿人の指導霊》を使ってでも《魔力変》を (実質) サイクリングすることがプレイングとして可能である。また1枚だけだが、《秋の際》はサイクリングないしは (基本地形を入れれば) 素打ちで追加の土地を持ってくることも可能である。

 だが逆に土地を引きすぎてしまった場合、その時点でこのデッキはプレイング上介入する余地がなくなってしまう。

 このことから、「このデッキは限界までスクリュー寄りで組むべき」というのが私の第一感としてあった。最初に10枚という限界を攻めたのもそれが理由の一つとしてあったからだ。

 「ドローを操作できる土地はないだろうか?」というのももちろん検討した。《地平線の梢》《ザルファーの虚空》《神秘の神殿》といったカードはその要求を満たしうるが、他方で1キルハンドには不要な土地だし、「緑のカード」になりうるかどうかも不安定というのが、問題を解消しきれていないと感じた (余談だが、『モダンホライゾン』の新カードである青緑キャノピー土地は、この点において14枚目の土地になりうるカードと言える)。

 この点、デッキの原案者であるけみこ氏が《神秘の神殿》をいち早く採用していたのには、小数点処理というその意図を後から感じ取って感服するばかりであった。

 だが現時点で14枚目として納得できる土地が見つからない以上、私の結論はもう一つの選択肢である「スクリュー寄りの13枚に寄せる」というものだった。

 とはいえ、その場合でも0.5枚の端数処理は行わなければならない。土地を入れない以上、14枚目のスロットを埋めるのは「緑のカード」になるが、そのカードは当然「土地にもなれる緑のカード」となる。

 そこで白羽の矢が立ったのは《守美者の探索》というわけである。《開花+華麗》では《繁殖池》をサーチすることができないため (そしてデッキ内唯一の基本土地は1キルパターンの関係上《島》に固定されているため) 、このクソマイナーカード以外に選択肢はなかった。

 ちなみに「土地の種類」については、4枚ずつの《植物の聖域》《宝石鉱山》と1枚の《島》は確定として、残りの4枚については《繁殖池》と《ヤヴィマヤの沿岸》で散らしている。これはライフ損失の観点からは《ヤヴィマヤの沿岸》の方が強いという評価だが、《守美者の探索》の採用が確定した段階で2枚以上の《繁殖池》を入れざるをえなくなったためである。

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Atsushi Ito
なんかゴミです。